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あの『ローマ人の物語』が綴られる現場から発信された、65の超・知的メッセージ!

ローマの街角から

塩野七生/著

1,296円(税込)

本の仕様

発売日:2000/10/31

読み仮名 ローマノマチカドカラ
雑誌から生まれた本 Foresightから生まれた本
発行形態 書籍
判型 ラッコブックス
頁数 279ページ
ISBN 978-4-10-309626-9
C-CODE 0395
ジャンル エッセー・随筆、ノンフィクション、ビジネス・経済
定価 1,296円

雑誌「フォーサイト」に5年あまりにわたって連載された人気コラムがついに単行本化! 超話題作『ローマ人の物語』を書きながら考えたことから、日本政治への提言、ローマで活躍するサッカー・中田選手の話題まで、著者ならではの透徹した論理と筆致が冴え渡る。混迷する日本と日本人へ送る、知的刺激満載の65篇。

著者プロフィール

塩野七生 シオノ・ナナミ

1937年7月7日、東京に生れる。学習院大学文学部哲学科卒業後、1963年から1968年にかけて、イタリアに遊びつつ学んだ。1968年に執筆活動を開始し、「ルネサンスの女たち」を「中央公論」誌に発表。初めての書下ろし長編『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』により1970年度毎日出版文化賞を受賞。この年からイタリアに住む。1982年、『海の都の物語』によりサントリー学芸賞。1983年、菊池寛賞。1992年より、ローマ帝国興亡の歴史を描く「ローマ人の物語」にとりくみ、一年に一作のペースで執筆。1993年、『ローマ人の物語I』により新潮学芸賞。1999年、司馬遼太郎賞。2001年、『塩野七生ルネサンス著作集』全7巻を刊行。2002年、イタリア政府より国家功労勲章を授与される。2006年、「ローマ人の物語」第XV巻を刊行し、同シリーズ完結。2007年、文化功労者に選ばれる。2008-2009年に『ローマ亡き後の地中海世界』(上・下)を刊行。2011年、「十字軍物語」シリーズ全4冊が完結。2013年、『皇帝フリードリッヒ二世の生涯』(上・下)を刊行。2015年より「ギリシア人の物語」シリーズ全3巻の刊行を開始。

書評

波 2000年11月号より 歴史的都市の現代人  塩野七生『ローマの街角から』

平野啓一郎

 塩野さんに関しては、こんなエピソードがある。――
 昨年、初めてローマでお目にかかった時のことである。連れて行って戴いたレストランで、給仕から渡されたイタリア語のメニューに私が途方に暮れていると、塩野さんは、「ここは私が連れて来たお店なんだから、あなたの勝手には選ばせないわよ。私が選びますからね」と笑って、スッとメニューを取り上げ、代わりに店のオススメ料理を注文して下さったのである。勿論、運ばれて来る料理はどれも絶品で、私は、「量は足りたかしら?」と心配して戴くほどに、出される先からどの皿もアッという間に平らげてしまった。私はそのさりげない配慮に感動していた。塩野さんの一見強引なような注文のなさり方は、言うまでもなく私を気遣ってのことであり、それにより私は、旅行者はやはり何事も現地の人間に任せた方が賢明だという当たり前の判断を下した格好になり、或いは大先輩の作家には頭があがらないという格好に、或いはまた同席した女性を立てて譲ってみせたという格好になり、いずれにせよ、至極まっとうな口実を得て、メニューが読めずに当惑してしまうというきまりの悪い状況を回避することが出来たのである。私は塩野さんが、年若い私の作家としての体面を傷つけぬように心を配って下さったのか、それとも――ものの数ではないであろうが――女性と食事をする私の男としての体面を傷つけぬように心を配って下さったのかは分からない。しかしとにかくも、その露ほどもわざとらしさのない上品でユーモアのある心遣いに、私は何か非常に精緻で、洗練された優雅といったものを感じた。作家塩野七生というと、世間では古代ローマ史にたった独りで挑む怖るべき傑物といったイメージがあるかもしれないが、その著作の魅力は、実はこうした麗質によってこそ保たれているのだということを私も含め多くの読者は知っているのである。
 今回上梓される『ローマの街角から』の中にも、体裁こそ違え、そんな塩野さんの魅力はふんだんに盛り込まれている。
 題名の示す通り、全体に丁度『ローマ人の物語』と対をなすかのように、コンパクトにアクチュアルな問題が取り扱われている。例えば、「不調のときはどうするか」といった即効性のある妙薬も含まれていれば、「凡才の害毒」・「敗北の因」のような流石というべきかなりの通ぶりが窺われるサッカー談義もあり、「無題」中の〔追伸〕のような興味深いエピソードあり、「政治と経済」・「ユーゴ空爆に想う」等の独自の政情分析あり、「慨嘆、言い換えればグチ」の洒脱な憂国談、「人それぞれの責務」に於る宿命への決然とした態度表明、「挙国一致内閣」のような大胆な提言、より緊急な「『有事』的頭脳」、「ユリウス・カエサル」に見られる仕事への驚嘆すべき、それでいてストイシズムとも違うどこか仄かな色気の漂う情熱、「文化と経済」のようなスパイスの効いた皮肉……等々、話題の抱負さはいかにも贅沢である。また、歴史を「誤り大全」と命名してみる件や、「書ききった、と思える状態の作家は脱殻なのである」といったさらりと記してはあるけれども中々深い真実を指摘した一文など、文章中の何気ない言葉にも興味は尽きない。それらを堪能する為には、とにかく読むより外はないが、私としては別して是非とも強調しておきたい美点がある。それは、「ゴーン氏の『常識』」の中のハドリアヌス帝の史実を引いたあとに続く次のような言葉――「何のことはない。真の意味でのリストラは、二千年も前に既にやっていることなのだ。」――によく表れている。この「何のことはない」という言葉は、なかなか魅力的である。私は、現代の日本に於て、何か問題が起こった際になされる議論のどうしようもない視野の狭さに何時もイライラとしている人間である。もっと大きな視点で眺めれば、そんなことは歴史上何時の時代にでもあったことではないか、どうしてそれを高々この十年ほどの日本の変化にのみ還元して議論しようとするのだろう? こんな日頃の鬱憤をこの本は見事に吹き飛ばしてくれるのである。そこには、最も鋭敏な時代認識が、最も深い歴史についての理解へと直結する或る種のスリルがある。これは是非とも現代人の身につけねばならない感覚であろう。現代という時代は、切迫した危機の時代ではな
「かもしれない。けれども、それが何か、緩慢な、不気味な危機の時代であるとするならば、我々は今、過去と現代とを繋ぎ、現代と未来とを繋ぐ大きな認識の目をこそ養うべきではあるまいか。
(ひらの・けいいちろう 作家)

▼塩野七生『ローマの街角から』(ラッコブックス)は、十月三十一日発売

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