ホーム > 書籍詳細:魂でもいいから、そばにいて ―3・11後の霊体験を聞く―

「いままで誰にも言えなかった――」
喪(うしな)った最愛の人との“再会”の告白。

魂でもいいから、そばにいて ―3・11後の霊体験を聞く―

奥野修司/著

1,512円(税込)

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発売日:2017/02/28

読み仮名 タマシイデモイイカラソバニイテサンテンイチイチゴノレイタイケンヲキク
装幀 田中和義(新潮社写真部)/カバー写真、新潮社装幀室/装幀
雑誌から生まれた本 新潮から生まれた本
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 255ページ
ISBN 978-4-10-404902-8
C-CODE 0095
ジャンル ノンフィクション
定価 1,512円
電子書籍 価格 1,512円
電子書籍 配信開始日 2017/03/10

「亡き妻があらわれて語った〈待っている〉という言葉が唯一の生きる希望です」「兄の死亡届を書いているとき〈ありがとう〉と兄のメールが届いて」「夫が霊になっても抱いてほしかった」――未曾有(みぞう)の大震災で愛する者が逝(い)き、絶望の淵(ふち)にあった人びとの心を救ったのは、不思議でかけがえのない体験の数々だった。“奇跡”と“再生”をたどる、感涙必至のノンフィクション。

著者プロフィール

奥野修司 オクノ・シュウジ

1948(昭和23)年、大阪府生まれ。ノンフィクション作家。立命館大学卒業。1978年から南米で日系移民を調査する。帰国後、フリージャーナリストとして活躍。1998年、「28年前の「酒鬼薔薇』は今」で、「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」を受賞。『ナツコ 沖縄密貿易の女王』で、2005年に講談社ノンフイクション賞を、2006年に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。『ねじれた絆』『皇太子誕生』『心にナイフをしのばせて』『「副作用のない抗がん剤」の誕生 がん治療革命』など著作多数。

書評

死者と生者の間に生み出された物語

橘玲

「そもそもなんでこんなことを始めたのか?」というのが、私の最初の疑問だった。東日本大震災をテーマにした本はいくつもあるが、まさか霊体験とは思わなかった。
 じつはこの疑問は、奥野さん自身が本書の冒頭に書いている。きっかけは、宮城県で二千人以上を看取った在宅緩和医療の医師だった。その医師はがんの専門医だったが、自身が胃がんで余命十カ月を宣告され、奥野さんと話したときはその十カ月がすでに過ぎていた。
 被災したひとの二割が幽霊を見たという数字を挙げて、医師は奥野さんに、霊と生者との物語を書くよう強く勧めた。だが当然のことながら、奥野さんは躊躇する。客観的に検証できない霊体験では、ノンフィクションとして成立しないのではないか……。
 しかしそれでも奥野さんは、自分でもよくわからないなにかに突き動かされ、重い腰をあげて東北に向かう。そこはオガミサマという、死者と交流できる女性霊媒師がいまも受け入れられている土地だった。
 父母と死別した女性は、気仙沼のブティックで見ず知らずの客から、「どなたか亡くなりましたか」といきなり声をかけられる。「あなたは胃が弱いから胃の病気に気を付けろとお父さんが言ってます。お母さんは、ありがとうと言ってますよ」
 子どもを亡くした水道工の男性は、建て主の奥さんから「誰かそばに立ってるよ」といわれる。「男の子かなぁ? 悲しそうな顔で見てる。体壊すから、そんなに無理しないでって言ってるよ」
 たしかにこれでは、ノンフィクションにはならない。オガミサマがほんとうに霊と話しているかを科学的に検証するのは難しくない。そしておそらく、物理法則に反することはなにも起きていない。
 現代の脳科学や心理学は、ひとが頻繁に記憶を書き換えていることを明らかにした。たとえるなら、死者に会いたいと念じていると、霊となった死者が会いにくるのではなく、霊体験の記憶が無意識のうちに「捏造」されるのだ。
 しかし、記憶を書き換えているのはいったい誰だろう。それは「無意識」だが、フロイト的なおどろおどろしい欲望のかたまりではなく、文章を読み言葉を理解する知能を持っている。そのうえ、無意識が考えていることを私たち(意識)は知ることができない。
 意思と知能を持つ無意識は、私たちのなかにいる「もう一人の見知らぬ自分」だ。そしてこの何者かは、意識が世界を理解するときのように、論理や物理法則に頼ったりはしない。“それ”が生きているのは、神や悪魔、魔物や妖精、霊や妖怪が跋扈するスピリチュアルな世界なのだ。
 私たちはみな、意識的・合理的な自己と、不合理でスピリチュアルな自己をもっている。親しいひとを失ったとき、意識では現実を理解してもこころでは受け入れることができないのは、スピリチュアルな自己が死を拒絶しているからだ。そしてこの隙間から、霊が立ち現われてくる……。
 ここに、ノンフィクションになり難かった奥野さんの取材が、「ノンフィクション作品」として成立する理由がある。霊体験とは、意識的な自己とスピリチュアルな自己を結ぶ「物語」なのだ。
 奥野さんが聞き取ったのは、理不尽な死を突きつけられたひとたちが、かなしみのなかで生み出さざるを得なかったそれぞれの物語だ。そこにはさまざまな霊が現われるが、幼い子どもを失った親の物語に終わりはなく、その一方で、高齢の父母や長年連れ添った夫・妻はしばしば物語を終わらせるために現われる。
 東京で暮らしていた三三歳の女性は、震災の直後、陸前高田にいる安否のわからない祖母の夢を見る。不自由な足で杖をつきながら津波から逃げようとしたものの、濁流に巻き込まれ恐ろしげな表情で水の中に浮かんでいた。
 それから彼女はずっと、大好きだった祖母を助けられなかったことを気に病んでいた。そしてある日、祖母が彼女の部屋にやってくる。
「ほんとうはなあ、怖かったんだぁ」と、祖母はいった。「でも、おばあちゃんは大丈夫だからね。心配しなくていいよ。みんなのことよろしくな」
 この物語を奥野さんに語ることで、彼女は祖母を送ることができたのだろう。

(たちばな・あきら 作家)
波 2017年3月号より

目次

旅立ちの準備
春の旅
1 『待っている』『どこにも行かないよ』
亀井繁さんの体験
2 青い玉になった父母からの言葉
熊谷正恵さんの体験
3 兄から届いたメール《ありがとう》
熊谷常子さんの体験
4 『ママ、笑って』――おもちゃを動かす三歳児
遠藤由理さんの体験
5 神社が好きだったわが子の跫音あしおと
永沼恵子さんの体験
夏の旅
6 霊になっても『抱いてほしかった』
阿部秀子さんの体験
7 枕元に立った夫からの言葉
赤坂佳代子さんの体験
8 携帯電話に出た伯父の霊
吉田加代さんの体験
9 『ほんとうはなあ、怖かったんだぁ』
阿部由紀さんの体験
10 三歳の孫が伝える『イチゴが食べたい』
千葉みよ子さんの体験
秋の旅
11 『ずっと逢いたかった』――ハグする夫
高橋美佳さんの体
12 『ただいま』――津波で逝った夫から
菅野佳代子さんの体験
13 深夜にノックした父と死の「お知らせ」
三浦幸治さんと村上貞子さんの体験
14 《一番列車が参ります》と響くアナウンス
今野伸一さんと奈保子さんの体験
15 あらわれた母と霊になった愛猫
大友陽子さんの体験
16 避難所に浮かび上がった「母の顔」
吾孫耕太郎さんの体験
旅のあとで

つなぐ本×本 つながる読書<広がる世界

悲しみをこえる心のドキュメント。

避難することさえできない絶望の中で、命をつなぎとめるために語られる物語がある。

作家自作を語る

著者が本書の舞台裏を語ります。【収録】2017(平成29)年2月

反響

2017年4月24日現在、発売後約2ヶ月間で以下多数のメディアに取り上げられました。
・河北新報(2017年2月22日・朝刊)
・東京新聞(2017年2月22日)
・東京MX・テレビ「5時に夢中!」(2017年2月23日放送:中瀬さんによる紹介)
・HONZ(2017年2月28日:配信)
・NHK「マイあさラジオ」(2017年3月4日放送:奥野修司氏・出演)
・岩手日報(3月7日・朝刊)
・読売新聞(2017年3月7日・朝刊)
・スポーツ報知(2017年3月10日・BOOKセレクト欄)
・文化放送「おはよう寺ちゃん 活動中」(2017年3月10日放送:奥野修司氏・出演)
・ダイヤモンド・オンライン(2017年3月10日:配信)
・TBSラジオ「久米宏 ラジオなんですけど」( 2017年3月11日放送:奥野修司氏・生出演)
・日本経済新聞(2017年3月11日付・朝刊)
・毎日新聞(2017年3月12日・日曜版・朝刊)
・週刊女性:BOOK欄(2017年3月14日発売号)
・朝日新聞(2017年3月15日・夕刊)
・東海新報(2017年3月16日)
・サンデー毎日(2017年3月19日号)
・女性自身(2017年3月21日号)
・ニッポン放送「あなたとハッピー!」(2017年3月23日放送:中瀬さんによる紹介)
・日刊ゲンダイ(2017年3月30日付)
・日刊ゲンダイ・デジタル(2017年3月30日:配信)
・北海道新聞(2017年4月2日・日曜版)
・共同通信:配信記事「この人」(山形新聞は4月3日付。ほか全国20ほどの地方紙に配信)
・週刊プレイボーイ(2017年4月3日号)
・夕刊フジ(2017年4月4日付)
・週刊ポスト(2017年4月7日号)
・読売新聞(2017年4月9日付)
・ダ・ヴィンチニュース(2017年4月11日:配信)
・週刊文春(2017年4月13日号)
・週刊朝日(2017年4月14日号)
・Are You Happy?(2017年5月号)
・Jレスキュー(2017年5月号)

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