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オタク青年オスカーの悲恋と、カリブ海の呪い。ピュリツァー賞・全米批評家協会賞W受賞!

オスカー・ワオの短く凄まじい人生

ジュノ・ディアス/著、都甲幸治/訳、久保尚美/訳

2,592円(税込)

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発売日:2011/02/25

読み仮名 オスカーワオノミジカクスサマジイジンセイ
シリーズ名 新潮クレスト・ブックス
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 414ページ
ISBN 978-4-10-590089-2
C-CODE 0397
ジャンル 文芸作品、評論・文学研究
定価 2,592円

心優しいオタク青年オスカーの最大の悩みは、女の子にまったくモテないこと。どうやら彼の恋の行く手を阻んでいるのは、かつて祖父や母を苦しめたのと同じ、ドミニカの呪いらしい――。英語とスペイン語、マジックリアリズムとオタク文化が激突する、全く新しいアメリカ文学の声。英米で100万部のベストセラー、日本上陸。

著者プロフィール

ジュノ・ディアス Diaz,Junot

1968年ドミニカ共和国生まれ。6歳のときに家族で渡米。父親が失踪、兄は白血病を患い、窮乏状態の中で育つ。ラトガーズ大学、コーネル大学大学院で文学と創作を学び、デビュー短篇集『ハイウェイとゴミ溜め』(1996)で高い評価を受ける。初長篇『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』(2007)は全米批評家協会賞およびピュリツァー賞を受賞。2012年には「天才奨学金」として知られるマッカーサー奨学金を得る。現在、マサチューセッツ工科大学創作科で教鞭を執る一方、ピュリツァー賞選考委員も務める。

都甲幸治 トコウ・コウジ

1969年福岡県生まれ。翻訳家、早稲田大学文学学術院教授。東京大学大学院修了。著書に『偽アメリカ文学の誕生』、『21世紀の世界文学30冊を読む』、『狂喜の読み屋』など、訳書にスコット・フィッツジェラルド『ベンジャミン・バトン数奇な人生』、チャールズ・ブコウスキー『勝手に生きろ!』、ジュノ・ディアス『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』『こうしてお前は彼女にフラれる』(ともに共訳)、ドン・デリーロ『天使エスメラルダ』(共訳)などがある。

久保尚美 クボ・ナオミ

1970年生まれ。鶴見大学准教授。共著書に『英和翻訳表現辞典[基本表現・文法編]』、共訳書にカークパトリック『英語クリーシェ辞典』、ミラーほか編『サロン・ドット・コム 現代英語作家ガイド』など。

書評

波 2011年3月号より 信じられない光景

高橋源一郎

おれは愛国者ではないと思う。オリンピックで日本選手が勝ってもなにも感じないし、サッカー日本代表が、アジアカップで韓国と死闘を繰り広げ、最後はPK戦で勝った時も、決勝のオーストラリア戦で李選手が美しいボレーシュートを決めた時も(すいません、後で見ました)、子どもと一緒に寝ていた。そのせいで、ネット上で非難(!)もされたのだ。でも、なぜだか、日本馬が海外で活躍したりすると、その様子をユーチューブで見ては、感涙にむせんだりするのである。日本人はダメで、日本馬ならいいのだろうか?
では、(この小説の)こんな箇所を読んで、嬉しくなってしまうのはなぜだろう。

「最初の一ヶ月間ずっと出かけてばかりだったので、おれが会うオスカーといえばだいたいシーツの下で丸まって眠る大きなこぶだった。オタク野郎が夜更かしするのはロールプレイング・ゲームをするか日本のアニメを見るときだけだった。やつは特に『AKIRA』が好きで、その年だけで千回は見たんじゃないかと思う。夜、部屋に戻ったらオスカーが『AKIRA』をじっと見ている場面に出くわしたことが何度あったかしれない。おれは罵る。またこれ見てんのか? すると、まるで生まれてごめんなさいという調子でオスカーが言う。もうちょっとで終わるから。いつももうちょっとだな。おれは文句を言う。でも実は、別に気にしちゃいなかった。おれは『AKIRA』みたいな映画が好きだったし。そのために毎度夜更かしするってのは無理だったけど。おれがベッドに寝ながら、金田鉄雄と叫ぶのを聞いている。で、次に気がつくとオスカーがおずおずとおれの顔をのぞきこんで、ユニオール、映画は終わったよ、と言っていて、おれは起き上がって、うるせえ! と言うのだ」

いや、ほんと。おれは「金田鉄雄と叫ぶのを聞いている」と書いているあたりでニンマリした。こいつ、わかってんじゃん、と思った。というか、「オスカー」も「おれ」も、よく知っているやつのような気がした。
「もちろんやつは体当たりで、いつものように『バトル・オブ・ザ・プラネッツ』についてペラペラまくしたてていた」などと書かれていれば、「いや、ほんとうにいい趣味してるぜ、オスカー」とも思うけれど、そのこととこの小説の面白さに、どんな関係があるのだろうか。彼らが、日本のアニメやマンガに詳しくて、同じ日本人として誇らしいから? だから、おれは、愛国者じゃないと言ってんじゃん。
ずっと長い間、おれには一つ、大きな疑問があった。おれは、というか、おれたち日本人は、ほんとに海外の小説がわかってるんだろうか、ということだ。それは、逆にいうと、あっちのやつらは(もし興味があるとして)、ほんとに日本(の文化や小説)がわかっているんだろうか、ということだ。「同じ人間なんだ、わかりあえる」という建前は美しい。でも、おれには少々疑問だった。おれ(たち)は、聖書も知らない。キリスト教もイスラム教も(たぶん)よくわからない。ぜんぜん異なった文化の上に根を張った芸術を、ほんとうに理解することができるのだろうか。
もちろん、いまでも、その問題を解決することはできていない。ただ、おれたちにも理解できて、(まったく異なった言語を使い、異なった文化を持った)ガイジンにも理解できる、共通の何かがあることはわかるのである。
『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』では、ドミニカ系アメリカ人の家族の、壮絶な歴史がマジック・リアリズムを用いて描かれている……といえば、わかった気になる。でも、その主人公を、おれたちはよく知っている。そいつは、トーキョーの小さな部屋に一日中ひきこもってアニメばかり見ているのかもしれない。でも、そいつは、我々の先頭に立って、世界文学の最前線で戦う力を持っていたのである。ありがとうよ、ジュノ・ディアス。おれたちの友人を世界に紹介してくれて。でも、ほんとうは、おれたちがそれをやんなきゃいけなかったんだよな。

(たかはし・げんいちろう 作家)

短評

▼Takahashi Genichiro 高橋源一郎
文学は更新する。更新することによって、未来へ出で立つ。どんな風に? この小説のように。ラテンアメリカに生まれたマジックリアリズムは、ニッポンのサブカルチャーと出会って更新される。『超時空要塞マクロス』や『科学忍者隊ガッチャマン』や『AKIRA』で育った、ドミニカにルーツを持つアメリカのオタク青年、オスカー・ワオは「世界文学」が初めて出会う主人公だ。

▼The New York Times ニューヨーク・タイムズ
バルガス=リョサとスター・トレックとデヴィッド・フォスター・ウォレスとカニエ・ウェストが出会った、とでも言うしかない真に独創的な作品。ドミニカの悲しい歴史が大きな視点で描かれているだけでなく、ある家族の人生と愛とが、細やかに親密に捉えられている。ジュノ・ディアスはこの作品によって、現代小説のなかでも傑出した、人をひきつけずにおかない新しい声を確立した。

▼San Francisco Chronicle サンフランシスコ・クロニクル
目眩がするほど見事で、忘れがたいほど怖ろしい、アメリカという体験についての物語だ。新しいアメリカが姿を現している、極めて稀有な本である。

▼The Boston Globe ボストン・グローブ
すばらしく上質、親しみやすく生き生きとしていて、鋭い洞察とウィットに貫かれている。ディアスの文章はいくつもの現実の間で、軽業のように巧みにスイッチを切り替える。私たちはそのすべてに魅了されてしまう。

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