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日本の建築遺産12選―語りなおし日本建築史―

磯崎新/著

1,760円(税込)

発売日:2011/06/24

  • 書籍

三十三間堂は何故あんなに長いのか? 出雲大社が何度も倒れたわけは?

壊れる、消える、だからこそつくる――建築界の巨匠が、古代から20世紀に至る12の名建築の隠れた見どころ、意外な真実を語り尽くし、解き明かした「日本的なるもの」とは? 三内丸山遺跡から代々木オリンピックプールまで「これだけは見ておきたい建築遺産」案内つき。「3・11後の建築」を展望するエッセイも緊急収録!

目次

磯崎新氏の師匠、丹下健三設計の代々木オリンピックプール 東京都渋谷区


阿弥陀仏の後から梁がビームのように飛び出す 浄土寺浄土堂 兵庫県小野市

はじめに
「柱」と「架構」から日本建築史を読みかえる
〈1〉神を感知するために
[垂直の構築]出雲大社 超高層神殿をささえた柱
[水平の構築]伊勢神宮 古殿地という「出来事」
〈2〉〈柱〉原理主義
[垂直の構築]浄土寺浄土堂 四天柱から飛ぶ太い梁
[水平の構築]唐招提寺金堂 列柱が生む端麗な空間
〈3〉のびゆく内部空間
[垂直の構築]円覚寺舎利殿 天井へと上昇する志向
[水平の構築]三十三間堂 無限焦点のメガ・ステージ
〈4〉二つのフリースタイル
[垂直の構築]三仏寺投入堂 崖のうえに現れた美学
[水平の構築]西本願寺飛雲閣 光の海に浮かぶ船
〈5〉テーマパークの近世
[垂直の構築]さざえ堂 「二重螺旋」という奇想
[水平の構築]修学院離宮 上の御茶屋 雲間に広がる浮遊空間
〈6〉20世紀日本建築の到達点
[水平の構築]代々木オリンピックプール 1964年の「大伽藍」
[垂直の構築]水戸芸術館アートタワー 下から上へ伸びる無限の柱
おわりに
「やつし」の美学(エステティック)をめぐって
略歴
磯崎新 主な建築作品

書誌情報

読み仮名 ニホンノケンチクイサンジュウニセンカタリナオシニホンケンチクシ
シリーズ名 とんぼの本
雑誌から生まれた本 芸術新潮から生まれた本
発行形態 書籍
判型 B5判変型
頁数 128ページ
ISBN 978-4-10-602220-3
C-CODE 0352
ジャンル 建築
定価 1,760円

水戸芸術館アートタワー/さざえ堂

Image
著者・磯崎新氏設計の水戸芸術館アートタワー 茨城県水戸市
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二重螺旋のおもしろ建築・さざえ堂 福島県会津若松市

担当編集者のひとこと

日本の建築遺産12選―語りなおし日本建築史―

 本書は『日本の建築遺産12選』と銘打ちながら、いわゆる日本建築史でよくとりあげられる茶室も城も数寄屋も出てきません。阿弥陀如来の後ろからビームのように柱が三方に飛び出す、「浄土寺浄土堂」。緑濃い山中に、まるで投げ入れられたようにぽつねんと建つその名も「投入堂」。近代建築ながら日本古来の寺社を思わせる美しいカーブの「代々木オリンピックプール」。水戸の街にそびえ立つ著者・磯崎新さん設計の「水戸芸術館アートタワー」……。どれも皆、ある種異形の建築です。
 磯崎さんによれば、日本建築史は海外から技術や様式を取り入れ、それを日本流にアレンジするというサイクルを繰り返してきたそうです。本書では「外圧-内乱-受容(もどき)-変形(やつし)=和様化のサイクル」と説明しています。茶室や城、数寄屋というのは、中国から取り入れた建築のスタイルを変形し(やつし)、洗練させた結果生まれた日本オリジナルの建築なのでしょう。その点、本書でとりあげている建築物は輸入した様式が、日本独自のものへ変形するその間(はざま)に建てられたものばかりです。だから、どこかアンバランスだったり、荒々しさがあったり、いわゆる日本的建築の洗練とはことなるものになるようです。これもまた日本建築らしさの一面なのです。ページを捲れば、写真からひとつひとつの建築が持つ力強さを感じていただけるのではないかと思います。 サブタイトル『語りなおし日本建築史』の意味は従来の日本建築史とは異なる、磯崎さんのこの文明史的視点にあります。本書を編集作業中に東日本大震災がありました。先の和様化のサイクルでいえば「内乱」の時期に突入したといえますが、今までのサイクルに倣えば、次には「受容(もどき)」のステージに入るのでしょうか? 磯崎さんには緊急に震災後の日本と日本建築の展望についてもご執筆いただきました。建築から見えてくるこの国の姿。まさに今こそ多くの方に、お読みいただきたい一冊です。

2011/06/24

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著者プロフィール

磯崎新

イソザキ・アラタ

建築家。1931年大分県生れ。東京大学工学部建築学科卒業。丹下健三研究室を経て1963年磯崎新アトリエを設立。代表作に「大分県立中央図書館」「ロサンゼルス現代美術館」「なら100年会館」「カタール国立コンベンションセンター」など。カリフォルニア大学、ハーヴァード大学ほかで客員教授を歴任、また多くの国際コンペ審査員を務める。設計活動のかたわら建築批評を始め様々な領域で執筆・発言を行なうほか、建築展・美術展など多彩な活動を展開。著書に『空間へ』(鹿島出版会)、『建築における「日本的なもの」』『日本の建築遺産12選―語りなおし日本建築史―』(ともに新潮社)、共著に『Any:建築と哲学をめぐるセッション 1991-2008』(鹿島出版会)など。

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