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「患者中心の医療」はなぜ間違いなのか――?

「患者様」が医療を壊す

岩田健太郎/著

1,188円(税込)

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発売日:2011/01/25

読み仮名 カンジャサマガイリョウヲコワス
シリーズ名 新潮選書
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 202ページ
ISBN 978-4-10-603671-2
C-CODE 0347
定価 1,188円
電子書籍 価格 950円
電子書籍 配信開始日 2011/07/22

医者と患者は対等であるべきだ、というポリティカリー・コレクトな言説が、医者も患者も不幸にする。お医者さんはなぜ「偉い」のか? 「賢い」患者はなぜ損をするのか? 「全人的な医療」に隠された欺瞞とは? 「薬害」は本当に存在するのか? 意外な視点から、医療現場の対立構造を解きほぐす、快刀乱麻の一冊。

著者プロフィール

岩田健太郎 イワタ・ケンタロウ

1971年、島根県生まれ。島根県医科大学卒業後、沖縄県立中部病院、コロンビア大学セントルークス・ルーズベルト病院、アルバートアインシュタイン医科大学ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院を経て、2008年より神戸大学大学院医学研究科教授(微生物感染症学講座感染治療学分野)・神戸大学医学部付属病院感染症内科診療科長。著書に『悪魔の味方―米国医療の現場から―』『麻疹が流行する国で新型インフルエンザは防げるのか』『感染症は実在しない―構造構成的感染症学―』『予防接種は「効く」のか?―ワクチン嫌いを考える―』など多数。

書評

波 2011年2月号より 「現場の人」の共通点

内田樹

こんなことを言うと怒り出す人が多いと思うけれど、この数年(いや、もっとかな)、知り合って知的な興奮を覚えた相手は全員「理系の人」である。文系の学者としゃべって、わくわくするという経験は絶えて久しくない。
岩田健太郎さんはそのような「理系の人」の一人である。彼は人の話を聴くとき、まず「うなずく」。これは「現場の人」の共通点である。うなずいて、それから考え始める。現場では前代未聞の事態が次々起こるからである。マニュアルに従って、メカニカルに処理する人間は危機に適切に対応できない。だから、「現場の人」はなにごとにつけ予断を持たない訓練を受けている。
僕が何か岩田さんによく理解できないこと(単に非論理的なだけでそうである可能性も多々あるが)を口走っても、岩田さんはまずうなずいて静かに「そうですね」と言う。それから僕の発言について吟味を始める。内容の正否にかかわらず。すでに僕の発した言葉は否定しがたい現実として彼の前に投げ出されている。これを何とかしなくてはならない。医者が「そんな病気が存在するはずがない」という理由で診療を拒否することができないのと同じである。僕はこのような構えを取れる人をほんとうのリアリストだと思っている。
本書では「感染症屋」であるところの岩田先生が(こういう「ナントカ屋」という名乗りは「現場の人」の徴である)日本の医療の直面している諸問題を静かに「そうですね」と受け容れながら、懇切に吟味している。「あるべき医療」についての理想像があらかじめ用意されていて、それに基づいて個々の事例の適否を判定しているわけではない。現場はつねに「待ったなし」である。「最高の医療をするから待ってなさい」と言っている間に患者が死ぬこともある。だから、手元にある資源でやりくりするしかない。焼酎で消毒し、ホッチキスで傷口を縫合し、薪ざっぽうとガムテープで副え木を作るような臨機応変が現場の医療の骨法である。治療者も病院や医学教育のシステムも、患者のマインドも、メディアの医療報道も「ありもの」を使い回し、そこから最高のパフォーマンスを引き出すしかない。どれほど医療環境が劣悪でも、「これじゃ治療はできない」とプロは言わない。岩田さんは大学病院という、彼に与えられた現場についてこう書いている。
「僕ってなんて幸せなんでしょう。/このような逆風の中で診療をしなければならない感染症屋は世界にそんなにたくさんはいません。」(198頁)
最高のパフォーマンスをするためにはいつだって「機嫌のいい人間」でなければならない。それが「現場の人」の骨法である。僕が理系の、先端的な仕事をしている人が好きなのは、彼らが劣悪な条件下でも、決然と上機嫌だからである。

(うちだ・たつる 神戸女学院大学教授)

目次

はじめに
第一章 医者と患者はなぜ対立するのか
人はなぜ対立するのか
言葉の「正しさ」について
患者か、患者様か
レトリックではなくダイアレクティクで
医者と患者は対等ではない
学校の先生は偉く、お父さんも偉い
師弟関係もファンタジーで
評価をしてはいけない
医者も人間、つきあい方は大事
関係性が改善すれば、病気そのものも良くなる
大人の態度でファンタジーと知りつつ、ファンタジーに浸かる
お医者さんごっことは、何か
医者の方も「お医者さんごっこ」
医者は嘘つきでよい
医療の世界観は法曹界にはそぐわない
複雑な医療の世界
アメリカ人もアメリカンな世界観に飽きている?
相手の真意を
患者さんに安易に共感してはダメ
納得いかないときは
セカンドオピニオンの落とし穴
賢い患者にならなくたって
医者はあなたのことばかり考えてはいない
第二章 医療業界に見られる対立構造
基礎研究者vs臨床研究者
量的研究vs質的研究
リサーチ・クエスチョンか、研究方法か
科学か、非科学か
EBMvs経験主義
結局は帰納法
内科医vs外科医
ジェネラリストvsスペシャリスト
開業医vs勤務医(ベテラン医師vs若手医師)
日本vs「欧米」
西洋医療vs東洋医療
霞ヶ関vs医療現場
ワクチン推進派vs反対派
薬害vsドラッグ・ラグ
第三章 医療は何を目指すべきなのか
わかりにくくなった医療の目標
ダブル・バインドなマスメディア
価値交換で好悪のバイアスから自由になる
自業自得と言わないで
あとがき

担当編集者のひとこと

「患者様」が医療を壊す

じつは「常識的」で「実用的」なコミュニケーション論 医者と患者は対等ではない。
 とりあえず、医者のことを「偉い」と思いなさい。


 国立大学医学部の教授に、いきなりこんなことを言われたら、不快に思われる読者も多いのではないでしょうか。
 しかし、早合点してはいけません。当然ですが、著者はつまらない自己顕示欲から、わざわざこの本を書いたわけではありません。冒頭の言葉は、「患者中心の医療」を長年追い求めてきた著者が、必死に考え抜いた末に辿り着いた、逆説的な「方法論」なのです。その真意については、ぜひ本書をお読み下さい。
 一見、トリッキーな議論が売りの本と思われるかも知れませんが、読み進めるうちに、その印象はガラリと変わるはずです。著者の主張は、あくまでオーソドックスで常識的で実用的です。軽妙な文体とは裏腹に、真面目過ぎるほど「患者を救うためにどうすればよいのか」を考えていることがわかります。
 人の生き死にの狭間で闘ってきた臨床医ならではのコミュニケーション術、いざ病院のお世話になる時に、あなたの強い味方になること間違いなしです。

2016/04/27

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