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財政秩序と復興――。「ドイツの経験は、反面教師として役にたつはずです」(池上彰)

ハイパーインフレの悪夢―ドイツ「国家破綻の歴史」は警告する―

アダム・ファーガソン/著、黒輪篤嗣/訳、桐谷知未/訳、池上彰/解説

2,160円(税込)

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発売日:2011/05/27

読み仮名 ハイパーインフレノアクムドイツコッカハタンノレキシハケイコクスル
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 318ページ
ISBN 978-4-10-506271-2
C-CODE 0098
ジャンル 経済学・経済事情
定価 2,160円

東日本大震災を受け、今後つぎ込まれる多額の復興資金。国債の莫大な発行残高など、この国の財政秩序はもはや限界に近い。現状を唯一担保する「政府の信用」が崩れたとき、貨幣は価値を失い、国は死ぬ――。借金に借金を重ね、天文学的なインフレに見舞われ破綻したドイツの過去から、日本、そして世界の今後を暗示する警告の書。

著者プロフィール

アダム・ファーガソン Fergusson,Adam

1932年スコットランド生まれ。イートン校からケンブリッジ大学に進み歴史学を修めたのち、ジャーナリストに。ザ・タイムズ紙などで健筆をふるった。また、欧州統合に深くかかわり、英外務省の特別顧問、欧州議会の議員を務めた。『ハイパーインフレの悪夢―ドイツ「国家破綻の歴史」は警告する―』の舞台は第一次世界大戦後のドイツ。紙幣の濫発により通貨の価値が下落し、誘発されたハイパーインフレによって社会が崩壊していく過程は、今でも貴重な教訓として引き合いに出される。その発生から終息に至るまでを当時の日記や同時代人の証言、外交資料などを駆使して生々しく描きだした本書は、欧米で数多くの高い評価を受けている。

黒輪篤嗣 クロワ・アツシ

翻訳家。上智大学文学部哲学科卒業。おもな訳書に『ハイパーインフレの悪夢』(新潮社)、『レゴはなぜ世界で愛され続けているのか』(日本経済新聞出版社)、『サイクル・サイエンス』(河出書房新社)、『デザインイノベーション』(翔泳社)などがある。

桐谷知未 キリヤ・トモミ

東京都出身。南イリノイ大学ジャーナリズム学科卒業。翻訳家。『ビジネスで必要なことはみんなディナー・テーブルで学んだ』『シリコンバレー式で医療費は安くなるのか』など訳書多数。

池上彰 イケガミ・アキラ

1950(昭和25)年、長野県生まれ。ジャーナリスト。東京工業大学教授。慶應大学経済学部卒業後、NHK入局。報道記者や番組キャスターなどを務め、2005年に独立。『伝える力』『おとなの教養』『新・戦争論』(共著)ほか著作多数。2013年、伊丹十三賞受賞。

書評

波 2011年6月号より 紙幣が紙切れに変わるとき

池上彰

長らくデフレに悩まされてきた日本で、にわかにハイパーインフレへの懸念が口にされるようになりました。1日単位、場合によっては数時間単位で物価が上昇する、猛烈なインフレのことです。
きっかけは東日本大震災でした。その復興費用をどう捻出するかで、与党から「国債の日銀引き受け」を求める声が出ました。政府の国債発行残高が天文学的数字になっている以上、新規の国債発行は苦しい。だから「日銀に直接買い取らせればいい」というのです。
これに反対する日銀や論者たちは、「国債の日銀引き受けはインフレの引き金になる。もしハイパーインフレになったら取り返しがつかない」と指摘します。その論拠のひとつが、この本で扱っているドイツの経験です。
1920年代のドイツでハイパーインフレが燃え上がった時、人々がどのように行動し、社会がどのように崩壊していったかを、著者は冷静な筆致で辿っています。
第一次世界大戦で敗北したドイツは、天文学的な賠償金を背負わされました。敗戦で経済がガタガタになったドイツにとって、財政支出の切り札になったのが、国債を大量発行してライヒスバンク(ドイツ帝国銀行)に買い取らせる手法でした。
市場に通貨マルクがあふれてマルク安が進むと、輸出商品の値段が下がり、ドイツ経済は活性化しました。企業の倒産は減少、失業率も戦勝国のフランスより低くなり、株式市場も活発になりました。企業経営者はインフレを歓迎しました。貨幣価値が下がれば、実質的な納税額も融資返済額も少なくてすむからです。
しかし、それは偽りの繁栄でした。深刻な物価高騰が庶民の生活を襲うと、農家は農産物を売り惜しむようになりました。都市部の高級住宅街では、子どもを思う母親たちが私邸内に勝手に入り込み、残飯目当てにゴミ箱をあさっていたといいます。
物価が時間単位で上昇するようになり、みんなが厖大な紙幣を使うため、大量に印刷しているのに紙幣不足に陥りました。1922年には、ライヒスバンクでの紙幣の印刷が追いつかず、州や地方自治体、企業に対して、認可と保証金納付を条件に緊急通貨の発行を許す法律が成立してしまいます。それでも現金不足は解消しません。ついには「紙幣の発行量を制限するのは、印刷所の能力と印刷工の体力だけになった」――悪夢としか表現しようのない事態の推移は、本書の見事な描写に委ねましょう。
近代において、貨幣とは「共同幻想」です。古代には、狩猟で得た動物の肉や魚を交換するという物理的な価値があった貨幣が、やがては中央銀行が発行した紙切れへと変化します。誰もがただの紙切れを貨幣(紙幣)と信じるからこそ、貨幣として通用するのです。そんな共同幻想によって支えられている以上、人々の政府への信頼が失われれば、それはただの紙切れになるのです。狸が人間を化かすのに使った葉っぱのように。
本の中で、イギリスの駐ドイツ大使の次のような言葉が紹介されています。
「インフレーションとは、いろいろな意味でドラッグのようなものだ」「最後には命取りになるとわかっていても、多くの困難に襲われたとき、人はその信奉者になってしまう」
それは日本にも当てはまります。戦前に政府が戦費捻出のために発行した国債を、当時の日銀が直接買い入れ、その分だけ紙幣を刷ったことで、悪性のインフレが発生してしまいました。この教訓があるからこそ、日銀は、冒頭に記した「国債の日銀引き受け」に大反対しているのです。
東日本大震災で生産基盤が失われ、莫大な復興資金がつぎ込まれることで、日本経済にもインフレの萌芽が見られます。財政秩序と金融節度を失わずに復興を目指すにはどうすればいいのか。ドイツの経験は、反面教師として役に立つはずです。

(いけがみ・あきら ジャーナリスト)

目次

通貨への信頼が失われると何が起きるか 解説・池上彰

2010年版の刊行に寄せて
序章
第1章 金を鉄に
第2章 喜びなき街
第3章 突きつけられた請求書
第4章 10億呆け
第5章 ハイパーインフレへの突入
第6章 1922年夏
第7章 ハプスブルクの遺産
第8章 秋の紙幣乱発
第9章 ルール紛争
第10章 1923年夏
第11章 ハーフェンシュタイン
第12章 奈落の底
第13章 シャハト
第14章 失業率の増大
第15章 あらわになった傷跡
終章
参考文献
謝辞
訳者あとがき

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