ホーム > 書籍詳細:女の一生 一部・キクの場合

幕末から明治の長崎を舞台に、切支丹大弾圧にも屈しない信者たちと、流刑の若者に想いを寄せるキクの短くも清らかな一生を描く。

女の一生 一部・キクの場合

遠藤周作/著

907円(税込)

本の仕様

発売日:1986/03/27

読み仮名 オンナノイッショウ1キクノバアイ
シリーズ名 新潮文庫
発行形態 文庫、電子書籍
判型 新潮文庫
ISBN 978-4-10-112323-3
C-CODE 0193
整理番号 え-1-23
ジャンル 文芸作品、歴史・時代小説、文学賞受賞作家
定価 907円
電子書籍 価格 842円
電子書籍 配信開始日 2013/03/01

長崎の商家へ奉公に出てきた浦上の農家の娘キク。活発で切れながの眼の美しい少女が想いを寄せた清吉は、信仰を禁じられていた基督教の信者だった……。激動の嵐が吹きあれる幕末から明治の長崎を舞台に、切支丹弾圧の史実にそいながら、信仰のために流刑になった若者にひたむきな想いを寄せる女の短くも清らかな一生を描き、キリスト教と日本の風土とのかかわりを鋭く追求する。

著者プロフィール

遠藤周作 エンドウ・シュウサク

(1923-1996)東京生まれ。幼年期を旧満州大連で過ごす。神戸に帰国後、12歳でカトリックの洗礼を受ける。慶応大学仏文科卒。フランス留学を経て1955年「白い人」で芥川賞を受賞。結核を患い何度も手術を受けながらも、旺盛な執筆活動を続けた。一貫して日本の精神風土とキリスト教の問題を追究する一方、ユーモア作品や歴史小説、戯曲、映画脚本、〈狐狸庵もの〉と称されるエッセイなど作品世界は多岐にわたる。『海と毒薬』(新潮社文学賞/毎日出版文化賞)『わたしが・棄てた・女』『沈黙』(谷崎潤一郎賞)『死海のほとり』『イエスの生涯』『キリストの誕生』(読売文学賞)『侍』(野間文芸賞)『女の一生』『スキャンダル』『深い河(ディープ・リバー)』(毎日芸術賞)『夫婦の一日』等。1995年には文化勲章を受章した。

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『沈黙』の精神的続編『女の一生』

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激動の時代を生きた『女の一生』の舞台、長崎

弾圧、被爆。『女の一生(一部・二部)』の舞台である長崎は、悲しい歴史を秘めている。遠藤周作はその雨に濡れる街角で、狭い路地で、何を感じ、何を考え、何を見出したのか。長崎巡礼を終えた時――、西欧、近代、キリスト教、我々日本人……、遠藤が生涯をかけて格闘した何かが見えてくるだろう。

コラム 新潮文庫で歩く日本の町

宮崎香蓮

 これは長崎人必読(私は島原出身)の小説でした。もっと言えば、日本中のみんなに読んで貰いたい本。静かに語り合いたくなります。「一部・キクの場合」「二部・サチ子の場合」というそれぞれ六百頁前後もある二冊本ですが、あっと言う間に読み終えることができます。
 幕末の長崎、従妹のミツと外で遊んでばかりいた活発な少女キクは、近くの隠れ切支丹の村で生まれた清吉に心惹かれていく。思いが実りそうになった時、彼は信仰ゆえに捕まってしまい激しい拷問にも遭う。キクは彼を救おうと奉行所の役人伊藤に言われるままカネを渡し、身を売るようになり……。やがてキクは胸を患って死に、世の中は明治となって、日本でもアメリカの圧力でキリスト教が解禁される。
 二部は時代が飛んで昭和五年から。ミツの孫サチ子は、長崎へ布教にきたコルベ神父と知り合う。戦争の時代が来て、ポーランドに戻った神父はアウシュビッツへと送られ、日本では再びキリスト教徒が白い眼で見られ始めて、サチ子が気持ちを寄せる修平は兵隊に取られる――。
 私のよく知る長崎の海山、街、言葉、文化、気候、食物(六兵衛って知ってますか?)などが的確かつ鮮明に描写されていき、キクもミツも清吉も伊藤も、サチ子も修平もコルベ神父も隣人のようになります。
 しかし何より、「天才的!」と興奮したのは、清吉たちを取り締まった浦上四番崩れ・・・・・・や実在のコルベ神父など、幕末から昭和までの長い時間に史実を沢山織り交ぜて、庶民の、けれど波乱の物語を組み立てる構築力でした。煩雑になるので触れませんが、もっと細かくいろいろとあるんです。ミツの使い方や、サチ子が遊んだアメリカ人少年の再登場等々……。物語は複雑なパズルのように考え抜かれ、輪郭のくっきりした人物たちが見事に繋がっていきます。
 と同時に、作者の遠藤さんが一番訴えたかったであろう、キリスト教的な場面の美しさにも打たれました。清吉が恍惚として拝むマリア像に、キクは嫉妬し、訴え、すがりついていきます。悪辣で卑劣な伊藤は作者から決して断罪されず、むしろ救われるように、老いさらばえた身を清吉の前へ現します。「彼のような男こそ、神さまは憐れみ、寄り添っていかれる」という作者の考えがよく伝わってきますが、キクにすっかり感情移入していた(映像か舞台で彼女を演じてみたい!)私は、実はいまだにこの伊藤を許せていません。そして、粛然とさせる、コルベ神父の収容所での死。
 物語は昭和二十年八月九日午前十一時二分を迎えます。この原爆投下の時間はどんな長崎人でも知っているでしょう。そして修平が出水の航空隊に配備された時、九州の読者ならすぐ「特攻隊になるんだ」と気づくでしょう。特攻と原爆――私は祈るようにして読み進み、かつて清吉たちを救ったアメリカの手によって、今度は長崎が破壊され尽くすという小説の構造に、ここまで行くんだ、と圧倒されました。
 長崎では小学校から平和学習があり、中学高校では八月九日は登校日です。小説の末尾、サチ子の子供たちは原爆にも戦争にも興味を持たず、母親を索然とさせますが、長崎ではそうでもないよと言ってあげたくなりました。

(みやざき・かれん 女優)
波 2015年7月号より

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