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ミクロの究極に迫った20世紀物理学の流れが一望のもとに!

光の場、電子の海―量子場理論への道―

吉田伸夫/著

1,404円(税込)

本の仕様

発売日:2008/10/24

読み仮名 ヒカリノバデンシノウミリョウシバリロンヘノミチ
シリーズ名 新潮選書
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 255ページ
ISBN 978-4-10-603622-4
C-CODE 0342
ジャンル 物理学
定価 1,404円

量子場理論とは、量子力学の完成形である。物理学専攻の大学院生でさえ理解が容易ではないという超難解な理論を、本書はあくまで一般読者のために、明快に解説してみせる。20世紀の天才科学者たちは「物質とは何か」という謎をどう解明してみせたのか? その思考の筋道が、文系人間にも理解できる画期的な一冊!

著者プロフィール

吉田伸夫 ヨシダ・ノブオ

1956年、三重県生まれ。東京大学理学部物理学科卒業、同大学院博士課程修了。理学博士。専攻は素粒子論(量子色力学)。東海大学、明海大学で非常勤講師をつとめながら、科学哲学や科学史をはじめ幅ひろい分野で研究を行なっている(ホームページ「科学と技術の諸相」参照)。著書に『宇宙に果てはあるか』『光の場、電子の海』(いずれも新潮選書)、『日本人とナノエレクトロニクス』(技術評論社)などがある。

科学と技術の諸相 (外部リンク)

書評

物の理を楽しむための物理学の真髄

渡辺政隆

 ぼくはかつて物理少年だった。物理学者ラザフォードの伝記を読んだことが大きなきっかけだったと記憶している。まるで恐竜おたくが恐竜の学名をそらんじるように、α崩壊とかβ崩壊を口にする中学生だった。ただしその後、ハードサイエンスから生き物を扱うソフトサイエンスに転向したのだが。
 ともかくも、いっぱしの物理少年として物理学のポピュラーサイエンスを読みふけりはしたが、なぜか量子論までは行き着かなかった。その後も朝永やファインマン、ダイソンらのエッセイ風の文章には親しみつつも、彼らの業績をもっと詳しく知りたいという思いにはならなかったのだ。
 その理由の一端は、天才科学者たちが積み上げてきた知の体系をつまみ食いすることへのためらいだったかもしれない。単なる科学者列伝や、アナロジーだらけの「解説書」では、壮大な知的体系を楽しむことはできない。かといって、大著を通読できるほどの根性もなかった。
 しかし今回、本書を読んだことで、胸のつかえが降り、話の筋道が自分なりに明瞭に見えてきた。それと同時に、理論物理学というものに対する少年時代の刷り込みが、稚拙で中途半端なものだったことも思い知らされた。
 これまでぼくは、ボーア、シュレディンガー、ハイゼンベルクなど綺羅星のごとき物理学者は、それぞれ完璧な論理展開を基に、既知のデータに裏付けられた緻密な理論を提唱し、それが新たな実験で実証され定着していくことで、現代物理学は進んできたとばかり思い込んできた。なればこそ「ハード(厳密)」なサイエンスなのではないかと。ところが本書を読むと、彼らもまた、極端な話、思いつきとこじつけというきわめて人間くさい営為として科学理論を紡いでいたことがわかる。そのあたりの経緯と背景について、原著論文を読み込んだ著者の筆致は大いに読ませる。
 また、これまで量子的という言葉の意味が今ひとつ腑に落ちていなかったが、電子の安定な軌道は離散的でしかも整数倍になっていると仮定しないと実験データに合致しないことから量子論が誕生したといういきさつには、目を見開かされた。マーカス・デュ・ソートイの『素数の音楽』で、素数論と素粒子論がひょんなところで結びつきつつあるという件を読み、茫漠としたつながりの不思議に静かに感動した思いがよみがえった。
 本書の真骨頂は、量子場理論の誕生へと至る道筋である。量子力学から素粒子論への展開は量子場という概念なくしてはありえなかったことがよくわかる。奇しくも南部陽一郎、益川敏英、小林誠の各氏のノーベル物理学賞受賞が、本書の主旨の正しさを実証することになった。超ひも理論や多次元宇宙などを論じた海外のベストセラーが日本でも売れている。しかし、そうした本に走る前に、まず本書こそ読まれるべきだろう。

(わたなべ・まさたか サイエンスライター)
波 2008年11月号より

目次


はじめに
序章 原子と場――19世紀物理学の到達点
第1章 粒子としての光――アインシュタイン
第2章 原子はなぜ崩壊しないのか――ボーア
第3章 波動力学の興亡――ド・ブロイとシュレディンガー
第4章 もう1つの道――ハイゼンベルク・ボルン・ヨルダン
第5章 光の場――ディラック
第6章 電子の海――ディラックとパウリ
第7章 量子場の理論――ヨルダン・パウリ・ハイゼンベルク
第8章 くりこみの処方箋――朝永・シュウィンガー・ファインマン
終章 標準模型――20世紀物理学の到達点

もっと深く知りたい人のための注
参考文献
あとがき
キーワード解説
科学者索引

キーワード

担当編集者のひとこと

20世紀物理学の真髄が、あなたにも理解できる。

 ご存じのように、今年のノーベル物理学賞は三人の日本人に与えられました。でも、彼らの業績のどこがノーベル賞ものなのか、新聞の解説記事を読んだだけでは腑に落ちません。わかったようで、じつは全然わからない。いきなり「素粒子の標準模型」と言われても困ってしまいますし、そもそも「素粒子」とは、その言葉からイメージされるような極小の「粒」ではないのですから。
 では、素粒子とは何か? これをきちんと理解するためには、「素粒子の標準模型」の基礎となった「量子場理論」を知らなければ話が始まりません。とはいえ、この量子場理論は、物理学専攻の大学院生にとってさえ理解が容易ではないシロモノ。本書は、そんな超難解な理論を、あくまでも一般読者のために解説してみせました。20世紀の天才科学者たちは、いかにして自然のミクロな究極に迫り、「物質とは何か」という謎を解き明かしたのか? 理系思考の究極ともいうべき20世紀物理学の発展の筋道が、文系読者にも一望のもとに見渡せるようになる、画期的な一冊です。

2008/10/24

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