ホーム > 書籍詳細:進化した猿たち―The Best―

星新一史上最強のブラック・ユーモア! 不倫、囚人、決闘……。ヒトコマ漫画×エッセイの競演。

進化した猿たち―The Best―

星新一/著

594円(税込)

本の仕様

立ち読みする

発売日:2017/12/01

読み仮名 シンカシタサルタチザベスト
装幀 森田拳次/カバー装画、新潮社装幀室/デザイン
発行形態 文庫
判型 新潮文庫
ISBN 978-4-10-109854-8
C-CODE 0171
整理番号 ほ-4-54
ジャンル 文芸作品
定価 594円

人間と他の生物とのいちばんの違いは何か。それは、笑いと想像力である――。星新一が長年愛読し、蒐集してきたアメリカのヒトコマ漫画には、われわれ〈進化した猿たち〉の欲望や習性、奇癖が余すところなく描かれていた! 「結婚」「宇宙人」「精神分析」「クリスマス」など、漫画を17のテーマに分け、ブラック・ユーモアと旺盛な想像力で魅せるエッセイ集。幻の名作、待望のリニューアル復刊!

著者プロフィール

星新一 ホシ・シンイチ

(1926-1997)東京生れ。東京大学農学部卒。1957(昭和32)年、日本最初のSF同人誌「宇宙塵」の創刊に参画し、ショートショートという分野を開拓した。1001編を超す作品を生み出したSF作家の第一人者。SF以外にも父・星一や祖父・小金井良精とその時代を描いた伝記文学などを執筆している。著書に『ボッコちゃん』『悪魔のいる天国』『マイ国家』『ノックの音が』など多数。

星新一フェア(著作リスト)

書評

ヒトコマ漫画に見るアメリカ

川本三郎

 こんな小話がある。
 孤島に4人の男が流れ着いた。神様があらわれ、各人に2つの願いを叶えてやるという。1人目は「グラマーの美女」と「家に帰りたい」。叶えられた。2人目は「たくさんのお金」とやはり「家に帰らせてくれ」。これも叶えられた。3人目は「たらふくのうまいもの」と「家に帰らせてくれ」。これも願いが叶えられた。最後に1人だけ残った男は麻雀好きだった。そこで神様に頼んだ。「麻雀牌」と「さっきの3人を島に戻してくれ」。
 ある麻雀好きが考えたものだが、こういう小話を孤島物と呼ぶことは、星新一によって知った。星新一の「進化した猿たち」は月刊誌「エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン」(編集長は常盤新平。のち誌名は『ハヤカワ・ミステリ・マガジン』に)昭和40年7月号から連載が始まった。
 アメリカのヒトコマ漫画をジャンル別に紹介してゆく。これは大評判になり、続篇「新・進化した猿たち」へと続けられた(昭和45年の7月号まで)。
 これが評判になったのは、普通、読み捨てにされてしまうヒトコマ漫画を星新一が、丹念に切り取って集めていたこと。その収集癖は驚嘆に値した。さらに、単に集めるだけではなく、ジャンル別に分けて、編集したこと。星新一は、コレクターと同時に、みごとなアンソロジストの才能を示した。その熱意、手さばきに読者は舌を巻いた。
 孤島物だけではない。分類は多岐にわたる。アトランダムに並べてみると、強盗物、刑務所物、墓場物、占い物、あるいは天国物、サンタクロース物、宇宙人物……など多種多様。インターネットのない時代、よくこれだけ丹念に集めたと感服する。元祖オタクといっていいだろう。
 連載漫画を切り取っておくというのはまだ話が分かる。しかし、一回きりのヒトコマ漫画をこれだけ熱心に集め、分類し、提示するとは。並み大抵の労力ではない。アメリカがまだ「遠いアメリカ」として憧れの対象だったからこその成果だろう。その意味でアメリカのサブカルチャーの良き紹介者だった常盤新平が編集者だったことは見逃せない。
 強盗が町の銃砲店に押し入り、店の人間に玩具の銃を突きつけ、「やい、そこの本物の銃をこっちへよこせ」。
 夜の空で、円盤に乗った宇宙人が、横を走るトナカイに乗ったサンタクロースを見て、同僚に話しかける。「おい、あんなものの実在を信じられるかい」。
 20ドルで2つの事柄にお答えします、という看板の占い師のところへ来た客が「20ドルも出して、たった2つなんですか」と聞く。占い師が答える。「その通りです。で、第2のご質問はなんなのでしょうか」。
 笑いはゆとりから生まれる。他者だけではなく自分自身も他人の目で見る。シリアス(死や暴力)な題材も笑うことでその恐怖から逃がれる。
 星新一が収集した漫画の多くは、まだ、アメリカが「良き時代」だった頃の作品だろう。豊かで、明るく、社会の矛盾が露出していない。ベトナム戦争も、人種差別も、カウンターカルチャーも大きな問題になっていない。
 どの漫画にも、黒人をはじめとする当時のマイノリティはほとんど登場しない。しばしば「グラマー美人」が現われるが、だからといって「セクハラ」問題にもならない。
 ただ、精神分析物や結婚カウンセラー物が多いのは、このころからアメリカの根底にある「家庭」にひびが入りはじめていたからだろう。ウディ・アレンが「精神分析」をジョークにするのは、このすぐあとのこと。
 星新一が、アメリカのヒトコマ漫画に興味を持ったのは、ある時、孤島物が多いことに気づいたからだという。それで集めはじめたら3000種にもなった。
 なぜ、アメリカにはこんなにも孤島物が多いのか。さまざまな理由が考えられるが、ひとつ思い浮かぶのは「アメリカのもっともありふれた病気は孤独である」という言葉。アメリカの理想は「大草原の小さな家」というが、あの家は見方を変えれば孤島である。ハックルベリイ・フィンが乗った、ミシシッピ河を下る筏もまた孤島である。
 星新一が紹介する漫画の向うには「孤独なアメリカ」が見える。

(かわもと・さぶろう 評論家)
波 2017年12月号より

目次

はじめに
ぬれ手でアワ
番号の男たち
安らかな眠り
結婚の修理屋
たまにはスポーツを
アダムとイブ
水晶球の周辺
決闘
箱の効用
頭のねじれ
無数の孤島
宇宙人たち
雲の上の連中
サンタクロースの季節
手術室
拳銃でひとこと
戸棚か窓か
あとがき
解説 小野耕世

感想を送る

新刊お知らせメール

星新一
登録する
文芸作品
登録する

同じジャンルの本

書籍の分類

進化した猿たち―The Best―

全国の書店、または以下のネット書店よりご購入ください。

※ 書店によっては、在庫の無い場合や取扱いの無い場合があります。あらかじめご了承ください。
※詳しい購入方法は、各ネット書店のサイトにてご確認ください。

  • amazon
  • 楽天ブックス
  • 7net
  • e-hon
  • HonyaClub
  • TSUTAYA ONLINE
  • 紀伊國屋書店
  • エルパカBOOKS - HMV
  • honto