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「圧倒的な映像」「手練れの職人」「余生を振り返る」ってどこがヘン?

その日本語、ヨロシイですか?

井上孝夫/著

1,296円(税込)

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発売日:2014/01/17

読み仮名 ソノニホンゴヨロシイデスカ
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 223ページ
ISBN 978-4-10-335071-2
C-CODE 0095
ジャンル 言語学
定価 1,296円
電子書籍 価格 1,037円
電子書籍 配信開始日 2014/07/18

川端康成『雪国』の有名な冒頭の一文、「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」。さて、この「国境」の正しい読み方は「こっきょう」? それとも「くにざかい」? そして 「チゲーよ!」はなぜおかしい? などなど日々「正しい言葉」探しに格闘している新潮社校閲部・前部長が、奥深〜い日本語の世界にお連れします。

著者プロフィール

井上孝夫 イノウエ・タカオ

1954(昭和29)年神奈川県生まれ。新潮社校閲部・前部長。東京大学文学部言語学科卒業。著書に『世界中の言語を楽しく学ぶ』。漫画・イラストでは「にいがたマンガ大賞」第二回ストーリーマンガの部、第五回コママンガの部で各々最優秀作品賞、2002年読売新聞北陸支社「高橋尚子似顔絵展」最優秀賞、「沢の鶴4コマ漫画大賞」第四回大賞を受賞。『その日本語、ヨロシイですか?』でも漫画部分、本文ともに執筆を担当した。

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書評

波 2014年2月号より 巨人の肩に乗る

栁下恭平

僕たち校閲はひたすらに、文字を読むのが仕事です。黙々と、そして愚直に読みます。夜になって、仕事が終わって、その日に話した言葉よりもゲラに書いた言葉のほうが多い、なんてこともあるくらいです。
どのような仕事でも、自分たちからしてみると当たり前のことが、外から見ると目新しく映ったり、知的な刺激の対象になったりするものですね。そういう意味で、この愛すべき校閲という仕事には、マニアックなトリビアの塊である、という側面が確かに存在します。その魅力にノックアウトされた僕は、校閲に青春を捧げる覚悟を決めたのでした。それほどに素敵なお仕事なんです。
読者である僕たちは、この本に登場する「版元の校閲部に配属された新人さん」というキャラクターを通じて、出版のこと、校閲のこと、日本語のことを、じんわりほっこり教わっていきます。ガイドは、同校閲部の個性的な先輩方です。
本書ではドラマツルギーとして、校閲部の群像劇を「マンガ」、それを受けて本題を「文章」で解説していく、という形式をとっています。校閲(を通しての日本語)について書かれた本ですから、もっとアカデミックなものを想像していたのですが、とても読みやすく、このスタイルに驚きました(ちなみにマンガも挿絵も文章も、全部お一人で書かれています。二度ビックリ!)。絵柄も文体も総じてとてもやわらかく、うん、間口は広く奥は深い。そして、人間くさくも軽妙洒脱、そこには魅力あふれる言葉と校閲の世界があります。
換言すれば、もしくは素直に表現をするならば、外から見ると校閲とはとてもわかりにくい仕事だといえます。決して自虐的なわけでも、卑下するわけでもないのですが、そもそも世界はまったく僕らのことを知らない。
それはなぜでしょう?
答えはシンプル。「世界に知られないこと」こそが僕らの仕事のゴールだからです。

校閲は「本が印刷される前にまちがいを見つける」という仕事です。つまり、僕たちの仕事の成果は、世に出る前にその痕跡が消えて見えなくなってしまうのです。
たとえばボーイミーツガール、心揺さぶる青春小説。恋の言葉に、たったひとつでも誤字や脱字や衍字があったら、百年の恋も冷めてしまいます。うわさの二人に野暮はいけない。
たとえばレシピ。「1カップ/200ml/200cc」と表記がユレていたら、台所にたくさんの調理器具が必要ですね。
たとえばデータブック。経済白書でも野球選手年鑑でも、ゼロがひとつ抜けているのを見つけただけで、とたんに他のすべてのデータまでも疑わしいものに見えてしまいます。
エトセトラ、エトセトラ、せっかく出会った本に夢中になれないなんて、残念ですよね。

だから校閲という仕事があるのでしょう。本書では、校閲者を「『一般読者の先遣隊』であり、『言葉に対して素人であることのプロ』」と表現しています。膝を打ちました。僕たち校閲は、書き手である作家さん、そしてその伴走者である編集さんとは違う視点で、まちがい(と思われる箇所)を探していきます。「書くこと」と「読むこと」の役割分担ですね。文章を「読者」として読み、「素人」として読むのです。

この本は「校閲技術の各論」を横糸に、「出版の変遷」を縦糸に、と編まれています。技術の継承、ミームの伝達、先輩と後輩、ゆく人くる人。校閲は基本的に一人で行う仕事なので、ともすれば孤独な作業と思いがちですが、実は毎日、先輩諸氏が築いてきてくれた技術と志を受け継ぎ、後輩諸君に受け渡していく、というチームプレイの中にいるのです。
本の最後に近い章では「昭和の人間ですから」とこぼす作中の校閲部長さんが、謙遜しつつも韜晦かなわず、新人さんたちに自分なりの校閲哲学を話す場面があります。大先輩の最後のお務め。その静かな物言いが、なんとも校閲者らしくて、そして僕の知る先輩たちとも重なって、じんわりと沁みます。結局校閲はゲラで語るもの。長年ゲラで語ってきたからこそ、口にする言葉に重みがあります。
作中、日本語に関する実例が豊富に紹介されており、長年現場におられたからこその深い内容になっています。それだけでも読みごたえがあるのですが、校閲の先輩からの個人的なメッセージのようにも思えて、僕はこの本が好きなんです。

(やなした・きょうへい 校閲専門 株式会社 鴎来堂 代表取締役)

目次

プロローグ
第一章 校閲よ、こんにちは
第二章 調べ方の調べ方
第三章 ルビ(ふりがな)は難しい
第四章 嗚呼! 漢字
第五章 仮名づかひ今昔
第六章 グローバル時代の翻訳
第七章 その日本語、間違ってます?!
第八章 その日本語、ヨロシイ?!
第九章 死語の世界
第十章 出版と日本語と校閲と

「吾輩は猫である」クイズ
「浦島太郎」旧仮名変換問題
4コマ成語・ことわざクイズ
漢字クイズ
イラスト・校閲の仕事
4コマ名詩クイズ
死語?クイズ
校閲の実例

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