ホーム > 書籍詳細:永井荷風 ひとり暮らしの贅沢

吝嗇と囁かれ奇行の人と噂された作家の独居の後半生を繙く。

永井荷風 ひとり暮らしの贅沢

永井永光/著、水野恵美子/著、坂本真典/著

1,512円(税込)

本の仕様

発売日:2006/05/25

読み仮名 ナガイカフウヒトリグラシノゼイタク
シリーズ名 とんぼの本
発行形態 書籍
判型 A5判
頁数 127ページ
ISBN 978-4-10-602142-8
C-CODE 0395
ジャンル 文学・評論、自伝・伝記
定価 1,512円

36歳で二度目の離婚以来、独身を通した永井荷風。優雅ともいえる麻布・偏奇館での生活から、戦争を経て千葉県市川市での終焉まで……自由奔放を貫いた独居生活を『断腸亭日乗』の記述と、残された遺品の写真を織り交ぜて紹介する。死後に発見された幻の春本『ぬれずろ草紙』抜粋を長男・永光氏の回想と共に収録。

著者プロフィール

永井永光 ナガイ・ヒサミツ

1932年東京生まれ。父・大島一雄(杵屋五叟)は荷風の従兄弟にあたる。1944年、永井荷風・壮吉の養子となる。荷風没後、家族と共に八幡の荷風旧宅に移り、家屋、遺品を守り続けている。1956年からバー『へん喜館』を経営。

水野恵美子 ミズノ・エミコ

1967年福島生まれ。出版社を経てフリーランス編集者・ライター。食と暮らしをテーマに雑誌・書籍で活動。特に人物を題材に、「食」から見えてくるその人間像を描いている。主な著書に『森茉莉――贅沢貧乏暮らし』(著者名・神野薫、阪急コミュニケーションズ)など。

坂本真典 サカモト・マサフミ

1940年旧満州チチハル生まれ。出版社写真部を経て独立。主な撮影担当著作に妹尾河童著『河童が覗いた仕事師12人』、菊地信義著『わがまま骨董』『ひんなり骨董』(以上、平凡社)、玄侑宗久著『祝福』(筑摩書房)、向田邦子・向田和子著『向田邦子 暮しの愉しみ』(新潮社)など。

目次


つまんだ指の跡が残るパナマ帽。


実は煮豆が大好きだった荷風。浅草帰りに購入したり、自分で煮ることもあった。


市川・葛飾八幡宮にて。
第一章
ひとり暮らしの賑わい
荷風のひとり暮らし遍歴
……実は結婚・離婚を経験していた!
*遺品から読み解く暮らしのあれこれ
身のおきどころ
金と時間の使い方
泣き明かした夜 母のこと
洋行帰りの身だしなみ
江戸文化への憧憬
創作の意欲衰えず
読書という喜び

第二章
食の歓び、自炊の愉しみ
好物・鰻の蒲焼き、そしてお歌
茶筒に残る葛粉
甘き物の悦楽
岡山の枇杷の味
車中ほおばる白米のおにぎり
コロ柿の災い
井戸端での自炊生活
合理的「にんじんごはん」
好物あれこれ

第三章
散人、晩年に愛した街
……日記に記された場所と店
川を渡って浅草へ
心癒された市川の風景

第四章
好んだ季節の花々
……日記その他作品に記された四季の花々

『断腸亭日乗』読後雑記
【再録】ぬれずろ草紙
 ……死後見つかった春本(抜粋)を特別掲載

年譜
コラム「日乗」の断片
1 「荷風散人年七十一」小鳥を飼う
2 小堀杏奴からの手紙
3 おみくじの願掛け
4 あてが外れた文化勲章
5 月の夜
6 三通の遺言書

まとめテーマでくくる 本選びのヒント

担当編集者のひとこと

永井荷風 ひとり暮らしの贅沢

「断腸の思い」の記録か?と読み始めた日記は、高校生の自分にはちと、難しかったと記憶している。文章は読めるのだが、行間にある微妙なニュアンスが読めない……つまり、子供にはわからない、オトナだけに理解できる暗号のようなものが、『断腸亭日乗』には詰まっていたのだ。 実は荷風が本格的に日記を書き始めたのと同じ年齢になって、本書の取材は始まった。写真家・坂本氏、取材執筆者・水野氏と共に浅草、向島、そして市川周辺を地図を頼りに歩いた。同時に後半生の著作を手当たり次第に読んで、大正〜昭和初期の空気が何となく感じられたような気がした。
 して、永井荷風とはいかなる人物か……と問われても、評論家ではないので充分な答えを見出せるわけはない。ただ、本書の中にも登場する「お歌」さんや「八重次」さん、日記に名前だけが出て素性がわからない人なども含めた女性たちに興味がわいた。彼女らはいわゆる「素人」ではない女性たちだ。荷風が、あえて「玄人」にしか馴染まなかったのは「所帯染みる」ことを極端に嫌った結果だろうと、今の年齢になったからこそわかった。
 遺品撮影は、市川の永井邸で行った。
 遺族として家屋、遺品ともに守り続けている永井永光さんご夫妻には大変なご迷惑だったかもしれない。しかし、着脱につまんだ指の形が残るパナマ帽や皮脂で足の跡のある下駄、煮炊きした七輪などは、ぜひ、荷風が暮らした空間で撮影したかった。膨大な数の写真を前に、彼の体温が感じられるような本にしようと編集作業が始まった。
 本書は荷風を論じたものではない。生涯を緻密に研究したわけでもない。「ウジがわく」ともいわれる男のひとり暮らしを、彼が実際にどう過ごしていたのかを勝手に覗いてしまっただけだ。そこには、自由気儘、天衣無縫を貫き、世間のしがらみや見栄、外聞をものともしない……言ってしまえば自分本位な生き方があった。巻末に特別掲載した『ぬれずろ草紙』をものす、秘めやかな一興もあった。そうして、誰の世話にもならずに生きて死ぬことを実践した荷風は、さぞ幸せだったろうとさえ思えた。
「所帯染み」ないのに、生活感がにじみ出る日記の記述——野菜がいくらだった、何々を作って食べた、洋服のほころびを縫った、風呂を焚いて入る……などを見ていくと、「お歌」さんがつい、荷風の元へ通った気持ちもよくわかってしまった。女性にそれとなく「放っておけなさ」を感じさせるのもうまかったんじゃないですか? 荷風先生?

2016/04/27

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