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すべての日本人に誇りと自信を与える画期的日本論!

国家の品格

藤原正彦/著

734円(税込)

本の仕様

発売日:2005/11/20

読み仮名 コッカノヒンカク
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 191ページ
ISBN 978-4-10-610141-0
C-CODE 0231
整理番号 141
ジャンル 評論・文学研究、政治、社会学、ノンフィクション
定価 734円
電子書籍 価格 648円
電子書籍 配信開始日 2007/07/20

日本は世界で唯一の「情緒と形の文明」である。国際化という名のアメリカ化に踊らされてきた日本人は、この誇るべき「国柄」を長らく忘れてきた。「論理」と「合理性」頼みの「改革」では、社会の荒廃を食い止めることはできない。いま日本に必要なのは、論理よりも情緒、英語よりも国語、民主主義よりも武士道精神であり、「国家の品格」を取り戻すことである。すべての日本人に誇りと自信を与える画期的提言。

著者プロフィール

藤原正彦 フジワラ・マサヒコ

1943(昭和18)年、旧満州新京生れ。東京大学理学部数学科大学院修士課程修了。お茶の水女子大学名誉教授。1978年、数学者の視点から眺めた清新な留学記『若き数学者のアメリカ』で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞、ユーモアと知性に根ざした独自の随筆スタイルを確立する。著書に『遥かなるケンブリッジ』『父の威厳 数学者の意地』『心は孤独な数学者』『国家の品格』『この国のけじめ』『名著講義』(文藝春秋読者賞受賞)『ヒコベエ』『日本人の誇り』『孤愁 サウダーデ』(新田次郎との共著、ロドリゲス通事賞受賞)『日本人の矜持』『藤原正彦、美子のぶらり歴史散歩』等。新田次郎と藤原ていの次男。

目次

はじめに
第一章 近代的合理精神の限界
すべての先進国で社会の荒廃が進行している。
その原因は、近代のあらゆるイデオロギーの根幹を成す
「近代的合理精神」が限界にぶつかったことにある。
第二章 「論理」だけでは世界が破綻する
「論理を徹底すれば問題が解決できる」という考え方は誤りである。
帝国主義でも共産主義でも資本主義でも例外はない。
「美しい論理」に内在する四つの欠陥を指摘する。
第三章 自由、平等、民主主義を疑う
自由と平等の概念は欧米が作り上げた「フィクション」である。
民主主義の前提条件、「成熟した国民」は永遠に存在しない。
欧米社会の前提を根底から問う。
第四章 「情緒」と「形」の国、日本
自然への感受性、もののあわれ、懐かしさ、惻隠の情……。
論理偏重の欧米型文明に代わりうる、
「情緒」や「形」を重んじた日本型文明の可能性。
第五章 「武士道精神」の復活を
鎌倉武士の「戦いの掟」だった武士道は、
日本人の道徳の中核をなす「武士道精神」へと洗練されてきた。
新渡戸稲造の『武士道』を繙きながら、その今日性を論じる。
第六章 なぜ「情緒と形」が大事なのか
「情緒と形」の文明は、日本に限定すべきものではない。
そこには世界に通用する普遍性がある。
六つの理由を挙げて説く、「情緒と形」の大切さ。
第七章 国家の品格
日本が目指すべきは「普通の国」ではない。
他のどことも徹底的に違う「異常な国」だ――。
「天才を生む国家」の条件、「品格ある国家」の指標とは。

インタビュー/対談/エッセイ

波 2005年12月号より 新潮新書『国家の品格』刊行記念特別対談 情緒こそが人間を幸福にする  藤原正彦『国家の品格』

山田太一藤原正彦

■歯どめが必要 ■「弱さ」が認められる国
■GDPが半分になっても ■情緒が創造性を育む


歯どめが必要
藤原 初めまして。今日はよろしくお願いします。
山田 昔、小さな賞の選考でお父様の新田次郎さんと御一緒してたんですよ。本当に古武士みたいな風貌の、頑固な方で。
藤原 そうですね。
山田 息子さんが数学者におなりということはもちろん知っておりましたが、やっぱり回り回って武士道に戻られたのかと、この本を読んで感慨がございました。とても面白く読ませていただきました。
藤原 「国家の品格」とか言ってるわりには本人が下品なんで、対談を断られるんじゃないかと心配しておりました(笑)。
山田 教えられるところがいろいろありましたし、とても共感しました。合理性を重んじるアメリカに三年間いらして、それからイギリスを経験なさって、その結果として日本の情緒と武士道に還るというプロセスも、とても納得できました。私自身は「武士道に戻るべきだ」とまでは思っているわけではありませんが、今の時代に対する腹立たしさみたいなものは、藤原さんと同じだと思います。
藤原 私の場合は、すでに獲得された自由とか平等とか、あるいは「論理」とか、そういうものが行き過ぎになっているので、ちょっと歯どめをかけて、揺り戻しをしたいという思いがあります。
山田 なんにせよ歯どめが必要ではないかというのは、かなりの人が問題意識として持っていることだと思います。その一つとして武士道を掲げられたわけですね。
藤原 そうなんです。ただ、武士道を普及させるといっても、今七十歳以下の人は武士道を教えられませんよね。有効な手立ては読書文化の復活と活字文化の復活です。そのことは、この本でもしつこいくらいに書いておきました。

「弱さ」が認められる国
山田 そこは本当に難しいところで、私自身は、「歯どめ」の一つは、人間の弱さを感じることだと思うんです。人間は、例えば洪水が起こると非常に無力であることを思い知る、地震が起きると非常に無力感にとらわれる。生身の人間にとっては、あるところまで行くと「壊れてしまうよ」というポイントがあるわけです。
気づきにくいけれど、経済のグローバリズムというのも、すでに人間を物すごく壊していると思うんですね。
藤原 それは私の実感と一緒です。
山田 前にリニアモーターカーの実験で、スピードはすでに出せるけれども、その速度だと乗っている人間が死んでしまう、という話を読んだことがあるんです。リニアモーターカーの場合には、とにかく歯どめが見つかる。しかし、経済のグローバリズムでは、すぐにはダメージが見えません。
そろそろ人間の可能性ではなくて限界の方に光を当てるべきじゃないか。実は「人間の可能性」が私たちを幸福にしなくなってきてるんじゃないか。そういうことを藤原さんの本を拝読していて思いました。
藤原 山田さんのお話を伺っていて、一つ思い出したことがあります。知り合いの非常に優秀なアメリカ人女性で、日本に二年ぐらい住んでいた人なんですけど、彼女は「日本にいるとすごく気が休まる」と言うんです。アメリカにいたら、常に強く生きていないといけないが、日本は弱さを出しても認められる。こんな国は欧米にはない。そこが日本を一番好きな理由だ、と。
このことは山田さんのおっしゃった人間の幸福ということとつながっていると思うんです。私はグローバリズムとか市場経済を徹底的に糾弾しているわけですけれども、あれももともとはアダム・スミスのころから、それぞれの人間が利潤を最大にするように利己的に働けば、社会全体が神の見えざる手に導かれるという……。
山田 予定調和ですね。
藤原 予定調和でこの社会がうまく行くと。しかし、そこにあるのは結局、お金の概念だけなんです。人間の幸福はどこにもない。現在はやっている市場経済も全く同じです。何をするにも「消費者のため」と言いますよね。消費者が安く米を買えれば、日本から百姓がいなくなって、美しい田園がなくなってしまっても構わない、と。
つまり、流行中の新古典派経済学は根本的に間違っていると思うのです。人間の幸福は眼中になく、個人や社会の富裕度をいかにして高めるかしか考えない。「穏やかな心で生きる」を価値として認める余地などどこにもないですから。
山田 松竹の撮影所にいた頃、私が助監督としてついていた監督に木下惠介さんがいましたが、木下さんは強い人を描かなかったですね。弱い人を描いていた。弱いけど美しいというんじゃなくて、弱いからこそ美しい。口ごもるから美しい。相手とコミュニケーションをすぐできないから美しい。そういう人を描いていました。
考えてみれば、私たちは開かれた人間関係ばかりを求めているわけじゃないですよね。閉じられた人間関係、閉鎖的な場所、弱さ。そういうネガティブと言われているものを、実はとても必要としている。合理的なことばかりを進めていくと、本当に幸福感がなくなると思います。

GDPが半分になっても
藤原 ドナルド・キーンさんがこういうことを言っています。生きているものがいなくなったり、古い建物が消えたりすると、欧米人でも悲しむ。しかし、儚いものに美を見出すのは日本人だけだ、と。木下さんの話は知りませんでしたが、口ごもることの美しさとか儚さの美とか、そういう美意識は日本人がとりわけ鋭いですね。
こういうものはローカルに思えますけれども、実はグローバルであって、非常に普遍的なんですね。欧米が遅れているだけなんです。私は向こうの大学で何年も教えていて、彼らのレベルも知っていますから(笑)、連中の首っ玉を捕まえてきて教えこんでやりたいですよ。
山田 ずいぶん勇ましいなあ(笑)。
藤原 ここ四世紀、五世紀の世界は、合理主義とか人間中心主義とかいう、究極的には人間を幸福にしない考え方に支配されてきた。そういう病に対する答えというものを、日本は豊富に持っていると思うんです。本当は「日本の逆襲」と言いたい。日露戦争に次ぐ、今度は精神面での欧米への逆襲である、と。山田さんは平和主義だから「逆襲」という言葉には抵抗を感じられることと思いますが。
山田 もちろん基本的には賛成ですけれども、しかし農村を守るとか弱さを評価するとかいうことをしていると、経済的にはどうしても落ちていきますよね。「経済的に落ちているけれども格好いい」というところまで持っていかないといけない。そのことに現在の日本人が耐えられるかどうか。
藤原 私がこの本で「国家の品格」の条件としたのには四つあって、その中の一つが「美しい田園」なんです。美しい田園が保たれていることは、その国が金銭至上主義に毒されていない証です。もう一つ、学問や芸術など、「役に立たない」活動が盛んであること。こうしたものがなくて経済だけが発展している国は、腹の底で世界中にばかにされるんですね。
「国家の品格」を守るためには、たとえGDPが半分になってもいい。日本の人口はこれから半分になりますが、GDPも半分になればいい。たかが経済です。それよりも、美しい田園や、伝統的な国柄を取り戻す。そのことを、また戦闘的ですけれども、今度は全ての日本人の首っ玉を捕まえて教え込みたいんです(笑)。
山田 でもそれは本当に難しいことですよね。国民全体のセンスを上げることは。
藤原 それでも他国はともかく、日本だけはそういう国にしたいですね。そのためにも、まず小学校で国語教育を徹底的にやる。初等教育は一に国語、二に国語、三、四がなくて五に算数、あとは十以下。
山田 それは共感しますね。
藤原 国語力により読書に対するバリアをなくす。読書をすれば、いろんな感受性や情緒が発達してきます。無論、実体験や芸術や自然に親しむことも大切です。論理性や合理性だけを追求して情緒が未発達だと、結局は人間としても伸びないんです。

情緒が創造性を育む
山田 近親者の死とか病気とか、マイナス体験こそが情緒を培うことも多いですよね。だから、マイナス体験を合理的に片付けようとして、カウンセラーによって切り抜けさせたりするのはとても間違っていると思います。
藤原 欧米の発想ですね。対症療法です。
山田 深く悲しむ、あるいは簡単に忘れることでも人間は傷つきますよね。あんなに仲がいい友達が死んだのに、自分はこんなに早く回復してしまうのか、と。マイナス体験は、僕は物すごく豊かなものを持っていると思うんです。
藤原 私がケンブリッジにいた時、オックスフォードに十六歳でドクター論文を書いた女の子がいました。彼女は父親の方針で幼い頃から数学だけに邁進し、十七歳で海を渡ってハーバードの講師になった。いま三十代前半のはずですが、ここ十年、数学界で彼女の名前を聞いたことがありません。結局、友達と遊ばず、小説も読まず、失恋もしないまま一つの道を究めても、天井までは到達できても最終的に天井を突き破るまではいかないんです。
日本は数学の天才をたくさん出していますけど、これは日本が情緒の国であることと大いに関係している。一見無駄に見えることこそが独創性を育んでいるわけです。
山田 自然は飛び級ができません。人間も実のところ飛び級はできないと考えていいと思いますね。
藤原 特に情緒力はそうですね。技術力は飛び級できますが。三歳児を私に預けてくれたら、五歳までに微積分を教え込めます。そんなのは簡単なんです。しかし、それで数学者として大成するかというと、そんなことはない。創造性のある活動が営まれるには、美しい情緒が必要です。美しい情緒や形に満ちた品格ある国家こそが、日本の進むべき道だと思うのです。

(やまだ・たいち 脚本家・作家)
(ふじわら・まさひこ 数学者)

担当編集者のひとこと

ザンネーン!

『国家の品格』は、講演と聞き書きを元にして、著者が大幅に手を入れて出来上がった本です。こうしたやり方で本をつくる場合、まず編集者が原稿をまとめ、それを著者が直すというプロセスを何度か繰り返しますが、その過程では「書けない話」「入れなくて良かった話」「惜しいけど、本のテーマとは違う話」などがふるい落とされていきます。
 編集部の数人でお話を伺った時に、大いに盛り上がった話の一つに「いじめ」の問題があります。「いじめをなくしたかったら『卑怯』を教えよ」という話は『国家の品格』にも盛り込んだのですが、実はこの時、藤原さんは「いじめで自殺なんかする奴がいたら、○○○だから○○○」などという脱線気味の発言もされています。○○○についてはご想像にお任せしますが、聞いている分には膝を打っても文章にしてみると誤解を招きかねません。削らざるを得ませんでした。 その一方、藤原さんの書き込み自体が「?」で、カットさせてもらった箇所もあります。ある極めて真面目な議論を展開しているところに、「ザンネーン」という書き込みがしてある。意味が分からないので聞いてみると、「ああ、これは波田陽区(ギター侍)ですよ。今回は語り口調だから語りっぽくしてみました」との答え。先生、失礼ながらそれは、「すべったオヤジギャグ」です!
 ともあれ藤原正彦さんの魅力は、こうした論理と情緒、真面目さとユーモア、徹底的に本質を考え抜く数学者気質と細部にこだわる文学者気質などの対照的な要素が、渾然一体となっているところです。講演を聴いていると、聴衆がみな藤原さんの人柄に魅了されていく様子が手にとるようにわかります。
『国家の品格』では、誤解されかねない「脱線」や「すべったオヤジギャグ」は省きましたが(残っているかも知れませんが……)、語りのライブ感はできるだけ残すように務めました。数ある藤原さんの本の中でも、人間的魅力が最も色濃く出ているのがこの本だと思います。自信を持っておすすめします。

2005年11月刊より

2005/11/20

蘊蓄倉庫

初の新書単著、初の聞き書き

 小川洋子さんとの対談『世にも美しい数学入門』(ちくまプリマー新書)が話題になった藤原正彦氏ですが、意外にも新書の単著は今回の『国家の品格』が初めてです。新書という器が初めてなら、講演と聞き書きをベースに本を作ったのも初めて。新たな器と方法がどう作用するか気にしておりましたが、おかげさまで出足は絶好調です。ご本人曰く、「『バカの壁』がライバル」だそうですが、はて、どこまで迫れますやら……。

掲載:2005年11月25日

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