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あの渋川春海の策略とは? 捏造された関孝和伝説とは? 知られざる「実像」に迫る!

江戸の天才数学者―世界を驚かせた和算家たち―

鳴海風/著

1,188円(税込)

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発売日:2012/07/27

読み仮名 エドノテンサイスウガクシャセカイヲオドロカセタワサンカタチ
シリーズ名 新潮選書
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 190ページ
ISBN 978-4-10-603712-2
C-CODE 0341
ジャンル 日本史
定価 1,188円

鎖国下の江戸時代、日本独自の数学文化が華ひらく。なぜ男たちは和算に人生を賭けたのか。いかにして世界に先駆ける研究成果を生み出したのか。吉田光由、渋川春海、関孝和、建部賢弘、有馬頼ゆき、会田安明、山口和、小野友五郎……個性豊かな8人の天才たちの生涯から、江戸流イノベーションの謎に迫る歴史ノンフィクション。

著者プロフィール

鳴海風 ナルミ・フウ

1953(昭和28)年、新潟県生れ。作家。東北大学大学院機械工学専攻修了後、株式会社デンソーに勤務。『五厘の魂』で池内祥三文学奨励賞、『円周率を計算した男』で歴史文学賞を受賞。『算聖伝』『和算忠臣蔵』『怒濤逆巻くも』『ラランデの星』『美しき魔方陣』『和算小説のたのしみ』など、和算を題材に著作を続けている。2006(平成18)年、和算小説で数学の普及に貢献したとして日本数学会出版賞。関孝和数学研究所客員研究員。近著に新潮選書『江戸の天才数学者』がある。

書評

波 2012年8月号より 数学の天才、信念の天才

上野健爾

本書は江戸時代の文化の一翼を担った和算と和算家に対する格好の入門書である。
著者の鳴海風氏は和算家を主人公にした時代小説に独特の境地を開いてきた。技術者との二足のわらじを履いた著者は和算書を楽しみながら、ときには和算書と格闘しながら、これまで著述をしてこられたこともあって、本書には安定感があり、安心して読むことが出来る。
数学といえば今日、ほとんどの人が毛嫌いする。しかし、江戸時代は今日と全く違っていた。江戸時代、ソロバンは唯一の計算手段であった。数学が江戸時代の文化の一翼を担ったのにはベストセラー『塵劫記』の存在が大きい。『塵劫記』には面白い問題が多数収録されていて、ソロバンの学習をしながら、数学の面白い問題を考えて解く楽しみを多くの人が体験した。本書が『塵劫記』の著者吉田光由から始まるのも、その後世への影響の大きさから言って当然のことであろう。
『塵劫記』で数学の面白さに目覚めた人たちは、自ら難しい問題を作り解くことに熱中した。町では数学の私塾が開かれ、江戸時代後期には数学を教えながら旅する数学者(遊歴算家)も現れた。本書で取りあげられた山口和はそうした和算家の一人である。こうした遊歴算家の活躍もあって、江戸時代後期には日本全国津々浦々に数学の愛好者がたくさん出現し、難しい問題が解けたときには絵馬(算額)を作って神社仏閣に奉納した。参拝のおりにそれを見た数学愛好者はその算額に刺激を受けて新しい解き方を考え、さらにはもっと難しい問題を考えることで競い合った。この数学力の高さが明治になって西洋科学を比較的短期間に学ぶことができた要因にもなった。
本書では八人の和算家が取りあげられている。中には渋川春海、小野友五郎のように、数学の天才というよりはおのれの信念を成し遂げる天才と呼ぶ方が相応しい人物も含まれている。信念の天才はかならずしも功成り名を遂げてはいない。むしろ、見た目には人生の失敗者として映るかもしれない。本書にはこうした人たちの生き様が美事に描かれている。そして、この人選に著者鳴海風氏の深い志を読むことが出来る。そのことは「筆者は、本書であげた天才和算家たちの生き方の中に、偏狭な閉鎖主義にも、無分別な西洋崇拝にも陥らない、しなやかな知識社会を創造する可能性を見る。」というあとがきからも明らかであろう。本書は現代日本への警告の書でもある。
巻末には和算書に倣って問題がつけられている。江戸時代にタイムスリップしてそれに挑戦してみるのも一興であろう。また、新人物文庫『円周率を計算した男』の中の短編小説には本書でとりあげられている和算家が多数登場する。併せて読めば、一段と本書が興味深いものとなろう。

(うえの・けんじ 日本数学協会会長・京都大学名誉教授)

目次

はじめに
第一章 吉田光由――技術屋が書いたベストセラー
江戸時代のベストセラー/名門・角倉一族に生まれて/技術屋だった光由/数学の学習過程/海賊版が生んだ遺題継承/和算家とキリシタン/疑いを晴らそうとした光由?/光由の墓が語るもの
第二章 渋川春海――改暦に挑んだ秀才の執念
幕府お抱えの碁打ち、将棋指し/渋川春海の誕生/名人になれなかった春海/太陰太陽暦とは/改暦の失敗/「里差」に着眼/日本人初の太陰太陽暦/渋川家の衰退と復活
第三章 関孝和――桃李もの言わざれども
素性不明の大数学者/二つの墓の違い/一人歩きする関孝和像/自己顕示欲のない天才/弟子が買った喧嘩/膨大な研究成果/関孝和の真価
第四章 建部賢弘――円周率の謎を解いた男
関孝和との出会い/不幸な養子縁組/将軍の科学ブレーンとして/関孝和も解明できなかった円理/円周率自乗の公式発見
第五章 有馬頼ゆき――大名数学者の秘伝公開
関流の免許制度/久留米藩主になるまで/山路主住から数学を学ぶ/好敵手登場/師匠との対立/藩主としての不名誉/和算史に残る名著
第六章 会田安明――純粋で過激な数学愛
関流に挑んだ男/会田安明の生い立ち/普請方としての活躍/数学論争の発端/激しい応酬/先学には謙虚だった
第七章 山口和――遊歴算家という生き方
遊歴算家とは/山口和の生い立ち/長谷川寛との出会い/遊歴算家への転身/「奥の細道」を歩く/三回目以降の遊歴/山口和の功績
第八章 小野友五郎――和算と西洋数学のはざまで
幕末の和算家/数学で身を立てる/天文方で航海術と出会う/長崎海軍伝習所へ/別船仕立ての儀/咸臨丸による太平洋横断/海軍強化に奔走した友五郎/明治政権下で見せた矜持
おわりに
付録問題
主要参考文献

まとめテーマでくくる 本選びのヒント

担当編集者のひとこと

江戸の天才数学者―世界を驚かせた和算家たち―

『天地明察』ファン必読のノンフィクション この9月から公開予定の映画『天地明察』(出演:岡田准一、宮崎あおい)。ご存知の通り、原作は冲方丁さんの「本屋大賞」受賞作。日本独自の暦を作った渋川春海の活躍を描いたベストセラーです。
 さて、本書には、その渋川春海をはじめ、関孝和、建部賢弘、会田安明など江戸時代に活躍した8人の数学者が登場します。入念な研究・取材に基づく歴史ノンフィクションなので、エンターテインメントを追求した小説とはまた一味違った読み応えがあります。
 たとえば、『天地明察』では渋川春海が天寿をまっとうする大団円で終わりますが、本書では、その後に渋川家を襲った「想定外の不幸」についても書かれています。また、小説でも圧倒的な天才として登場した関孝和については、じつは後世の人々によって捏造された「天才伝説」が多いことを指摘しています。
 さらには、小説では十三歳の少年としてちらっと出てきただけだった建部賢弘が、その後どんな偉業を成し遂げたのか? あるいは、関孝和の弟子たちが創設した「関流」が、和算界にどんなイデオロギー対立をもたらしたのか?……などなど『天地明察』ファンなら楽しんでいただけること「必至」(←小説中の春海の口グセ)の話題が満載です。
 ちなみに本書の中で、私がもっとも興味を惹かれたのは、関流にたった一人で立ち向かった会田安明。粘着気質で自意識過剰の変人ですが、どこか憎めないところがあります。ぜひ本書でその特異なキャラクターに触れてみてください。

2016/04/27

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