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タカラジェンヌの太平洋戦争

玉岡かおる/著

770円(税込)

発売日:2004/07/18

  • 新書
  • 電子書籍あり

死と隣り合わせた時代にあっても、彼女たちは「すみれの花」を忘れなかった。これもまた一つの昭和史である。

華やかなその世界も、死と隣り合わせていた――。音楽学校に学ぶ乙女たちの青春とは。舞台を奪われ、緑の袴がモンペに替わったタカラジェンヌたちの心を支えたものは。「歌劇」「宝塚歌劇脚本集」「宝塚年鑑」には何が記されていたか。熱烈なファンがその目で見たものとは。宝塚大劇場はなぜ閉鎖され、いかにして再開されたのか。貴重な証言と資料から浮かび上がる「もう一つの昭和史」。

目次
プロローグ──歴史をいまに宝塚
第1章 小林一三の夢
鉄道会社は鉄道だけで利益を上げるものではない──。大正三年にスタートする宝塚少女歌劇には、この阪急創始者の発想が背景にあった。
第2章 「軍国女学生」の青春
昭和五年、竹田鶴子さんは十四歳で宝塚音楽歌劇学校に入学し、十六歳で初舞台を踏んだ。舞台で「すみれの花」を歌い、国策映画にも出演したその若き日々。
第3章 『翼の決戦』を客席から
もうこれで歌劇を観ることができない──。昭和十九年三月、大劇場閉鎖。熱烈な女性ファンが証言する最後の舞台。
第4章 東亜の子供達
『軍艦旗征くところ』『航空母艦』……客席では、大勢の女性にまじって、そんな舞台に少年ファンたちも胸をときめかしていた。
第5章 緑の袴からモンペへ
希望は捨ててはいませんでしたよ──。物資の乏しさに耐え、玉井浜子さんは宝塚音楽舞踊学校の予科を修了。しかし、あこがれの大劇場は閉鎖されてしまった。
第6章 銃後の合唱
戦時下、タカラヅカは数多くの国策歌劇を上演した。それは戦争責任に値しないのか? 当時の脚本を手掛かりに検証する。
第7章 ロケットふたたび
タカラヅカの華、ロケットがよくぞまた──。昭和二十一年四月、大劇場再開。初舞台生の踊る姿を観て、上級生たちは涙をこぼした。
エピローグ──幸運な旅

主要参考文献

書誌情報

読み仮名 タカラジェンヌノタイヘイヨウセンソウ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 224ページ
ISBN 978-4-10-610075-8
C-CODE 0221
整理番号 075
ジャンル アート・建築・デザイン、演劇・舞台、ステージ・ダンス
定価 770円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2012/04/27

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宝塚から「レビュー」の文字が消えた

 戦時中、国内では敵性外来語は一掃されるが、宝塚も例外ではなかった。「ミュージカル・ドラマ」「グランド・ショウ」「南洋レビュー」といった言葉がプログラムに躍っていたのは昭和15年の前半までである。その年の8月には宝塚と同義語ともいうべき「レビュー」の文字が使用禁止となってしまう。
 演目にしても同様である。「モン・パリ」や「パリゼット」の時代ではもうなくなっていた。最後のレビュー「レッド・ホット・アンド・ブルウ」もたちまち「光と影」と改題される。軍事色はさらに強まり、「軍艦旗征くところ」「銃後の合唱」など、国策歌劇の登場となる。昭和19年3月、宝塚大劇場閉鎖を前にした最後の舞台は「翼の決戦」であった。
掲載:2004年7月23日

著者プロフィール

玉岡かおる

タマオカ・カオル

1956(昭和31)年、兵庫県生れ。神戸女学院大学文学部卒。1987(昭和62)年、『夢食い魚のブルー・グッドバイ』で神戸文学賞を受賞し、作家デビュー。2009(平成21)年、『お家さん』で織田作之助賞受賞。2022(令和4)年、『帆神 北前船を馳せた男・工楽松右衛門』で新田次郎文学賞、舟橋聖一文学賞受賞。主な著書に『銀のみち一条』『負けんとき ヴォーリズ満喜子の種まく日々』『天平の女帝 孝謙称徳』『花になるらん 明治おんな繁盛記』『春いちばん 賀川豊彦の妻ハルのはるかな旅路』など。

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