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重力波 発見!―新しい天文学の扉を開く黄金のカギ―

高橋真理子/著

1,430円(税込)

発売日:2017/09/22

  • 書籍
  • 電子書籍あり

重力波を捉えたことにより、今まで見えなかった宇宙が見えてくる!

アインシュタインがその存在を予言したのが約100年前。観測を始めておよそ50年で人類はそれを捉えた。ここから、今まで知ることができなかった宇宙の謎の解明がはじまる。重力波がどんなものかが分かれば、宇宙の成り立ちが理解できてくる。熟達の科学記者が、重力波発見にいたる物語から時空間の本質までを分かりやすく説く。

目次
まえがき
プロローグ
年初から広まった噂/間に合わなかった日本/新しい天文学の扉を開く黄金のカギ
第1章 重力波とは何か
ニュートンの孤独/12世紀ルネサンス/アリストテレスの世界観/万有引力の法則/絶対時間、絶対空間/ファラデーとマクスウェル/相対性理論登場/混乱の日々/ニュートンへの「大富豪の恩返し」/ファインマンのビーズ玉思考実験
第2章 宇宙とは何か
宇宙論のはじまり/古事記と創世記/宇宙という言葉/いわゆる天動説の構築/天動説の解体/天才ガリレオの実像/ブルーノのあまりに現代的な宇宙論/改めて宗教の力を考える
第3章 時間とは何か
時計がない時代/日時計と水時計/機械時計の発展/暦のはじまり/ユリウス暦の革命性/グレゴリオ暦への改暦/循環するのか、線分なのか/時計から見た人類史/何が「本当の時間」か
第4章 時空とは何か
光をめぐる二つの説/マイケルソン-モーリーの実験/アインシュタインが考えたこと/ミンコフスキー空間/重力場の方程式/一般相対論は正しい!/潮汐力と重力/相対論が身近になるか?
第5章 見つからなかった重力波
月面着陸の年の新聞記事/ウェーバーの挑戦/「四畳半の物理学」/連星パルサーの発見/干渉計という新しい方法/ドイツの「追いつき追い越せ」/フランス・イタリア共同の重力波天文台VIRGO/すったもんだの米国LIGO創設物語/2010年の偽信号
第6章 追いかける日本
かにパルサーを狙う独自路線/宇宙科学研究所に日本初の干渉計出現/「天性の開拓者」登場/大同団結して大成功/たまたま見つかる? TAMA300/鏡を極低温に冷やす/暗黒時代/日本政府のすったもんだ/KAGRAの日々
エピローグ
あとがき
参考文献

書誌情報

読み仮名 ジュウリョクハハッケンアタラシイテンモンガクノトビラヲヒラクオウゴンノカギ
シリーズ名 新潮選書
装幀 駒井哲郎/シンボルマーク、新潮社装幀室/装幀
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 272ページ
ISBN 978-4-10-603816-7
C-CODE 0342
ジャンル 宇宙学・天文学
定価 1,430円
電子書籍 価格 1,144円
電子書籍 配信開始日 2018/03/09

インタビュー/対談/エッセイ

文系の皆さんへのラブレター

高橋真理子

 アインシュタインと聞いて、胸キュンとなるのがたぶん理系で、その場を離れたくなるのがたぶん文系なのだろうと思う。単純に過ぎる類型化かもしれないけれど、私は単純化をよくする。見通しが良くなることが多いし、話がはずむきっかけにもなるのだから大目に見て欲しい。
 私自身は大学で物理学を勉強したので理系に分類されるのだろうが、新聞社という「文系職場」で長年働いたので、文系マインドの方々にずいぶん鍛えられてきた。私が知っていることを周りの人が知らなくても驚かなくなるのに時間はかからなかった。逆に周りの人は私が知らないことをいろいろ知っていた。外国のことは同僚記者にずいぶん教えてもらった。「世の中は単純でない」と納得できたのも文系マインドの方々のお陰である。
 重力波というのは、アインシュタインの一般相対性理論から予想された波である。
 上の文は、文系、理系の隔たりを顕在化させるマジックセンテンスのような気がする。理系にとっては胸キュンの2乗であり、文系にとっては敬遠の2乗になる。いや、「一般相対性理論」は「アインシュタイン」にも増して敬遠度が高いだろうから、両者の隔たりはもっと大きくなる。
 2016年2月に発表された「重力波を初観測」のニュースには、このマジックセンテンスが入っていた。これを入れずに報道するのは不可能だった。だから、このニュースは文系の方の関心からあっと言う間に消え去ってしまったのではないだろうか。
 しかし、これは「世紀の大発見」なのである。私たちが存在している時間と空間のありようを示す決定的証拠であり、それを求めて世界中の科学者が苦労に苦労を重ねてようやく手にした珠玉の科学的成果なのだ。そんじょそこらの新発見とは格がまるで違う。
 そもそも、時間と空間はあらゆることの基本である。何事も時間と空間の中で進行する。その時間と空間自体が、私たちが素朴に考えている姿とは違うのだと示したのが一般相対性理論だった。この理論はさまざまな現象を予言したが、その白眉とも言えるのが重力波である。予言から一世紀、現代のハイテクを駆使してようやく実物をとらえることができた。
 ここに至るまでの人類の知の歴史、簡単には成果が出そうにない実験に取り組む科学者たちの人間模様、どの国にも共通する研究資金を得る苦心などを文系の人たちに向けて書いてみたい。そう思って出版社行脚をしたのが昨年春だった。「理系向けの科学の本にはしたくない」という私のわがままな願いを新潮選書の編集者Iさんは真正面から受け止めてくださった。そして、願い通りの本が出来上がった。
 文系の皆さま、どうぞ私のラブレターを受け取ってください。

(たかはし・まりこ 朝日新聞科学コーディネーター)
波 2017年10月号より

著者プロフィール

高橋真理子

タカハシ・マリコ

東京生まれ。朝日新聞科学コーディネーター。東京大学理学部物理学科卒。1979年に朝日新聞社入社、岐阜支局、東京本社科学部、出版局「科学朝日」編集部などを経て、論説委員、科学エディター(部長)、編集委員など。著書に『最新 子宮頸がん予防』(朝日新聞出版)、『村山さん、宇宙はどこまでわかったんですか?』(朝日新書)、訳書に『量子力学の基本原理』(日本評論社)など。2002年から2007年まで世界科学ジャーナリスト連盟理事。

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