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日本人が知らない「立憲主義」の意外な真実!

憲法改正とは何か―アメリカ改憲史から考える―

阿川尚之/著

1,512円(税込)

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発売日:2016/05/27

読み仮名 ケンポウカイセイトハナニカアメリカカイケンシカラカンガエル
シリーズ名 新潮選書
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 316ページ
ISBN 978-4-10-603787-0
C-CODE 0332
ジャンル 法律
定価 1,512円
電子書籍 価格 1,210円
電子書籍 配信開始日 2016/11/11

「憲法は〈国のかたち〉を表現している」「〈国のかたち〉は、改憲しても変わらないこともあれば、改憲しなくても変わってしまうこともある」―― 27回の改正を経てきたアメリカ合衆国憲法の歴史から、「立憲主義」の意外な奥深さが見えてくる。「憲法改正」「解釈改憲」をめぐる日本人の硬直した憲法観を解きほぐす快著。

著者プロフィール

阿川尚之 アガワ・ナオユキ

1951年、東京都生まれ。同志社大学法学部特別客員教授。慶應義塾大学名誉教授。慶應義塾大学法学部中退、ジョージタウン大学スクール・オブ・フォーリン・サーヴィスならびにロースクール卒業。ソニー、米国法律事務所勤務等を経て、慶應義塾大学総合政策学部教授。2002年から2005年まで在米日本国大使館公使。2016年から現職。主な著書に、『アメリカン・ロイヤーの誕生』、『海の友情』、『アメリカが嫌いですか』、『憲法で読むアメリカ史』(読売・吉野作造賞)。

書評

「修正」の歴史に学ぶ

牧原出

〈著名人が薦める〉新潮選書「私の一冊」(11)

 来る参議院選挙では、与党など改憲勢力が3分の2以上の議席を得るかどうかが一つの焦点だと言われている。衆参双方で憲法改正を発議するに足る議席を確保するからである。もちろん日本国憲法は成立後、改正されたことは一度もない。ここに改憲勢力が復古的な憲法草案を出せば、これを阻もうとする護憲勢力は立憲主義の破壊だと攻め立てるだろう。
 そもそも憲法改正とは何かと阿川氏は問いかける。アメリカ合衆国は、建国後連邦憲法を制定してすぐに修正条項を制定し、その後も南北戦争後に南部を再建するために修正を進めた。最高裁判所による合憲・違憲の司法審査によって憲法解釈の変更がなされることもある。
 200年を超える歴史から、阿川氏が引き出すのは、憲法秩序の大切さである。守るべきは憲法を運用する中で蓄積された秩序であり、そのために必要であれば憲法改正もありうるし、解釈変更も行われてよいはずだ。日本の与野党間の憲法改正論議は、憲法を全面的に刷新する改憲側と、一語たりとも変えさせないという護憲側との論争であった。ともにどうすれば憲法秩序を適正に保つかという視点を欠いている。
 アメリカでは憲法制定後1万2千に近い憲法修正案が連邦議会で発議されたが、可決されたのはうち33に過ぎず、州の批准を経て発効したのは27であった。実際に修正が試みられても成功する可能性はきわめて低い。裁判所の違憲判断も、国民が支持しなければ大統領・議会は従わない。アメリカ憲法史を扱う文献は、三権が鋭く対立した上で、解釈変更も含めた憲法修正がなされた事例に焦点をあてがちだが、阿川氏が強調するのは、大統領・議会・裁判所が互譲することで対立を収束させる多数の例である。見ようによっては憲法修正の失敗だが、その蓄積によってアメリカ社会は憲法を尊重してきたのである。「憲法修正」の歴史から現れる叡智えいちを、これからの日本も学ぶべきである。 

(まきはら・いづる 東京大学教授・政治学者)
「読売新聞」2016年7月3日 「本よみうり堂」より

[→]〈著名人が薦める〉新潮選書「私の一冊」一覧

憲法はどう生かされているか

待鳥聡史

「憲法を暮らしの中に生かそう」。京都府知事を長く務めた蜷川虎三が、一九六〇年代末から京都府庁に掲げた標語である。府下の革新自治体で育った評者には懐かしい響きがあるが、その意味は分かるようで分からない。日本国憲法に体現された人権尊重などの近代的価値を、日々の社会生活でも追求しましょう、ということだったのだろうか。
 社会生活を送る人々に憲法が大きな意味を持つという点では、本書が対象とするアメリカは、日本を大きく凌駕することは間違いない。著者の言葉を借りれば「アメリカ人は憲法を大切にするが、神聖視はしない。それに対し日本人は憲法を神聖視するものの、それほど大切にはしない」のである。
 そのため、憲法と社会の間には複雑な相互作用が起こる。憲法は政治をはじめとする社会のあり方に影響を与えるが、社会のあり方もまた憲法に影響を与える。
 本書は後者の側面、すなわちアメリカにおいて社会のあり方が憲法にどのような影響を与えてきたかを、憲法改正という視点から考える著作である。著者には既に、憲法がアメリカ社会にどのような影響を与えてきたかを鮮やかに描き出した『憲法で読むアメリカ史』という作品があるが、本書はそれを逆方向から語り尽くしたともいえよう。
 一八世紀後半の建国以来、アメリカは常に変転の激しい社会であった。イギリスが大西洋岸に形成した一三の植民地の連合体に過ぎず、工業力や軍事力においてヨーロッパ列強に大きく劣っていた建国期のアメリカは、領土の著しい拡大、南北戦争、産業革命などを経て、二〇世紀初頭までに世界の強国となる。さらに二度の世界大戦を経て超大国となるが、その後も国内の産業構造は重工業中心から金融や情報通信産業中心に変わり、人種や性別の間の関係も大きく変わった。同性婚の容認のように、そうした変化は現在も続いているし、今後も続くだろう。
 にもかかわらず、今日まで合衆国憲法の全面的な書き換えはなされていない。新憲法制定に当たるのは、独立戦争中に制定された連合規約が一〇年足らずで合衆国憲法に変わっただけである。
 社会の変化と憲法の連続性。この二つを矛盾なく支えてきたのが、本書が注目する憲法改正であった。改正は、条文の修正や追加が頻繁になされる時期と、解釈の変更によってなされる時期に分けられ、二〇世紀以降は条文の修正や追加は稀になったと、著者は指摘する。その大きな一因は、改正の対象が満場一致的なものから政治的・社会的な論争を呼び起こしかねないものへと変化し、条文の修正や追加に必要な手続きが充足されなくなったことに求められる。判例による解釈変更が条文の修正や追加を先取りした場合もある。
 ただし、両者の違いをそれほど意識しすぎる必要はない。再び著者の言葉を借りれば、修正であれ解釈変更であれ、つまるところ憲法改正とは「どのような国のかたちが国民にとって必要であり、望ましいか、あるべきかという、大きな課題への取り組み」の結果なのである。だからこそ「どんな改正も国民の支持がなければ効果を発揮しない」。
 それゆえに、憲法改正にかかわる人々には、先を見通す叡智と社会状況の変化への配慮が常に求められる。合衆国憲法の生みの親であるマディソン、司法審査権を確立したマーシャル、国家的危機に直面したリンカーンやフランクリン・ローズヴェルト。これらの偉人たちに対してはもちろん、南北戦争前夜に後から見れば誤った判断をした最高裁首席判事のトーニーに至るまで、人物を描く本書の筆致には、憲法と社会の関係に正面から取り組んだ人々への深い敬意がある。
 著者はアメリカの法律家として出発したのであり、南北戦争後の憲法修正が持つ手続き的問題を語るときなどの論理性には、その凄味の一端が窺える。だが同時に、本書の根底に流れているのは、アメリカにおける憲法という法律文書と社会に生きる人々との相互作用に対する、著者の純粋な知的好奇心と暖かい視線である。それは、アメリカ社会と合衆国憲法への愛、と言い換えることさえできるかもしれない。
 日本国憲法の改正については、本書はいくつかの含意を導くにとどまる。むしろその方が良い。憲法と社会の間にどのような相互作用があるのか、憲法改正にかかわる人々はどのような知的格闘を続けているのか。本書は、各人がそうしたことを考えるための、大切な手がかりを与えてくれる。

(まちどり・さとし 京都大学教授)
波 2016年6月号より

目次

はじめに
第I部 合衆国憲法の制定と改正

第1章 憲法はどこから来たのか
憲法改正について/アメリカ憲法は世界最初の成文憲法か/文書による植民地の誕生/植民地の自治/国のかたちをめぐる本国との対立/独立革命/独立宣言と新しい国のかたち/邦の独立/邦憲法の制定と問題点/連合規約の制定と問題点/成文憲法としてのアメリカ憲法
第2章 憲法の制定手続きと正統性
憲法制定への反対/連合議会の条件を無視した憲法制定会議/なぜ条件を無視したのか/憲法草案修正の試み/批准会議での論争
第3章 憲法はなぜ改正できるのか
憲法改正条項の内容/改正条項の必要性/改正条項の制定過程/憲法改正は難しすぎるか/憲法の正統性と改正可能性
第4章 最初の憲法改正とその意義
初めての憲法改正/権利章典の制定/最初の憲法改正の意義
第II部 憲法改正から解釈改憲へ

第5章 「力ずく」の憲法改正
南北戦争の勃発/南北戦争後の連邦のかたち/修正第13条/修正第14条/南部諸州の抵抗と南部再占領/修正第15条/南北戦争後の憲法改正――その意義と正統性
第6章 「解釈改憲」とは何か
改正ができないとき/何度も試みる/州憲法を改正する/憲法改正の手続きを改正する/憲法の規定を無視する/改正をしない/憲法を解釈するという営み/ワシントン大統領の中立宣言/ジェファソン大統領のルイジアナ領土購入/国立銀行設立の合憲性/マカラック対メリーランド事件判決/マカラック事件判決とゆるやかな憲法解釈
第III部 三権分立と憲法

第7章 最高裁が憲法に挑むとき
司法審査の誕生/マーベリー対マディソン事件の背景/マーベリー対マディソン事件の判決/司法審査の目的と効果/「だめなものはだめ」型司法審査/「異存なし」型司法審査/「現状維持」型と「現状変更」型の司法審査/「現状変更」型司法審査の例/「現状変更」型司法審査の影響/「現状変更」型司法審査の限界/「判例変更」型の憲法改正と司法審査/ブラウン事件判決による判例変更/ニューディール期の判例変更/司法審査が憲法を変える?/ロー判決、くつがえらず/司法審査が変えた国のかたち
第8章 議会が憲法に挑むとき
議会が憲法を解釈するとき/司法審査への議会の対応/議会が司法審査に頼るとき/議会による司法審査への挑戦/最高裁判事任命への助言と同意/裁判所の権限を変更する力/弾劾制度/チェース判事の弾劾/ジョンソン大統領とクリントン大統領の弾劾/州が憲法に挑戦するとき
第9章 大統領が憲法に挑むとき
大統領が憲法を解釈するとき/大統領と司法審査/大統領による司法審査への挑戦/大統領が憲法を無視するとき/南北戦争とリンカーン大統領の戦争権限/戦争権限をめぐる最高裁判例(1)/戦争権限をめぐる最高裁判例(2)/大統領が憲法に挑戦するとき/20世紀の大統領権限拡大/ニューディールと大統領の権限拡大/最高裁の憲法解釈変更/憲法の変化と国のかたちの変化/最高裁判事の指名と任命/大統領が憲法にしばられるとき/コレマツ事件判決/ヤングスタウン鉄工所事件判決/ニクソン対合衆国事件判決
第10章 アメリカ憲法改正の歴史から何を学ぶか
第1章から9章までの簡単なおさらい/憲法の制定と改正は一体/憲法の改正は国民の権利/簡単すぎる改正は危ない/憲法は解釈しないと始まらない/解釈によって憲法は変わる/護る憲法、破る憲法/国のかたちは国民が決める/アメリカ憲法改正史から見た日本国憲法の改正/改正が一度もない日本の憲法/保守的な護憲派、進歩的な改憲派?/憲法の全面改正は望ましいか/改正手続き条項改正の是非/日本国憲法は硬すぎるか/解釈改憲はすでになされている/司法審査と憲法論争の活性化/国際情勢の変化と憲法の解釈/たかが憲法、されど憲法
あとがき
補遺

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