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岬にての物語

三島由紀夫/著

737円(税込)

発売日:1978/11/29

  • 文庫

向うを向いて百まで数えるのよ。少年は見てはならないものを見た……。

空想好きで早熟な少年がオルガンの音色に誘われて入り込んだ岬の廃屋。乾いた夏の日差しと輝く草叢と透明な海風の中、少年は若く美しい男女のお遊びにつき合わされる……。幻想的な美しさに満ちた名編「岬にての物語」。不犯の高僧の、ただ一度の焔の如き愛を描く神品「志賀寺上人の恋」、母の手記を通して幼き日を描く「椅子」等、三島文学の〈精髄〉を示す名品13編。

目次
苧菟と瑪耶
岬にての物語
頭文字
親切な機械
火山の休暇
牝犬
椅子
不満な女たち
志賀寺上人の恋
水音
商い人
十九歳
月澹荘綺譚
解説 渡辺広士

書誌情報

読み仮名 ミサキニテノモノガタリ
シリーズ名 新潮文庫
装幀 市川傳/カバー写真、新潮社装幀室/デザイン
発行形態 文庫
判型 新潮文庫
頁数 400ページ
ISBN 978-4-10-105026-3
C-CODE 0193
整理番号 み-3-26
ジャンル 文芸作品
定価 737円

どういう本?

タイトロジー(タイトルを読む)

 私は目の前の美しい人のこと、その身の上その運命、その身にやがて起るべきこと、それからあの晴れやかすぎる笑い声(後年考えると子を孕んだ婦人は往々あんな悲しいほど澄み切った笑い声を立てるものだが)についてしつこく考えを追うていた。その時美しい人は窓を背にして振向いた。逆光がその顔をソロモンが愛したエチオピヤの乙女のように黒くした。
「あなた岬の一番さきまで行ったことがあって?」「いいえ」「あとで散歩につれて行ってあげましょう。それは景色がいいのよ」
 私はその刹那不思議なほど幸福であったので、黙って真赤になって枯れた花環をいじっていた。(本書56〜57ぺージ)

著者プロフィール

三島由紀夫

ミシマ・ユキオ

(1925-1970)東京生れ。本名、平岡公威(きみたけ)。1947(昭和22)年東大法学部を卒業後、大蔵省に勤務するも9ヶ月で退職、執筆生活に入る。1949年、最初の書き下ろし長編『仮面の告白』を刊行、作家としての地位を確立。主な著書に、1954年『潮騒』(新潮社文学賞)、1956年『金閣寺』(読売文学賞)、1965年『サド侯爵夫人』(芸術祭賞)等。1970年11月25日、『豊饒の海』第四巻「天人五衰」の最終回原稿を書き上げた後、自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決。ミシマ文学は諸外国語に翻訳され、全世界で愛読される。

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