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「信仰」と「学問」のはざまで、神学者たちは何を考えていたか?

神を哲学した中世―ヨーロッパ精神の源流―

八木雄二/著

1,512円(税込)

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発売日:2012/10/26

読み仮名 カミヲテツガクシタチュウセイヨーロッパセイシンノゲンリュウ
シリーズ名 新潮選書
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 300ページ
ISBN 978-4-10-603718-4
C-CODE 0310
ジャンル 宗教
定価 1,512円
電子書籍 価格 1,210円
電子書籍 配信開始日 2013/04/19

中世において「哲学」は「神学」の形をとった。キリスト教信仰と古代ギリシア哲学の出会いによって「神についての学問」が生まれ、ヨーロッパ精神が形作られていった。神の存在、天使の堕落、人間の富や色欲を当時のヨーロッパ人はどう捉えていたのか。中世神学から「信仰」というベールを剥ぎ、その実像に迫る。

著者プロフィール

八木雄二 ヤギ・ユウジ

1952年、東京生まれ。慶應義塾大学大学院哲学専攻博士課程修了。文学博士。専門は中世西欧哲学。現在、清泉女子大学と早稲田大学の非常勤講師、「東京港グリーンボランティア」代表理事。著書に『天使はなぜ堕落するのか』(春秋社)、『中世哲学への招待』『古代哲学への招待』(平凡社新書)、『生態系存在論序説』『地球に自然を返すために』(知泉書館)など、訳書に『中世思想原典集成』(共訳、平凡社)などがある。

書評

波 2012年11月号より 中世哲学への特色ある入門書

村井則夫

思想にはそれが育った土壌があり、それが呼吸している時代の空気がある。そのため、時代的にも地域的にも異質の環境で展開されたヨーロッパ中世の思想は、現代の日本人にとってはその理解が難しい。本書はそうした現状を十分に踏まえながら、中世哲学を、知的・学問的な運動としてのみならず、その時代を生きたヨーロッパ人たちの生活感覚とともに描き出そうと努めているという点で、中世哲学への特色ある入門書となっている。
一般に「中世哲学」という場合、キリスト教の教義形成に貢献した古代の教父たち、あるいは古代末期のアウグスティヌスから始められることが多いが、本書では、中世という時代を、神学が文化の中心を占めた時代と規定して、その叙述を十一世紀から十四世紀までの思想に絞り込んでいる。そうした設定ゆえに、本書で描かれる中世は、教会・修道院・大学の時代として、その輪郭がきわめて鮮明なものとなっている。しかも本書では、ギリシアに誕生した厳密な思考という意味での哲学と、キリスト教中心の世界観を支える神学が明確に区別され、神学こそが中世の人びとの実生活に根差し、現実のなまなましい状況を扱うものであったという理解が一貫して打ち出されている。そのため、通常の哲学史では触れられることのない現実的な問題、しかも中世固有の世界観が実感できるような実例がふんだんに用いられ、それらが神学の核心に触れるものとして示される。「天使の堕落」という問題、あるいは十字軍と密接な関係にあるボランティアの思想、さらに中世独自の経済観念、特に土地の所有権、私生児に対する財産分与の問題などを通じて、現代と異なる中世の思想環境が生き生きと描かれている。
哲学的な側面に関しても、ギリシアに由来する抽象的・形式的思考の意味や、それがキリスト教の三位一体論に関わったときに発生した普遍論争、あるいは神の存在証明、自由と摂理の関係などが、著者独自の照明の下に解説されており、中世哲学にある程度馴染んでいる読者にとっても新鮮な視点が提供されている。その叙述は、思想の内実を安易に簡略化することを避け、近代以降の思考や東洋思想との異質性をも際立たせながら、例えば、中世固有の信仰観や、理性と感覚についての理解などを、あくまで中世思想の実質に即して浮き彫りにしようとしている。特に最終章で大きく取り上げられるヨハニス・オリヴィについての解釈は、通常の入門書ではほとんど取り上げられることのない著者の創見である。その点でこの最終章のみは、叙述の質がやや異なるとはいえ、その議論は、著者の研究者としての現在の関心を示すものとなっている。
全体としてきわめて平易な叙述で、時代の空気感をも伝える本書は、中世という時代に思想面からアプローチしたい読者にとっては、有益な手引きとなることだろう。

(むらい・のりお 明星大学准教授)

目次

はじめに
第一章 中世神学に近づくために
中世、その時代と場所
ギリシア・ローマの哲学遺産
キリスト教の権威
「目に見えない世界」の奇妙な構造
第二章 キリスト教神学の誕生――アンセルムスの世界
形而上学・神学・スコラ哲学
「信仰以前」の世界
第三章 地上の世界をいかに語るか――トマス・アクィナス 『神学大全』
天上から地上へ
中世における精神と身体
二重に見える神
第四章 神学者が経済を論じるとき――ドゥンス・スコトゥス 『オルディナチオ』
神の自由と「別の可能性」
私生児の遺産相続
金儲けは正義か?
所有・貸借・利子
第五章 中世神学のベールを剥ぐ
修道士の精神世界
「普遍」とは「もの」である
神の存在証明
フォーマルな知と情
「天使の堕落」問題
第六章 信仰の心情と神の学問
キリスト教信仰の文学的土壌
学問への不安
第七章 中世神学の精髄――ヨハニス・オリヴィの学問論・受肉論
神学は藁屑か?
学問に必要な七つの事柄
照明・味覚・発語
神の受肉をいかに証明するか
神学と科学
あとがき

担当編集者のひとこと

神を哲学した中世―ヨーロッパ精神の源流―

神の存在から色狂いの女まで 哲学の本です。ヨーロッパの中世哲学、もうすこし厳密にいうと「中世神学」の入門書。あ、それならパス? いや、そう決めこまずに、いちど手に取ってみてください。「神学」という一般にはまったくなじみのない知の営みが、わたしたちにもずいぶん身近なものであることがわかって、びっくりするはずですから。
 たしかに中世ヨーロッパの知識人たちは、もっぱら「神」について語りました。神の存在証明、イエスの受肉、天使はなぜ堕落するのか……。現代の日本人、とりわけ信仰を持たない者にとっては、敬して遠ざけたくなるような議論に思えます。でも、「神」という言葉を、いったん「客観性」や「普遍性」に置き換えてみると、トマス・アクィナスの『神学大全』だって理解できるのです。
 中世において「哲学」は「神学」という形をとりました。古代ギリシャ哲学とキリスト教信仰の対決のなかから「神についての学問」が生まれ、ヨーロッパ精神が形づくられていったのです。「だから、『中世』を知らずにいて本当のヨーロッパを知ることはできない」と、著者は言います。それにしてもなぜ、当時の人びとは神を信ずるだけでは足りず、とことん論理的に語らねばならなかったのでしょう。そもそも、語れるものなのでしょうか? 中世哲学の代名詞ともいうべき「普遍論争」を理解するコツはあるのでしょうか? 本書は十一~十四世紀の代表的な神学者たちの著作を噛み砕きながら、中世哲学のエッセンスを紹介する初の一般書ですが、単なる哲学本ではありません。当時の神学者たちがなまなましい現世の諸問題――色狂いの女、私生児の遺産相続、金儲けの是非などについてどう考えていたのか、という話も紹介されていて、中世という「時代の空気」まで味わえるところがお得です。

2016/04/27

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