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優柔不断は命取り――歴史が教える「真の決断」とは?

決断の条件

会田雄次/著

1,296円(税込)

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発売日:2013/05/24

読み仮名 ケツダンノジョウケン
シリーズ名 新潮選書
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 206ページ
ISBN 978-4-10-603730-6
C-CODE 0312
ジャンル 哲学・思想、倫理学・道徳、思想・社会、教育・自己啓発、趣味・実用
定価 1,296円

自分では一世一代の決断をしたつもりでも、その多くは単なる「思いつき」「苦しまぎれ」「便乗」「感情」から下されたものに過ぎない。マキァヴェリ、韓非子、孫子など先哲の言葉と、古今東西の歴史事例から、冷静な現実把握と意思決定の要諦を示す。昭和の経営者たちに読み継がれてきた名著、文字拡大版でリニューアル刊行。

著者プロフィール

会田雄次 アイダ・ユウジ

1916年、京都生まれ。京都大学文学部卒業。西洋文化史専攻。京都大学教授(のち名誉教授)を務め、西洋史学会会員となる。著書に、戦後の自らの体験を描いた『アーロン収容所』のほか、『ヨーロッパ・ヒューマニズムの限界』『ミケランジェロ―その孤独と栄光―』『たどり来し道』『日本人の意識構造』など多数。1997年9月17日、没。

書評

波 2013年6月号より 古い世代の権力者と渡り合うための教養

瀧本哲史

初版が1975年6月と大変古い本である。タイトルは「決断の条件」と書いてあるが、序論が「意志決定と日本人」とあるように、実質的には、マキアヴェッリ、韓非子、孫子などの古典の引用をダシに、古今東西の事件をネタに、日本人の決め方を評する、日本人論の本と言った方が良いだろう。
「意思決定」ではなく、「意志決定」と、「志」を書いていることからもわかるように、内容は、近代的な経営学などの「意“思”決定論」の影響を全く受けていない、精神論に満ちている。帯では「意思決定」になっているから、この40年間の意思決定に対する考え方の変化をそのまま反映しているのだと感慨深い。中を読み進めると、「日本は今GNP自由世界第二位の生産力を誇り、まだ躍進をつづけている」「世界中の嫉妬感」とか、京大の学生運動話とか、日本について挙げられている例が、かなり古いものとなっており、その事例を元に構成されている、「日本人」の批判されるべき特質というのが、実は、必ずしも普遍性をもっていないことを感じさせる。また、著者が依拠している日本史の出来事についても、今日の歴史学研究の進展からすると、その歴史的事実に疑問をもたれるエピソードが含まれていることを恐れる。
実は、歴史研究は、「人間学」という視点から、「物語的な歴史叙述、それも詳しい古典がよろしい。それが面倒なら多少フィクションはふくむが歴史小説が一番だ」という位の位置づけだ。そして、良い歴史小説の例として司馬遼太郎の『坂の上の雲』をあげながら、そのすぐ後に「あまりにフィクションすぎるものは駄目」と書いているので、一瞬、『坂の上の雲』をこの時代に批判した勇気ある学者がいたのか、一瞬誤読したほどである。
つまり、この本自体が、歴史や古典を解釈する本と言うよりも、著者の考える「人間学」エッセイの主張の素材として、歴史「物語」が入っている本と考えた方が正しい読み方のようである。
こんなことを書くと随分変わった本のように思われるだろうが、実は、こうしたタイプの本としては、むしろ古典的な記述方法である。彼自身が好んで引用している、マキアヴェッリ、韓非子、孫子なども過去の歴史の解釈によって、自分の主張をサポートしたり、説明したりしている。そして、彼らが参照している歴史事実も、今日の歴史学の成果から見るとフィクションに近いものや、解釈が我田引水過ぎるものも含まれている。さらにいえば、1970年代のビジネスマン向け図書としては、スタンダードなものとも言える。ほんの数十年前まで、経営関連の書籍というのはこうした歴史記述から人間学にアプローチするものが多かったのである。例えば、現在、雑誌「プレジデント」は、「社長になりたい大企業サラリーマン向け自己啓発・ノウハウ雑誌」というポジショニングだが、かつては「中小企業経営者、管理者向け歴史に学ぶ人生読本」であり、表紙を飾る人物は、古今東西のリーダー、孔子、韓非子だったのである。
そこで、現代的な視点から見ると奇矯な本書を、比較的若い読者諸氏にとっては、高齢経営者の思考の源流、種本として、彼らをリバースエンジニアリングし、彼らのジャーゴンで彼らを説得するための良き武器として、再定義したい。
私は拙著『武器としての交渉思考』のなかで、自分たちと考え方の違う人達、特にエスタブリッシュメントの協力を得ようとすることが重要であり、明治維新からシリコンバレーのハイテク企業まで、古いものと新しいものの薩長同盟的「合従連衡」によってなされていることを示した(この論法は、実は、典型的な「我田引水的」歴史レトリックをフルに活用している)。
著者が、嫉妬される、憎悪される対象として、未来を憂いた日本は、今や、「ジャパンバッシング(日本叩き)からジャパンパッシング(日本通過)」とまで言われている時代に変化した。経営や意思決定に関する理論や現実も大きく変わっている。しかし、それでも相変わらず多くの組織で、古い世代が力を握っており、彼らを動かすことが、組織を改革したり、新しいプロジェクトを進めるためには不可欠だ。教養とはアラン・ブルームによれば「他の考え方も成り立ちうることを知ること」だとされるが、まさにこの本は、古い世代の権力者と渡り合うための教養ということになるだろう。つまり、この本は、あまりにも典型的な古くさい本だからこそ、古い頭の人達を倒すためのスパーリングパートナーとして格闘すべきなのである。

(たきもと・てつふみ 京都大学客員准教授)

目次

序論――意志決定と日本人
1 民衆を真の味方にできるのは権力者だけだ
2 反抗者は常に仲間に強い猜疑心を持っている
3 相手に対し、何か考慮を払わずにすむような完勝はない
4 人は、父親を殺されたうらみはすぐ忘れる
5 運命の神は女神である。だからときにこれをひっぱたけ
6 指導者を欠く大衆は烏合の衆である
7 大衆の憎まれ役は他人に請け負わせよ
8 人間いかに生きるべきかにこだわるな
9 人はその出生によっても年齢によっても区別してはいけない
10 加害行為は一気にやり、恩賞は小出しにせよ
11 現実を罵り過去や未来に憧れるのは欲求不満の現われ
12 真実を知る智者でも大衆の愚見におびえるものだ
13 無理強いされた約束は守る必要なし
14 亡命中の人間の言葉を信じるな
15 真の味方は武器をとって立ち上れと要求するものだ
16 忠義な使者は大切にするな
17 滅亡をふせいでこそ智の価値がある
18 小忠を行なうは大忠の賊なり
19 功なきを賞するは乱のもと
20 民衆の希望する自由など叶えてやれない
21 民は勢いに服し義に服さない
22 すぐれた将軍は部下の将兵を死地に追い込む
23 人主は心を己が死を利とするものに加えざるべからず
24 臣主の利は相ともに異なるものなり
25 人間はきわめて単純に目先の利によって動く
26 謙譲の美徳によって尊大をうちくだくことはできない
27 よく戦うものとは勝ちやすきに勝つものなり
28 信頼できるよき議会は審議を遅らせない
29 指導者たるものはやむを得ぬ行動でも自分の意志で行なうふりをしなければならない
30 将に五危あり
おわりに

担当編集者のひとこと

決断の条件

苦いビールの美味しさ「苦くて、不味い……!」
 子供の頃、はじめてビールを飲んだとき、その不味さに衝撃を受けました。そして、「わざわざ高い金を払って、がぶがぶビールを飲むようなバカな大人には絶対になるまい」と心に誓ったものです。
 それから幾年月、いつしか三度の飯よりビールを愛するようになった二十代の私は、ふとそれまで一冊も読んだことがない新潮選書を読んでみようと、当時すでに名著との呼び声が高かった『決断の条件』を手にとって見ました。
「なんだ、この傲慢で性悪な本は……!」
 人間不信にも程がある。「オヤジどもがこんな本を有り難がっているから、日本がどんどんダメになっていくんだ」と憤慨しながら読んだものです。
 それからさらに幾年月、『決断の条件』は不惑を迎えた私の愛読書となりました。本書で容赦なく暴かれる「人間の本質」が、必ずしも不快なものではなく、いつしか「愛すべき苦味」に変わってきたのです。
 ぜひ皆さんも、苦いビールを片手に、本書を味わってみて下さい。
※本書は1975年初版『決断の条件』と同内容の文字拡大改版です。

2016/04/27

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