「庭は夏の日ざかりの日を浴びてしんとしてゐる。……」  この決定的な一文が遺作『天人五衰』を締めくくったのは一九七〇年十一月二十五日。小誌一九七一年新年号に掲載された。それから半世紀――。あらためて、三島由紀夫という存在の巨大さを噛み締めながら、特集「三島由紀夫 没後五十年」を発表する。
 
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2021年1月号(定価1100円)12月7日発売
新潮メールマガジン[2020/12/06] うまく表示されない場合はブラウザでご覧ください
編集長から
この時代の人間の肖像画

 2020年は新型コロナに翻弄され続けた一年だった。誌面を振り返っても、小説家の想像力が、地球規模の感染症に激しく揺さぶられたことがわかる。
 なかでも、鮮やかな印象を残したのが、金原ひとみアンソーシャル ディスタンス」(「新潮」六月号掲載)で、現代日本の生きづらさと、それを加速させるコロナ禍を背景に、恋人たちの生=旅を描いた傑作だった。その金原があらためてコロナに焦点をあてた最新作が、2021年1月号にて発表する「テクノブレイク」。COVID-19に引き裂かれ、欲望・依存・虚無に突き動かされた恋人たちの肖像画は圧巻だ。
 本号では阿部和重角田光代高橋弘希多和田葉子山田詠美の豪華執筆陣も最新作を発表。多様な遠近法で描かれた人間たちの「肖像画」が読者を魅了するだろう。さらに、 谷川俊太郎最果タヒの新作詩、東浩紀ブレイディみかこ保坂和志水村美苗村田沙耶香の特別原稿を掲載する。

編集長・矢野 優
新潮2021年1月号表紙
目次

創作特集2021
今年117年目の文芸誌

Drugs And Poison阿部和重
テクノブレイク金原ひとみ
彼らの惑星へ帰っていくこと[特別原稿]/村田沙耶香
弾丸祈願旅行角田光代
わかることと知ること[特別原稿]/東 浩紀
――『メノン』について
詩人ちゃん・キル・ミー(七)/最果タヒ
風力発電所高橋弘希
シンプル/真理[特別原稿]/保坂和志
虚空へ[新作詩]/谷川俊太郎
わたしのコーリング[特別原稿]/ブレイディみかこ
喇叭ラッパ吹きのララ多和田葉子
わいせつなおねえさまたちへ山田詠美
坂田バレエ団[特別原稿]/水村美苗
――『お稽古ごと太平記』
『豊饒の海』論(二)[短期集中連載]/平野啓一郎
大城立裕先生と私のアイデンティティー佐藤 優
――追悼・大城立裕
君と世界の戦いでは、世界を支援せよ松家仁之
――カーソン・マッカラーズ『心は孤独な狩人』を読む
【リレーコラム】Passage――街の気分と思考(18)
無音の場所西加奈子
アンバランスなバランス水原希子
■■ 連載小説 ■■
聖都創造(六)/天童荒太
天使も踏むを畏れるところ(七)/松家仁之
曼陀羅華X(十一)/古川日出男
全然(十七)/滝口悠生
漂流(十九)/町田 康
チェロ湖(二十一)/いしいしんじ
ヒロヒト(二十五)/高橋源一郎
ビッグ・スヌーズ(三十四)/矢作俊彦
荒れ野にて(五十八)/重松 清
■■ 本 ■■
◆高山羽根子『暗闇にレンズ』/大竹昭子
◆宮本 輝『灯台からの響き』/塩田千春
◆米本浩二『魂の邂逅――石牟礼道子と渡辺京二』/武田 徹
第53回《新潮新人賞》応募規定
【選考委員】大澤信亮/小山田浩子/鴻巣友季子/田中慎弥/又吉直樹


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「新潮」から生まれた本
原発危機、感染症の蔓延、AIの専制……人類滅亡の危機に、一人の青年が立ち向かう。
『カタストロフ・マニア』島田雅彦/著
ヒマラヤ遠征を繰り返し、旅から旅へ。未知の世界と出会い続ける7年間。
『地上に星座をつくる』石川直樹/著
あの時、私は、本当に母を棄てたのだろうか……。新発見小説は遠藤文学の鍵となる傑作だった!
『影に対して―母をめぐる物語―』遠藤周作/著
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