ホーム > 書籍詳細:室町無頼

腐りきった世を変えてやる。前代未聞のたくらみを一本の六尺棒で。超絶クールな大傑作エンタテインメント。

室町無頼

垣根涼介/著

1,836円(税込)

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発売日:2016/08/22

読み仮名 ムロマチブライ
雑誌から生まれた本 週刊新潮から生まれた本
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 534ページ
ISBN 978-4-10-475006-1
C-CODE 0093
ジャンル 歴史・時代小説
定価 1,836円
電子書籍 価格 1,469円
電子書籍 配信開始日 2016/12/23

応仁の乱前夜、富める者の勝手し放題でかつてなく飢える者に溢れ返った京の都。ならず者の頭目ながら骨皮道賢(ほねかわどうけん)は権力側に食い込んで市中警護役を任され、浮浪の徒・蓮田兵衛(はすだひょうえ)は、ひとり生き残った用心棒を兵法者に仕立てようとし、近江の古老に預けた。兵衛は飢民を糾合し、日本史に悪名を刻む企てを画策していた……。史実に基づく歴史巨篇。

著者プロフィール

垣根涼介 カキネ・リョウスケ

1966(昭和41)年長崎県諫早市生れ。筑波大学卒業。2000(平成12)年『午前三時のルースター』でサントリーミステリー大賞と読者賞をダブル受賞。2004年『ワイルド・ソウル』で、大藪春彦賞、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞と、史上初の3冠受賞に輝く。翌2005年、『君たちに明日はない』で山本周五郎賞を受賞。その他の著書に『ヒート アイランド』『ギャングスター・レッスン』『サウダージ』『クレイジーヘヴン』『ゆりかごで眠れ』『真夏の島に咲く花は』『光秀の定理(レンマ)』『室町無頼』などがある。

垣根涼介 Dawning day, Dawning life (外部リンク)

書評

室町小説の誕生

早島大祐

 カキネさんという方から、編集者を通じて、小説執筆のために足軽や室町時代について話が聞きたいとの依頼を受けたのは、確か三~四年前のことだった。ネットで検索してみると、現代のアウトローを題材に小説を書かれている方で、それらのうちのいくつかは、テレビドラマ化もされている。垣根涼介さんが流行作家であることはすぐにわかった。
 最初に私の職場でお会いした際、赤いシャツを着て、同伴した背の高い編集者を「ノリオちゃん、ノリオちゃん」と連呼して来られた様子は、こちらが想像する業界人の姿そのものだったが、実際に依頼された仕事内容は少々、予想とは異なっていた。私に求められているのは、小説の舞台の小道具としての史実の提供であり、有り体にいえば、裃をつけた現代劇の裃の調達役だと思っていたからである。
 ところが、案に相違して垣根さんは史実の確認に熱心であり、その勢いを前に、時にこちらが圧倒されることもあった。一例をあげよう。垣根さんは事前に伏見稲荷大社や向日神社などの丘陵に登り詰めるなど、当初から、高所からの眺めにこだわっておられた。私に白羽の矢がたったのも、足軽に関わる本と、相国寺大塔について触れた著作があったからである。
 小説にもたびたび登場する、この相国寺大塔とは、応永六年(一三九九)に室町幕府三代将軍足利義満が、亡父義詮の三三回忌法要にあたり、菩提追善のために建立した約一一〇メートルの高さの大塔で、自身の権勢を誇示する役割も果たしていた。しかしその高さ故に雷火で頻繁に焼失し、応永十年(一四〇三)に焼失したのち、義満が当時、住んでいた北山第(今の金閣寺)に北山大塔として再建され、この建物も応永二三年(一四一六)に焼けて再び相国寺横に建て直され、最終的に文明二年(一四七〇)にやはり落雷による火災で失われた幻の塔である。
 頻繁に雷火で焼失ということ自体が、この塔の高さをよく物語るが、執筆が具体化する過程で相国寺大塔付近で徳政一揆が蜂起した記事があるのではないかとの問い合わせを受けた。半信半疑で探してみると、小説と同じ時期に糺の森付近で一揆と幕府軍が衝突する記事が確かにあった。研究史的には、この時の戦闘は、一揆が糺の森の西に位置していた将軍御所を目指す過程で発生したと説明されてきたが、相国寺大塔が糺の森の賀茂川を挟んですぐ西隣に屹立していたことを踏まえると、京のランドマークだった大塔をめざす一揆と、それを察知した幕府軍との攻防戦だったと見たほうがよりしっくりくる。塔を目指す一揆のすがたは、研究者も気づかなかった垣根さんの発見であり、本小説の見せ場の一つとなっている。
 このように史実の探求に熱心である一方、それに束縛されているわけではない。本作品の主要登場人物である骨皮道賢と蓮田兵衛、馬切衛門太郎などはいずれも実在の人物だが、史料では数行の記述が残されるのみで彼らの実像については不明な点が多い。しかし本作品では小説の技法で彼らの動向がきわめて躍動的に描かれており、史実を土台にしていることもあって、リアリティーをもって読み手に迫ってくる。それは今後、私が骨皮道賢の史料を読みなおした時に、本小説で描かれた道賢像が頭からはなれないことを危惧するほどである。
 折しも今年の七月、北山大塔の塔の頂上にそびえ立つ、避雷針のようなかたちをした九輪の一部と推定される金属片が金閣寺の境内から発掘された。大塔に関連する遺物が発掘されたのは実ははじめてであり、大塔をとりあげた室町時代の小説が刊行されるタイミングとしては最適ではないだろうか。史実の追い風も受け、室町小説がここに誕生したのである。


(はやしま・だいすけ 京都女子大学准教授・日本中世史)
波 2016年9月号より

目次

第一章 赤松牢人
第二章 京洛の遊女
第三章 唐崎の老人
第四章 吹き流し才蔵
第五章 見世物
第六章 野火

インタビュー/対談/エッセイ

無頼でなければ、この世は変えられない

垣根涼介

――小説家デビューの十年後には歴史時代小説を書こうと決めていたそうですね。

垣根 歴史時代小説は時代考証や言葉遣いなどでハードルが高く、デビュー当時はまだ勤め人で激務だったため、それまでに勉強する時間も取れていませんでした。専業作家になってから十年計画で史料を集めて読み込み、歴史の見方や小説作法などを叩き込んできました。

――計画通りに『光秀の定理』を発表し、第二弾はなぜ「室町」の「無頼」だったのでしょうか。

垣根 この時代を調べると現在の日本、特にバブル経済が弾けたあと二十年以上経ったいまの日本と社会の様相が酷似しているんですね。為替や信用取引が登場し、馬借などの輸送機関が生まれ、農業生産高が飛躍的に上昇し、人と物と銭がめまぐるしく回り始めます。また日明貿易を初めとした海外との交易が盛んでグローバリズムの波に洗われ、日本人の生活空間の原型となる床の間や、茶の湯や侘びさびなどが誕生し、経済的にも文化面でも国力は増していました。にもかかわらず公家と武家、神社仏閣は好き勝手に利益を吸い上げる仕組みを築き上げ、国民の間にかつてないほどの格差が生まれ、その現状に対して政府である室町幕府はまったくの無策でした。鎌倉や江戸時代と違って人口が一極集中化した京の都は、職を失った牢人や流民で溢れ返っていた。応仁の乱が勃発する前、何も持ってなかった者が、どのように世に立ち、いかにして個人として生きたかに強く惹かれました。

――実在した二人の牢人を軸にストーリーは展開します。

垣根 骨皮道賢と蓮田兵衛はおそらく武家の出ながら、親の代に頼れるものを失い、武器となるものを持って、立ち向かいました。道賢は三百人もの印地(極道者)の足軽集団を組織し、その力を幕府に見込まれて治安維持を任されたものの、権力の内部から体制を突き崩そうとし、一方の兵衛は牢人と洛外の村落をまとめあげ、法外な金利を取る銭貸しらと渡り合い、事を起こそうとしていた。いわば既存の枠組みから外れたところに現れたアウトサイダー達で、足枷がなかった。真の社会変革はアウトサイダーにしか出来ないことで、二人も果敢に体制に挑んだのでしょう。

――道賢に見出され、兵衛の「武器」となっていく兵法者、吹き流し才蔵もクールで、魅力あふれる若者ですね。

垣根 そこそこの技量の棒術を身に着けていた才蔵は道賢に拾われますが、弱点があって、彼らの足軽集団では使いものにならず、「粥三杯」で兵衛に譲り渡されます。その後、満身創痍となる苛酷な修行を経て、自分の特殊技能を磨きあげ、兵衛から捨て身の働きを命じられても、自ら進んで引き受けます。庶民がその先々に望みを持てない世にあって、自分で納得のできる在り方や生き方をどのように作っていけるのか、才蔵を通して描きたかったのです。

――兵衛の首謀した民衆蜂起は史実とは言え、破天荒で痛快、そして一揆の概念を覆すものですね。

垣根 まともな通信手段のなかった時代ですから、それだけに兵衛が評判や噂に着目し、手段として用いたのは凄まじい威力があったろうと想像しました。また戦術や指令は単純明解な方が良かったはずで、京洛のどこからでも見える一番高い相国寺の大塔を目印にし、続いて二番目に高い東寺に人を集わせる。この裏付けとなる史実を知った時には震えました。兵衛は一揆の概念を覆したのでなく、むしろ本質を突いていたと思います。通常の一揆は食糧を奪って証文を破棄すれば良しとし、首謀者は名乗りをあげずに逃げようとしますが、それでは一揆の与える打撃は小さくなり、一過性で終わりかねない。功名心からでなく兵衛は首魁として名を触れ回り、首謀者が計画的で組織化した一揆であると知らしめることで、権力者達を震撼させ、その基盤を激しく揺さぶろうとした。でなければ、一度でなく複数回蜂起し、ひと月半にわたって戦い、蓮田兵衛の名が残っている史実の説明がつきません。

――道賢を知るため、頭を丸めたそうですね。

垣根 道賢は人生のどこかの時点で決定的なことが起きて、実の名を捨て、骨皮道賢という通り名をつくったのでしょう。だから、僧形で剃髪していたと言われます。道賢は応仁の乱で戦に敗れ、女装して生き延びようとした逸話でも知られ、原稿直しの最後の最後までよく分らない部分が残ってました。道賢に倣い、頭を丸めてみると、ハタと思い当たることがあった。それは誰しもそういう窮地に陥ると私自身感じ入ったもので、本書をお読みになってご確認いただきたいです。


(かきね・りょうすけ 作家)
波 2016年9月号より

まとめテーマでくくる 本選びのヒント

つなぐ本×本 つながる読書<広がる世界

現代日本社会の様相と酷似していた室町を読む。

何も持たない者が、どのように世に立ち、いかにして個人として生きたか。

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