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真っ当な日本人の育て方

田下昌明/著

1,430円(税込)

発売日:2006/06/23

  • 書籍

戦後、アメリカから輸入された「育児の常識」が、日本人をダメにした。救国の育児論。

少年による犯罪、モラルの崩壊、弱者に向かった凶悪事件……。「壊れた日本人」の出現は、永年受け継がれてきた日本ならではの育児法が、戦後なくなってしまった結果だった。抱き癖をつけよう。善悪を理屈で教えてはいけない。浮気は厳禁。保育所へはなるべく行かせない――等々、ベテラン小児科医がたどりついた日本人に合った育児法。

目次
まえがき
第一部 基礎編
第一章 日本人を育てる
生命、四つの意味/子供は「かわいい悪党」/子育て三つの問い/文化はその国の人にしか作れない/赤ちゃんを人間にし、日本人にする/日本人への第一歩/夫の選び方/家庭では順位が大切
第二章 もともと日本に育児論がなかった理由
なぜ誤った育児論を輸入したのか/キレる子を多発させたジョン・デューイの思想/スポック育児論の誤り/科学だけで育児はできない
第三章 胎教をおろそかにしてはいけない
胎児はすでに学んでいる/胎児の発育の様子/好きなこと、嫌いなこと/意思も感情もある/朝寝坊の母は朝寝坊の子を産む/育児は胎教から始まっている/新生児に対する誤解/理想的な出産/母親がマスクをつけたら/感性豊かな母親になろう/母乳は「心の栄養」でもある
第四章 心はどのようにして正しく発育するのか
「刷り込み」理論を理解する/人間への出発/抱き癖をつける大切さ/母と子の一体感/愛着行動とは/子供の心の安全基地/三歳まではお母さんの一部/「時間」を知る/母親と離別すると/母親と別れて暮らせる限度/切り離すことのできない母子の心
第五章 父親は舞台の床である
まったくちがう母親と父親の役割/父の浮気と子の病気の関係/父親はとにかく子供と遊べ/父母と子供は対等ではない/父親は大いに人生を語るべし/宇宙飛行士の父親たち/父親は群のリーダーとして振る舞え
第二部 実践編
第六章 子供が本当に必要なもの
子供は必ずおみやげを持って来る/母親は朝寝坊をしてはいけません/連休や来客は育児の大敵/規則正しい生活が一番/母は空母、子は艦載機/出がけと帰宅時には抱いてやる/子供に嘘をついてはいけない/六本木ヒルズよりボロ家
第七章 母子はとにかく離れてはいけない
使わないところは発達しない/アタッチメントが堅固になるまで/母子の離別が非行の最大原因/親はされたことを子にする/なるべく保育所には行かせない/私が見た離別の実例
第八章 乳幼児に向いた衣服
寒くなく、暑くなく/手足を自由に動かせる/オンブのすすめ/素早く脱がせられるか/赤ちゃんはオムツ嫌い/指なし手袋は頭を悪くする/靴下は運動神経を鈍くさせる
第九章 さまざまに意味のある授乳
混合栄養にすると母乳が出にくくなる/人工栄養で育てるならば/赤ちゃんに与える物の味と匂いを知る/ゴム乳首の孔を大きくすると無気力人間を作る
第十章 食事の始まりは躾の始まり
薬を上手に飲ませるコツ/好き嫌いは親が作る/体罰は「やる」か「やらない」かの問題/食は朝昼軽く、夜重く/豪華な弁当は成績を下げる
第十一章 具体的な言葉で育てる
衣食住は文化そのもの/なぜ自国を知ることが大切なのか/法を守ることを教える/善悪は強制的に従わせるもの/突然、説教魔になるな/「他人に迷惑をかけない人になれ」は大間違い/「腕白でもいい」は育児放棄
第十二章 善悪を理屈で教えようとしてはいけない
人のため、世のため/頼られることの大切さ/善悪を教えるのに理屈はいらない/善悪の基準が人格を作る/「明るく豊かな子」は幻想/まともな日本人が国際人になる
あとがき
引用文献

書誌情報

読み仮名 マットウナニホンジンノソダテカタ
シリーズ名 新潮選書
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 256ページ
ISBN 978-4-10-603566-1
C-CODE 0337
ジャンル 妊娠・出産・子育て
定価 1,430円

書評

波 2006年7月号より 育児の哲学書  田下昌明『真っ当な日本人の育て方』

稲垣真澄

 大きくなる、成長するという意味の古語に「ひとなる」がある。漢字で示すなら「人・成る」。本書はまさに人間になるための、具体的には日本人に育て上げるための育児書、それも育児のハウツーにとどまらず、育児の精神を説くという意味で育児の哲学書とでも呼びたくなる内容だ。
著者は、これまでに接した子供の患者が五十万人、キャリア四十年の現役の小児科医である。昨今、どうも母子の関係が希薄になってきた、いびつな心の青少年が増えてきた、という日頃の実感の中から本書は生まれた。なぜ、そうなったのか、そうならないためには何をなすべきか。
人間は文化の中に生まれ落ちる。文化というのは生活の型、生きてゆく上での必須の型のことだ。動物の行動パターンのように生得のものでない以上、型は代々子供に教え込んでゆくしかない。そうした文化を共有する一定のまとまりがドイツ人、日本人、アメリカ人、ロシア人、中国人……ということになる。人間は母国語の中に生まれ落ちるのと同様、文化の中に生まれ落ちるのであって、無国籍者としては生きてゆかれない。
文化がそうしたものである以上、従来どの文化も自分たちの型を次代に伝える独自な方法、育児法を有していた。しかるに戦後の日本は、昭和二十一年の「アメリカ教育使節団報告書」や四十一年の『スポック博士の育児書』にコロリと参るかたちで、自分たちの育児法を簡単に捨ててしまった。いわく、抱き癖は子供の自立心を妨げる、母乳より人工乳の方が栄養バランスがいい、と。背景にあるのは「子供には無限の可能性があるのだから、それを自由に伸ばしてやるのが教育」だとするデューイの思想で、個体であると同時に共同体に属して生きてゆくしかない人間の二面性のうち、個体性のみを重視する。かりに人間の生が個体にだけ宿るのなら、わざわざ共同体の作法を教える必要もなく、自由放任がよいことになる。
その自由放任の弊、ようやく見過ごしがたいのがニートやひきこもり、すぐにキレる青少年といった昨今の世相だという。育児の要諦は結局、共同体に属する人間、まともな日本人を育て上げることに尽きる。より正確にいうなら、そうした教育を後に受け入れることのできる素地を、妊娠期、乳幼児期に作り上げることだ。著者の提言は、つねに臨床医としての知見に裏打ちされていて具体的、まさに目からウロコの思いがする。
たとえばインプリンティング、アタッチメント理論と呼ばれるものがある。生後六ヶ月までに赤ん坊はだれが自分を保護してくれる親であるかを認識し、三、四歳くらいまでその親から十分な愛情を受けることによって成長のための核が形成される必要がある。おんぶに抱っこ、大いに結構。四六時中、母子がいっしょにいることでそれらは達成されるというから、「仕事か育児か」の選択は本来ありえないものらしい。

(いながき・ますみ 産経新聞文化部編集委員)

担当編集者のひとこと

真っ当な日本人の育て方

「壊れた日本人」の出現は、永年受け継がれてきた育児法が、戦後日本からなくなった結果である。現役のベテラン小児科医がたどりついた救国の育児論。


 カツオ節をもらったら、そのまま鍋に入れてしまう。お茶といえばペットボトルに入ったものと思っているから、急須の使い方が分からない。刺身は、魚をさばいたものだと知らない。食事のおかずはスーパーやコンビニで買うのが日常——。 実はこれ、子供のことではなく、子を持つ現代の親のエピソードです。親の非常識は食に限らず、育児にも及びます。善悪を教えられない、子を叱れない、何事も他人のせいにする……。その子供たちが、やがては親となり子を育てます。そうして、次の世代の日本人が作られていきます。
 家族やコミュニティによって語り継がれてきた「子供はこう育てるべき」という確固たるものが、敗戦と戦後のアメリカ文化の流入、核家族化によって、日本から消えてしまいました。
 母親は寝坊せず、子供をよく抱き、夫は浮気をしない。善悪は理屈で教えず、偉人伝をよく読ませてやる——。「むずかしいことなんて、ひとつもないんですがね」と、半世紀近く育児の現場を見続けている小児科医の著者・田下昌明さんは言います。真っ当でなくなった日本人の子供や大人が、毎日のように事件を起こし、新聞をにぎわせています。

2016/04/27

著者プロフィール

田下昌明

タシモ・マサアキ

1937(昭和12)年、北海道旭川市生まれ。医学博士。医療法人歓生会豊岡中央病院理事長。北海道大学医学部卒、北海道大学大学院医学研究科修了。日本小児科学会認定小児科専門医、日本小児科医会「子どもの心相談医」、日本児童青年精神医学会会員、日本家庭教育学会理事、北海道小児科医会理事。著書に『よい子はこうして育つ』(三晃書房)、『母の積木』(日本教育新聞社)、『田下昌明の子育て健康教室』(日本教育新聞社)、『「子育て」が危ない』(日本政策研究センター)など。

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