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現代日本最高の劇作家・井上ひさし戯曲の集大成、ここに完結!

井上ひさし全芝居 その七

井上ひさし/著

6,480円(税込)

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発売日:2010/12/17

読み仮名 イノウエヒサシゼンシバイ07
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 750ページ
ISBN 978-4-10-302332-6
C-CODE 0393
ジャンル 戯曲・シナリオ、文学賞受賞作家
定価 6,480円

東京裁判の真実を問う「夢の裂け目」「夢の泪」「夢の痂」の三部作から、本土決戦をめぐる、陸軍、海軍、外務省入り乱れての騒動を描く喜劇「箱根強羅ホテル」、ボードビルを想い続けたチェーホフの生涯を描いた「ロマンス」、最後の戯曲となった「組曲虐殺」までの11篇を収録。読んで面白い井上戯曲の全貌がいま明らかに。

著者プロフィール

井上ひさし イノウエ・ヒサシ

(1934-2010)山形県生れ。上智大学文学部卒業。浅草フランス座で文芸部進行係を務めた後、「ひょっこりひょうたん島」の台本を共同執筆する。以後『道元の冒険』(岸田戯曲賞、芸術選奨新人賞)、『手鎖心中』(直木賞)、『吉里吉里人』(読売文学賞、日本SF大賞)、『腹鼓記』、『不忠臣蔵』(吉川英治文学賞)、『シャンハイムーン』(谷崎潤一郎賞)、『東京セブンローズ』(菊池寛賞)、『太鼓たたいて笛ふいて』(毎日芸術賞、鶴屋南北戯曲賞)など戯曲、小説、エッセイ等に幅広く活躍した。2004(平成16)年に文化功労者、2009年には日本藝術院賞恩賜賞を受賞した。1984(昭和59)年に劇団「こまつ座」を結成し、座付き作者として自作の上演活動を行った。

書評

波 2011年1月号より 笑いとユートピア

扇田昭彦

『井上ひさし全芝居 その七』は、小説家で劇作家だった井上ひさし氏の戯曲の集大成である『全芝居』シリーズの最終巻である。井上氏が二〇一〇年四月に亡くなったため、この巻が完結編になってしまった。私は井上氏の劇を初期から見続け、奇想と笑いと批評性に富むその劇世界に魅せられてきただけに、氏の新作がもう見られなくなったことが残念でならない。
この最終巻には二〇〇一年から〇九年までに上演された井上氏の戯曲十一編が収められている。「日本人の戦争責任」を共通のテーマとする『夢の裂け目』『夢の泪』『夢の痂』の連作、いわゆる「東京裁判三部作」をはじめとして、敗戦直後の旧満州に取り残された落語家二人の受難と珍道中を描く快作『円生と志ん生』、劇作家チェーホフの生涯をボードビル風の笑いで描いた音楽劇の秀作『ロマンス』、巌流島の決闘の後、宮本武蔵と佐々木小次郎が再び対決したという奇抜な設定で書かれた『ムサシ』、プロレタリア作家・小林多喜二の半生を描いた遺作『組曲虐殺』など、著者晩年の優れた作品群が並ぶ。
年代的には、六十六歳から七十四歳までに書かれた戯曲だが、高齢になっても、代表作に数えられる秀作劇をいくつも書き得た氏の旺盛な筆力に驚かざるをえない。若いころに代表作を送り出し、その後は突出した作品が少なくなる劇作家が多い中で、井上氏は稀有な存在だった。
この巻は収録作品の数が多く、『全芝居』シリーズの中でも最も厚い、七百五十二ページの大冊になった。
私は「その一」から「その七」まで、巻末の解説を書いてきたが、最終巻の解説を書き終えて強く感じるのは、井上ひさし氏は悲惨な事態をも常に笑いで描く実にユニークな劇作家だったということだ。
井上氏は生涯にわたって喜劇を書き続けたが、そこに描かれる人間の状況は必ずしも明るいものではなく、むしろ惨憺たる状況が多かった。だが、その無残な状況を井上氏はあえて笑いで描いた。
その典型は井上氏の遺作となった『組曲虐殺』である。プロレタリア作家・小林多喜二が警察の拷問で死ぬまでの歩みを描く評伝劇だから、題名からしても、私たちは深刻で暗い作品を予想する。
だが、井上氏が実際に描いた小林多喜二は映画と音楽を愛する魅力的な都会派の青年だった。しかも、遊び心に富む多喜二は特高刑事の尾行をまくために、山高帽にだぶだぶのズボン、鼻の下にヒゲというチャップリンそっくりの姿に変装し、チャップリンに似せた歩き方で登場する。刑事の一人がやはりチャップリンに変装して現れるため、二人のチャップリンが鉢合わせするナンセンスな場面は爆笑ものだ。むろん、社会変革のために闘う多喜二のシリアスな面もきちんと描かれるのだが、多喜二を笑いで描くなどという発想を、井上氏以外、だれが思いついただろうか。
つまり、多くの井上劇に見られるのは、苦しみにあふれたこの「やるせない世界」を救い、人々に生きる力を与えるのは「笑い」だ、という考えだ。戯曲『ロマンス』に登場する次の劇中歌は、井上氏の思いをよく伝えている。
「やるせない世界を/すくうものはなにか/(中略)わらう わらい わらえ/それが ひとをすくう」
言い換えれば、井上氏にとって、「笑い」は観客をくつろがせ、楽しませる娯楽であると同時に、人生の泥沼の中でもがく人々を「すくう」とても大きなものでもあった。
観客が一緒になって楽しむ演劇を、井上氏は「時間のユートピア」と考えていた。『井上ひさし全芝居』シリーズには、氏が夢見た「ユートピア」が過剰なほどいっぱい詰まっている。

(せんだ・あきひこ 演劇評論家)

目次

夢の裂け目
夢の泪
夢の痂
水の手紙――群読のために――
円生と志ん生
箱根強羅ホテル
私はだれでしょう
ロマンス
少年口伝隊一九四五
ムサシ
組曲虐殺
初演記録
解説 扇田昭彦

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