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作者七十七歳にして川端の『眠れる美女』に想を得た今世紀の小説第一作。

わが悲しき娼婦たちの思い出

G・ガルシア=マルケス/著 、木村榮一/訳

1,944円(税込)

本の仕様

発売日:2006/09/29

読み仮名 ワガカナシキショウフタチノオモイデ
シリーズ名 全集・著作集
全集双書名 ガルシア=マルケス全小説
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 142ページ
ISBN 978-4-10-509017-3
C-CODE 0097
ジャンル 文芸作品、評論・文学研究
定価 1,944円

満九十歳を迎える記念すべき一夜を、処女と淫らに過ごしたい! これまでの幾年月を、表向きは平凡な独り者で通してきたその男、実は往年、夜の巷の猛者として鳴らした、もう一つの顔を持っていた。かくて昔なじみの娼家の女主人が取り持った、十四歳の少女との成り行きは……。悲しくも心温まる、波乱の恋の物語。二〇〇四年発表。

著者プロフィール

G・ガルシア=マルケス Marquez,Gabriel Garcia

(1927-2014)1927年コロンビアの小さな町アラカタカに生まれる。ボゴタ大学法学部中退。自由派の新聞「エル・エスペクタドル」の記者となり、1955年初めてヨーロッパを訪れ、ジュネーブ、ローマ、パリと各地を転々とする。1955年処女作『落葉』を出版。1959 年、カストロ政権の機関紙の編集に携わり健筆をふるう。1967年『百年の孤独』を発表、空前のベストセラーとなる。以後『族長の秋』(1975年)、『予告された殺人の記録』(1981年)、『コレラの時代の愛』(1985年)、『迷宮の将軍』(1989年)、『十二の遍歴の物語』(1992年)、『愛その他の悪霊について』(1994年)など次々と意欲作を刊行。1982年度ノーベル文学賞を受賞。

木村榮一 キムラ・エイイチ

1943年、大阪生まれ。スペイン文学・ラテンアメリカ文学翻訳者。神戸市外国語大学イスバニア語科卒、同大学教授、学長を経て、現在、神戸市外国語大学名誉教授。主な著書に、『ドン・キホーテの独り言』、『翻訳に遊ぶ』(岩波書店)、『ラテンアメリカ十大小説』(岩波新書)など。主な訳書にコルタサル『悪魔の涎・追い求める男』(岩波文庫)、バルガス=リョサ『緑の家』(岩波文庫)『若い小説家に宛てた手紙』(新潮社)、ガルシア=マルケス『わが悲しき娼婦たちの思い出』、『コレラの時代の愛』、『ぼくはスピーチをするために来たのではありません』(新潮社)、『グアバの香り――ガルシア=マルケスとの対話』(岩波書店)他、多数。

書評

波 2006年10月号より カラッとスッとぼけて  ガブリエル・ガルシア=マルケス 『わが悲しき娼婦たちの思い出』

立川談四楼

 こんなソソる書き出しは初めてです。とにかく「満九十歳の誕生日に、うら若い処女を狂ったように愛して、自分の誕生祝いにしようと考えた」というのですから。
「うら若い処女」を「狂ったように愛して」です。しかも「自分の誕生祝いにしよう」ですからね。何より目を引かれるのは「満九十歳の誕生日に」でしょう。九十歳です、九十歳。一体どうなっているんだと度胆を抜かれ、正気かと思い、その先が読みたくてたまらなくなるわけです。
この著者の作品には、百五十歳、二百歳の登場人物がザラとは聞かされてました。それから『百年の孤独』という空前のベストセラーがあることは知ってました。我が国においては、どこやらのセンスのいい人が焼酎にその名を拝借したことも。もう一つ、ノーベル賞作家であることも。
乏しい知識ですが、それらを知ってなお、「九十歳」という設定の主人公には驚きました。矛盾を承知で言いますと、かえって生々しいリアリティーすらあるのです。
独身、馬づら、醜男。しかし玄人を相手にしては歴戦の強者で、何と相手は六百人超。そんな主人公は、このところご無沙汰だった娼館に乗り込みます。女主人が世話してくれた少女は十四歳、いよいよ「うら若い処女を狂ったように愛」する展開になるのかと思ったらさにあらず、何と主人公は少女に指一本触れず、帰宅するのです。
寄る年波で、というのではありません。意外や、主人公は少女に恋心を抱くのです。その後も何度かともに時を過ごすものの、やはり指一本触れず、やがて娼館で殺人事件が起こり、少女は女主人とともに姿を消します。この時に主人公が少女を探し回るさま、少女が身の回りにいるかのごとき妄想は、九十歳のそれではなく、青年の苦悩そのものです。
主人公は、少女のことを「恋愛論」として新聞のコラムに書き、それが読者の論争を巻き起こします。そうです、主人公は九十歳にして新聞社の名物コラムニスト、町の名士なのです。つまり表向きはジェントルマンの顔を保ちながら、裏では娼館通いのジジイとして描かれるのです。
少女と再会するまでの一年間、九十一歳の誕生日までが描かれます。どんな再会になるかは読んでのお楽しみということになりますが、読後に湿った印象がないのはなぜでしょう。川端康成の『眠れる美女』をモチーフに書かれた小説であるにも拘らずです。
著者がコロンビア出身で、小説の舞台もコロンビアの港町、ということと関係があるのでしょうか。それでこそラテン民族、ということなのでしょうか。日本人好みの情緒情趣は強調されず、主人公にはユーモラスな雰囲気すら漂うのです。もっと言えばスッとぼけた味わいがあります。これはいくらなんでもノーベル賞作家に失礼でしょうか。私はカラッとした文体と主人公を大いに気に入りましたが。

(たてかわ・だんしろう 落語家、作家)

目次

わが悲しき娼婦たちの思い出
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