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虎屋500年、エルメス180年——
過去の挑戦の連続に、現在(いま)はある。

老舗の流儀―虎屋とエルメス―

黒川光博/著、齋藤峰明/著

1,728円(税込)

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発売日:2016/10/18

読み仮名 シニセノリュウギトラヤトエルメス
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判
頁数 223ページ
ISBN 978-4-10-350451-1
C-CODE 0095
ジャンル 実践経営・リーダーシップ
定価 1,728円
電子書籍 価格 1,382円
電子書籍 配信開始日 2017/04/14

「エルメスのライバルを強いて挙げるならば虎屋」。この言葉から始まった、虎屋17代目とエルメス本社前副社長の対話。会社が長く続く理由とは? 働くことの意義とは? パリ本店「エルメス・ミュージアム」や和菓子を研究し紹介する「虎屋文庫」、それぞれの工房まで。当事者が案内する、最先端を走り続ける企業の舞台裏。

著者プロフィール

黒川光博 クロカワ・ミツヒロ

「虎屋」代表取締役社長。1943年、東京都生まれ。虎屋十七代。学習院大学法学部を卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)勤務を経て1969年、虎屋に入社した。1991年より同社代表取締役社長に。全国和菓子協会会長、全日本菓子協会副会長、一般社団法人日本専門店協会会長等を務めた。著書に『虎屋 和菓子と歩んだ五百年』がある。幼少より親交のあった寛仁親王殿下のご著書『今ベールを脱ぐ ジェントルマンの極意』では服飾談義を展開している。東京在住、一男二女の父。

齋藤峰明 サイトウ・ミネアキ

「エルメス」フランス本社前副社長。1952年、静岡県生まれ。高校卒業後渡仏し、パリ第一(ソルボンヌ)大学芸術学部へ。在学中から三越トラベルで働き始め、後に(株)三越のパリ駐在所長に。40歳でエルメス・インターナショナル(パリの本社)に入社、エルメスジャポン社長に就任。2008年よりフランス本社副社長を務め、2015年8月に退社。シーナリーインターナショナルを設立、代表に就任。フランス共和国国家功労勲章シュヴァリエ叙勲。エルメスでの仕事を語った本に『エスプリ思考~エルメス本社副社長、齋藤峰明が語る』(川島蓉子著)がある。妻、一男二女とパリ在住。

書評

“挑戦の連鎖”の先に老舗は存在する

川島蓉子

「革新という言葉を、最近は使わないようにしています」、「イノベーションという言葉も同様ですよね」――言い合っている二人は、老舗である虎屋の十七代を務める黒川光博さんと、エルメス本社前副社長の齋藤峰明さん。両社が築いてきた歴史は、幾多の革新があってこそのこと。それを否定するような発言に、一瞬耳を疑った。
 黒川さんは、五〇〇年に及ぶ和菓子の老舗を率いる経営トップ。伝統に甘んずることなく「トラヤカフェ」、「とらや東京ミッドタウン店」をはじめ、数々の挑戦を積み重ねてきた。一方、フランスの高級ブランド、エルメスの本社副社長を務めてきたのが齋藤さん。高校卒業後に単身パリに渡り、日本でエルメスジャポンの社長を担った後、パリ本社で経営陣を務めた。
 冒頭の話には続きがある。聞けば、革新とは本来、軽々しく使う言葉でなく、歴史に刻まれるほどの大きな変化に付されるもの。ここ数年、革新やイノベーションという言葉が氾濫し、本来の意味が希薄化している。だから、あえて使うことを控えているとのこと。伝統として続けてきた意義を重々理解した上で、そこに磨きをかけるために、新たな挑戦を続けていく。それが価値につながっていくことが当たり前ととらえ、実践してきたのだ。老舗を率いてきた視座から見える、本質を突いた視点と腑に落ちた。
『老舗の流儀―虎屋とエルメス―』は、そんな二人の対話をまとめたもの。「会社とはなにか」「働くことの意義」「おしゃれとは」「女性が活躍すること」など、さまざまな話題が繰り広げられる。対話は、東京、パリ、御殿場(静岡)、そしてまた東京、と場を変えて続いた。長年にわたり、両者とお付き合いのある私が、僭越ながら、対話の進行と構成を担う贅沢をあずかった。
 特に興味をそそられたのは、二人のファッションについての考え方。夏に白麻のスーツをさらりとまとう黒川さん、冬に紫紺色のストールで首元を彩る齋藤さん。表層的な流行を取り入れたり、自らを飾り立てるファッションでなく、独自のスタイルを持っている。こういう装いができる人は、そうはいないと感じていた。ところが「ファッションについて、特にこだわりはない」というではないか。これも深く聞くと、一過性の流行を意味する狭義のファッションではなく、社会に向けて自己表現する広義のファッションにこそ、重きを置いていることがわかった。
 ファッションは、身体に密着して日々まとうもの。意識するとしないとにかかわらず、自分自身を表現している。一方でファッションは、身に着けた人と一体化し、人に見られる存在でもある。つまり、ファッションは自己表現であると同時に、評価される対象でもある。自分と社会をつなぐ役割を果たしている。そして、「ファッションは礼節の基本をなすもの」という言葉の裏に、老舗トップが務める特別な役割や、人に見られる存在として自分を律する姿勢を感じた。二人の装いは、伝統に則った礼儀と節度を弁えながら、自身の社会性を表現している。そしてそこに、ちょっとした遊び心が垣間見える。だから“黒川さんのスタイル”、“齋藤さんのスタイル”として記憶に残るのだ。
 そんなファッションから会社のあり方にまで、本書を通じて言えるのは、虎屋とエルメス、出生は日本とフランスと異なるものの、共通する価値意識が驚くほど多いこと。その根底には、過去から今にいたる経緯を尊重しながら、今から未来につなげていくための飽くことなき挑戦が続いている。長きに渡って確固たる地位を築き、社会の中で認められてきたわけは、そこにあると確信した。


(かわしま・ようこ ジャーナリスト)
波 2016年11月号より

目次

はじめに
1 虎屋とエルメスの共通点とは
従業員は「ファミリー」の一員
流行に惑わされない
すべては職人の経験からはじまる
日々の生活の中に発想は生まれる
2 「会社」「働く」を突き詰める
会社とは何かを突き詰める
「無視する」技術
「会社が良くなる」とは
「会社の常識」と「社会の常識」との乖離
リーダーシップは毎日の発信から
勘違いをしているのは誰?
「ジョブ・ディスクリプション」
優秀な販売員は優秀な店長になれるのか
変わらないことは、変わること
女性の立場の日仏比較
女性の「活用」と大根のしっぽ
まずは「やっちゃう」
発言しないことは存在していないこと
国はなぜあるのかを突き詰める
3 カフェとミュージアムが教えてくれること
エルメス・ミュージアム
「虎屋文庫」という存在
和菓子は日本人のライフスタイルと結びついている
必然性なんて要らない
裏切ってはいけない
パリ店は虎屋に教えてくれる
「日本にも虎屋はあるの?」
虎屋がパリに店を持つことの意義
トラヤカフェをやってみて
日本語の素養を身に付けたい
パリのサイトーさんの生活
クロカワさんの社長な一日
贈りました、の形骸化
行事の多過ぎる日本
4 東京を離れて、ものづくりを考える
作る人と使う人の距離
ものづくりの原点
世界の老舗企業はつながっている
日本人は手で考える
技術をオープンにする必要性
フランスから和菓子を学びに来る人がいる
若い人に「やらせる」
与えられたきっかけをこなしてみる
「やっちゃっていた」経験が土台になる
「最近の若い人は」と言う人の問題点
若者のエネルギーをどこかで活かす
勘で判断することが大事
会社の存続の目的
みんなの前で怒る
幸せに働くために何が必要か
5 長く続いてきた理由、老舗談議
嫌なものは身に付けない
作っている人の話を聞いておく
男は楽をするとダメになる
服装のルールをはきちがえない
前に逃げている
羊羹を世界へ!
商品から物語へつなげていく
お互いの道理を確認する
これからの目標
あとがき
最近のできごと 黒川光博
「日本発」を創る 齋藤峰明
おわりに 川島蓉子

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