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信じる。信じない。信じてみる。新作「南へ」を収録した野田地図最強三部作!

21世紀を信じてみる戯曲集

野田秀樹/著

1,944円(税込)

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発売日:2011/02/25

読み仮名 ニジュウイッセイキヲシンジテミルギキョクシュウ
雑誌から生まれた本 新潮から生まれた本
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 344ページ
ISBN 978-4-10-340516-0
C-CODE 0093
ジャンル 戯曲・シナリオ
定価 1,944円
電子書籍 価格 1,555円
電子書籍 配信開始日 2011/08/26

書道教室が神話空間と化し、集団とその物語が変容する衝撃作「ザ・キャラクター」。3人家族の偏愛が世界の終末を招き寄せる、破滅=再生のスラップスティック「表に出ろいっ!」。火山観測所に赴任した男と虚言癖の女が、大噴火の噂を巡って歴史を往還する最新作「南へ」。「信じるとは何か」を問う、野田演劇を体感する戯曲集!

著者プロフィール

野田秀樹 ノダ・ヒデキ

1955年長崎県生まれ。1976年に劇団夢の遊眠社を結成。1983年に「野獣降臨」で岸田戯曲賞、1986年に紀伊國屋演劇賞、1990年に文化庁芸術祭賞を受賞。1992年にロンドンへ留学。翌年帰国し、NODA・MAPを設立。1999年に鶴屋南北戯曲賞、2000年に紀伊國屋演劇賞個人賞、芸術選奨文部大臣賞受賞。

書評

波 2011年3月号より スペクタクル降臨

古川日出男

最初にタイトルで驚いてしまったほうがよい。ここには『21世紀を信じてみる戯曲集』とある。読めばわかるように、主題はもう提示されている。こんなのは演劇作品のタイトルの付けかたでも、あるいは小説のマナーでもない。このことを証すように、それぞれの舞台はそれぞれの題名のもとに“興行”を行なっている。そして、それぞれの作品はオリジナルの題名を携えたまま、この一冊の戯曲集に収録されている。
三つの作品が収録されている。あらすじを語ることは野田秀樹の戯曲の魅力を語ることには本質的につながらないから、真の魅力であるところの“設定”をここに羅列する。『ザ・キャラクター』には書道教室が登場する。そこから宗教がはじまる。ギリシア神話の大柄な時間というものが召喚される。『表に出ろいっ!』には親子三人の密室がある。その密室はひたすらコメディ空間である。しかも生と死が秤にかけられている。『南へ』は火山観測所からドラマがはじまり、火山そのものが日本の起源をおのずと問う。縦軸に時間があって、横軸に「北から、南から」との空間があり、結局は日本人とは何なのかとの座標を探査する。
これらの“設定”には驚いてしまったほうがよい。そして三つの作品(というか“設定”)は、すでに『21世紀を信じてみる戯曲集』とのタイトルで、一つの主題の連なりとして統合されているのだ。
信。
宗教という現象だけがこの漢字一文字を具現するわけではない。しかし、信、をある凝縮された時空間の内側に提示しようとすると、それは「スペクタクル」の形態を採る、とは断じてよい。その「スペクタクル」の器として最も似合うのが宗教だとも断じられる。二〇〇一年九月十一日にニューヨークの世界貿易センタービルが崩壊した瞬間が「スペクタクル」ではないと反論するのはほぼ不可能だろう。翻って日本は、と問えば、一九九五年の三月二十日がある。地下鉄の走行車両内にサリンが撒布される時間がある。この時間のことは『ザ・キャラクター』に描かれている。
その撒布のはじまりの、午前八時九分、が。ほとんど絶対時間として刻まれている。
しかし「スペクタクル」の形態を採れば一切は信だ、いわゆる信仰の母体となるのだ、と考えることも妥当で、そこで野田秀樹はディズニーランド、ジャニーズを『表に出ろいっ!』で召喚する。ここ四半世紀の日本社会のトップ2と言える「スペクタクル」。しかも、それらのトップ2はコメディの文法にしたがって脱臼させられる。じつは固有名詞のディズニーランドもジャニーズも出ない。ミッキーマウスは登場せずに、マッキーミウスが顕現する。それだけだ。
それは最高に笑えることで、同時に、必然的にもう一つの世界に戯曲が接続してしまうということだ。この現実ではない世界。ここから『表に出ろいっ!』の物語が先行する『ザ・キャラクター』の“設定”と地続きとなるのは必然と化して、書道教室にギリシア神話の世界(世界観)が重なるのも当然となる。異質な世界は、むしろ接続する運命にあると考えてよい。
舞台演劇は、言うまでもないことだが、元来スペクタクルの空間を志向する。だから信の「スペクタクル」がここに立ち上がるのだと見做すことは可能だ。しかし実際にはそうではない。これは舞台または“興行”ではない。これは戯曲なのだ。これは確かに戯曲集なのに、そこにはスペクタクルが降臨しているのだ。その点を読むことが、すなわち信を問うことになる。
21世紀の、信。
『南へ』にはほとんど反射的に嘘をつくヒロインが登場する。読者にとって主人公が信じられない小説というのはほぼ成り立たない。トリックとしては別だが。なのに主人公が信じられない戯曲というのは、成り立つ。ここに成り立っているのだ、野田秀樹の戯曲として。安手のミステリーの枠にも収まらずに。驚きはみたび、こうして感じられる。半分は戦慄として感じてしまったほうがよい。

(ふるかわ・ひでお 作家)

目次

ザ・キャラクター
表に出ろいっ!
南へ
あとがき

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