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働かなければ学べない。進学や就職、未来を奪われた子どもたちの叫び!

高校生ワーキングプア―「見えない貧困」の真実―

NHKスペシャル取材班/著

1,404円(税込)

本の仕様

発売日:2018/02/16

読み仮名 コウコウセイワーキングプアミエナイヒンコンノシンジツ
装幀 DigitalVison/写真、Getty Images/写真、新潮社装幀室/装幀
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判
頁数 220ページ
ISBN 978-4-10-405609-5
C-CODE 0095
ジャンル ノンフィクション
定価 1,404円
電子書籍 価格 1,404円
電子書籍 配信開始日 2018/03/09

学費のみならず、生活費を稼ぐためダブルワークは当たり前。もらいものばかりの家では、親に代わりきょうだいの世話や家事をこなす毎日。成績優秀でも学費が賄えず、多額の奨学金をはじめ「多重債務」を背負う危険性も……。最新ファッションにスマートフォン、一見すると、普通の彼らが直面する「見えない貧困」の実態を炙り出す。

著者プロフィール

目次

はじめに
序章 働かなければ学べない
高校生が抱える悩み/『ワーキングプア』から10年/子どもの貧困が本格化している/日本の子どもが危ない/「高校生」が分水嶺になる理由/「いつまでも中流だと思いたい」団塊ジュニアの悲哀
第一章 家計のために働く高校生たち
「働くのは当たり前」/大黒柱になった女子高生/彼女が働く理由/「高校生ワーキングプア」のリアルな一日/自慢のお姉ちゃん/事故に遭う/それでも「家族を守りたい」/進学――夢への第一歩
第二章 奨学金という“借金”を背負って進学する高校生たち
高校で開かれる奨学金の説明会/生徒の6割が奨学金を申し込む/「奨学金は借金です」/2人に1人が奨学金を借りる時代/高卒求人の激減/奨学金に頼るしかない/手続きで浮かんできた「見えない貧困」/ある女子生徒との出会い/母親との顔合わせ/日本学生支援機構の奨学金/「奨学金が返せない」非正規労働で働く若者たち/奨学金=借金800万円を背負う/教師になるために努力した3年間/親には相談できない/入学金が払えない?/労働金庫(ろうきん)での申し込み/進学費用はどこに頼る?/給付型奨学金が導入されても……/国の教育ローン/子どもの将来のために/奨学金返済で結婚や出産ができない/母親から届いたメール/大学に合格
第三章 アルバイトで家計を支える高校生たち
普通に見える高校生が……/生活費のために働く高校生が51%/お金がないと友達と遊べない/「働くことが多くてしんどい」/アルバイトで成績が下がった/高校生の「生活困窮」に気づかない教師たち/働き方をどう教えるのか――ある高校の模索から/貧困の再生産を繰り返させないために/ぶり奨学金とは?/奨学金返済支援プログラム
第四章 「子どもの貧困」最前線を追う
子どもたちの「見えない貧困」/ある親子との出会い/貧困を見せないようにする/もらいものに囲まれた生活/今の生活から抜け出せない/足りないものは何ですか?/人とのつながりが与えてくれたもの/見ようとしないと「見えない」/子どもの貧困がもたらす心への影響/社会的損失40兆円の衝撃/「頑張らない自分のせい」=自己責任論/スマートフォンがライフライン/社会的な経験の欠如/大人にさせられた子どもたち/教育の機会の欠如/「高校生ワーキングプア」を支えたい――ある予備校の試み/子どもを守りたい親たちの苦しみ
第五章 「見えない貧困」を可視化する
貧困を可視化する大阪府の実態調査/困窮度を4段階に分類/子どもたちの剥奪指標/3つの欠如/調査から見えてきた「ひとり親家庭」の厳しさ/「困窮度Ⅰ」(=相対的貧困)の家族の暮らし/家事は子どもの仕事/物的資源の欠如とは/新しい衣服や靴が買えない/人とのつながりの欠如/ヒューマン・キャピタルの欠如/対策はどう進めるのか?/「お母さんが好きだから」/子どもたちの声を潰さない社会に
おわりに

インタビュー/対談/エッセイ

「高校生ワーキングプア」との出会い

板垣淑子

 日本一、いや世界一、忙しいのではないかと思う女子高生と出会った。その働きぶりに驚愕し、密着取材をしたら、大人である私たち取材班も、たった1日でヘトヘトになった。
 シングルマザーの母親を支え、小学生の弟、妹の面倒を見ながら高校に通い、平日の夜と休日、アルバイトをしている優子さん(仮名)、18歳。彼女の1日は朝5時から始まる。
 起きると家族4人分の洗濯をしながら、乾いた洗濯物をたたんで、しまう。台所と居間の掃除を済ませると、洗濯機がピーと鳴り、洗い終わった洗濯物を干し始める。座る暇もなく、朝食の準備をして、朝7時には妹と弟を起こしに行く。2人の身支度など、世話をしながら、朝食の片付けや自分の通学の準備をする。2人を送り出した後、ようやく登校だ。
 学校では勉強熱心で、成績も優秀な優子さん、通知表はオール5だ。授業中も集中して取り組み、学校が終わると急いでバイト先の居酒屋へ。そこで夕方5時から夜10時まで、平日は5時間働く。家へ戻ると深夜11時。そこから夕食を食べ、机に向かう。眠りにつくのは午前1時過ぎ。しかし、5時には起床し、忙しい生活が繰り返される。
 そんな毎日を送っていても、優子さんは「家族のためなら、当たり前」と自分の境遇を嘆くことはなく、むしろ、もっと家族を楽にしてあげたい、と話す。進学について聞いても「4年制の大学に行きたいけど、お母さんを早く支えたいから2年で卒業できる専門学校にします」と言う。優子さんの、学校に通う時間+家事にかかる時間+アルバイトの時間を足し合わせると、過労死ラインを大きく上回る「働き方」だ。それでも、大好きな家族のために自分ができることがあるなら、頑張って当たり前だと、笑顔を見せながら語ってくれた。
 今、家計を支えるためにアルバイトをする高校生が増えている。人手不足が深刻な雇用市場で高校生は重宝され、皮肉にも、働きたければ働きたいだけ、働くことができてしまう。だからこそ過労死ラインで働く高校生たちが、必死で家計を支え、新たなワーキングプア層を作り出すことになってしまっているのだ。
 朝から夜まで、フルタイムで働いても、生活保護水準以下の収入しか得られない「ワーキングプア」の実態を伝える番組を最初に制作したのは、2006年だった。それから10年。非正規労働者がさらに増え、雇用者の4割に達している。子育て世代の生活は厳しさを増し、国の調査では、児童のいる世帯の63・5%が「生活が苦しい」と訴えている(2017年)。
 NHKスペシャル「見えない“貧困”~未来を奪われる子どもたち~」の中で取り上げた千葉県の公立高校で行ったアンケートの結果、アルバイトをする理由について「生活費のため」と答えた高校生が半数を占めた。
「働かなければ学べない」という高校生の現実――家計を支え、自らの進学費用を捻出し、「奨学金」という借金を背負って進学する――それでも、私たちが出会った高校生たちは、一見、経済的に困っている様子は全く見えなかった。今の高校生は、ファストファッションでお金をかけずにお洒落を楽しみ、格安スマホを当たり前のように持ち、外見からは、経済的な困窮状態が一切、見えてこないのだ。
 今、「7人に1人の子どもが相対的貧困の状態におかれている」と言われる。見えない貧困を「可視化」するために、相対的貧困の世帯の子どもたちが何に困っているのか、どういう権利が剥奪されているのかを具体的に見ていくため、取材を丹念に進めた。アルバイト先で、笑顔で働く高校生たちは、大切な家族を守るためなら、いくらでも頑張れると口をそろえる。しかし、ギリギリの生活で踏ん張っている子どもたちが、いつ、ポキッと折れてしまうのか――そばで見てきた私たちは、大きな不安を感じてきた。
 子どもたちが、頑張っていられるうちに、社会全体で問題を共有し、有効な手を打っていかなくてはならないのではないだろうか。そのためにも、高校生ワーキングプアが背負っている「見えない貧困」を知って欲しい。それが、私たちの社会が子どもの貧困と向き合う出発点だと確信している。

(いたがき・よしこ NHKチーフプロデューサー)
波 2018年3月号より
単行本刊行時掲載

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