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被差別の食卓

上原善広/著

814円(税込)

発売日:2005/06/17

  • 新書
  • 電子書籍あり

大宅賞受賞作家が、世界各地の被差別民の食事をレポートした話題作。

大阪のある被差別部落では、そこでしか食べられない料理がある。あぶらかす、さいぼし……。一般地区の人々が見向きもしない余り物を食べやすいように工夫した独自の食文化である。その“むら”で生まれ育った著者は、やがて世界各地にある被差別の民が作り上げた食を味わうための旅に出た。フライドチキン、フェジョアーダ、ハリネズミ料理――。単に「おいしい」だけではすまされない“魂の料理”がそこにあった。

目次
はじめに
第一章 ソウルフード――アメリカ
ハーレムの豚もつ煮
フライドチキンの秘密
なまずフライとBBQサンドの味
バーボンストリートのザリガニ料理
ポリティカリー・コレクトな“差別”
KKK創設者の銅像が立つ町
本物のソウルフード
第二章 奴隷たちの楽園――ブラジル
国民料理は奴隷料理
ダダの笑顔
「オクラ」はアフリカ言語
黒人奴隷の収容所
逃亡者たちの楽園
第三章 漂泊民の晩餐――ブルガリア、イラク
ロマの“浄・穢観”
「トマス」「トラハナ」冬の朝食
クマ使いの村
ハリネズミを料理する
イラク戦乱下のロマたち
空爆跡地を居住地に
廃墟とベンツ
ポケットの中のチョコレート
第四章 禁断の牛肉料理――ネパール
カースト制度の国
不可触民サルキ
姓名すなわち身分
エクハテ村のゴビンダ一家
強烈なタブーを犯して
ジテの夢
カトマンズのサルキ集落
ネパールの「さいぼし」
第五章 被差別の食卓――日本
団地からの風景
日本版ビーフジャーキー「さいぼし」
“むら”のファーストフード
肉ようかん「こうごり」
舌の記憶「あぶらかす」
あとがき

引用・参考文献

書誌情報

読み仮名 ヒサベツノショクタク
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 208ページ
ISBN 978-4-10-610123-6
C-CODE 0225
整理番号 123
ジャンル 文芸作品、社会学、暮らし・健康・料理
定価 814円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2011/12/28

蘊蓄倉庫

ロマのハリネズミ料理

「ジプシー」という名で馴染み深い、流浪の民ロマ。中欧地域に多く居住する彼らは、かつては各地を転々とする生活を送っていたが、現在では急速に定住化が進んでいる。
 近代化が進む彼らであるが、一方でロマ特有の古くからの伝統を根強く残している面もある。――例えばハリネズミ料理。欧州でハリネズミを食べるのはロマだけである。
 では、なぜロマの人たちはハリネズミを食べるのか? それは被差別民であった彼ら独自の“穢れ観”に根差す理由があった。ロマはこと食事に関しては、強い“浄・穢”信仰を持つ。自分たち民族以外が作ったものは全て穢れているとして決して口にすることはないほど。食する動物の選別も厳格である。自分の体を舐める動物は外部の穢れを取り込んでいると見られ、敬遠される。他の動物を穢れた外皮ごと丸呑みしてしまう蛇など以ての外。そうした意味で彼らの穢れ観を最も満足させる清浄な動物がハリネズミなのだ。全身を針で覆ったハリネズミは、外敵はもちろん、外部の穢れを内に取り込むことがないからである。被差別民であるロマは、こうした穢れ観によって一般人から隔離し、あたかもハリネズミのように自身を守ってきたのである。
掲載:2005年6月24日

著者プロフィール

上原善広

ウエハラ・ヨシヒロ

1973(昭和48)年、大阪府生れ。大阪体育大学卒業後、ノンフィクション作家となる。2010(平成22)年、『日本の路地を旅する』で大宅壮一ノンフィクション賞受賞。2012年雑誌ジャーナリズム賞大賞受賞。主な著書に『被差別の食卓』『聖路加病院訪問看護科 11人のナースたち』『異形の日本人』『私家版 差別語辞典』『異邦人 世界の辺境を旅する』『被差別のグルメ』『一投に賭ける 溝口和洋、最後の無頼派アスリート』『発掘狂騒史 「岩宿」から「神の手」まで』『差別と教育と私』『カナダ 歴史街道をゆく』『辺境の路地へ』『断薬記 私がうつ病の薬をやめた理由』などがある。

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