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強欲よ、さらば! 自治体・企業の独自の試みが作る「この国のかたち」。

腹八分の資本主義―日本の未来はここにある!―

篠原匡/著

734円(税込)

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発売日:2009/08/17

読み仮名 ハラハチブノシホンシュギニホンノミライハココニアル
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 191ページ
ISBN 978-4-10-610327-8
C-CODE 0223
整理番号 327
ジャンル 政治、ノンフィクション
定価 734円
電子書籍 価格 648円
電子書籍 配信開始日 2012/05/25

悲観しているだけでは何も変わらない。目を凝らせば、日本の中にも希望はあるものだ。出生率を劇的に向上させた長野県下條村、「あるもの探し」で活気を取り戻した宮崎県児湯郡、社員と地域の幸せを徹底的に追求し続ける伊那食品工業……。共通しているのは、社会を蝕む「強欲」を退け、お金には代えられない価値を守り続けていることである。画期的な取り組みを続ける地方を訪ね、「日本のこれから」を考える。

著者プロフィール

篠原匡 シノハラ・タダシ

1975(昭和50)年東京都生まれ。日経ビジネスオンライン記者。慶応大学商学部卒業後、1999年に日経BP社に入社。「日経ビジネス」編集部で、建設、不動産、金融などを担当。2008年3月より、日経ビジネスオンライン編集部に所属。

目次

まえがき
第1章 出生率2.04はどうして実現したのか――長野県下條村
子育て支援に資源を集中/支出削減で財務体質を強化/「国の甘言」をしりぞける/住民が自ら道路を整備/村営住宅に独自の入居条件/目的に到達するための明確な過程/「少額補助金」という非効率/二重行政の見直しで14兆円が浮く!
第2章 「あるもの探し」で地域は活性化する――宮崎県児湯郡
地方の農村に1万人の観光客/発端は1人の町役場職員/敵対していた漁師と農家/「地元学」の格好の例
第3章 林業が栄えれば水源も守れる――長野県根羽村
「トータル林業」で無借金黒字経営/強烈な成功体験/一時は対立した上流と下流/流域の協力が林業を支える/国産材回帰で森が破壊される?/水源を買いに来た中国資本/重要水源の公有林化/「切らない林業」/水を使う者が水を作る
第4章 超高収益を実現した障害者企業、サムハル――スウェーデン・ストックホルム市
従業員の9割が障害者/業務は3種類/「転職支援企業」という側面も/株主=国の要求とは/不断に仕事を作り続ける/労働現場のマネジメントに強み/サムハル生みの親、ゲハルト・ラーソン/荒波に揉まれ続けた30年/下請けからサービス業へ/スウェーデンという国のあり方/人を社会から切り離さない仕組み/高福祉を支える地方自治と民主主義
第5章 企業と農村の幸せな結婚――岩手県住田町、北海道赤平市、千葉県富里市
破綻した工場を買い取る/「今の時代、農協なんて当てにならない」/前身は破綻寸前の第三セクター/赤字の公社は宝の山だった!/生産者、企業、農協が手を組んで/農協の思惑
第6章 腹八分の資本主義――長野県伊那市
寒天のトップ企業/社員の幸せと会社の永続を目指す/終身雇用と年功序列を維持/社員性善説の経営/求めるのは「立派な社会人」/利益は社員と地域に還元/緩やかな成長を目指す「年輪経営」/「寒天ブーム」に乗ったツケ
あとがき

インタビュー/対談/エッセイ

波 2009年9月号より 「小僧記者」が正面から考えた「この国のゆくえ」

篠原匡

ほんの数週間前まで、国会議員や官僚、陳情客など大勢の人々が行き来していた永田町界隈。衆院解散の号砲とともに、がらんとした静寂に包まれています。聞こえるものと言えば、やけに大きい蝉の鳴き声と建設工事の槌音くらい。かつての喧噪が嘘のようです。
政権交代が争点に浮上している今回の総選挙。どの政党が政権を執るにせよ、国のあり方を根本から変えなければならない、という国民の強い意志は確実に政権党に反映されることでしょう。国のあり方が問われるこの夏、この本が出版されることに、不思議な縁を感じています。
本書は、今年の初めに日経ビジネスオンラインで連載した「この国のゆくえ 危機の今こそ考える」を加筆、修正してまとめたものです。この国のセーフティネットは至るところで綻びを見せており、地方経済も困窮の極みにある。にもかかわらず、方向性を決めるべき政治は混迷を深め、縦割りの官僚制度は激変する社会に対応できていません。未曾有の現実に直面した今、日本はどのような国や社会を目指すべきなのか――。現場の取材を通してその手がかりを探そうと思って始めた企画でした。正直言って、記者10年目の小僧には大きすぎるテーマでしたが、今の感覚を大切に、やれるだけやってみようと思いました。
連載にあたって意識したのは、現場の事実から見える世界を描くということでした。その結果、地方の話ばかりになりました。地方財政の悪化や高齢化の進行、若者の流出など、地方の地域社会は崩壊の瀬戸際にあります。「火事だ」と叫んだところで誰も来てくれない。そんな地域は山ほどあるのです。もっとも、追い込まれているからこそ、一部の地域の一部の人は顔を上げ、現状を変えようと苦闘しています。その苦闘の中に希望がある。好んで地方に足を運んだのはそう感じたためでした。
実際、この本に収録した八つの場所に、私はこの国の未来を見ました。出生率2.04を実現した長野県下條村を見れば、少子化対策というだけでなく、この国がなすべきことが明確になるでしょう。宮崎県児湯郡の「5町対抗鍋合戦」はある意味、馬鹿げていますが、どうすれば地域が元気になるか、その本質がわかるのではないかと思います。ストックホルムにある国営企業では、「障害者が従業員の90%を占める企業が存在している」という驚きとともに、高福祉高負担と言われるスウェーデンの本質が透けて見えるでしょう。長野県伊那市にある寒天メーカーの経営を見れば、企業の永続性や資本主義の未来に対して、一つの光を感じるのではないでしょうか。
本書で取り上げているのは、閉塞感に覆われた今の日本にあって希望と勇気を与えてくれる希有な場所です。そこには、この国の未来を考えるヒントがいくつもあると信じています。

(しのはら・ただし 日経ビジネスオンライン記者)

蘊蓄倉庫

地方再生のヒント

 宮崎県児湯(こゆ)郡で、昨年11月に行われた「5町対抗鍋合戦」は、1万人もの観光客を集めました。このイベントは、「観光客を呼ぼう」と思って始められたわけではなく、「地域を盛り上げるにはどうしたらいいか」を考えて、住民たちがあくまで手弁当で始めたものです。  行政主導ではなく住民主導。「ないものねだり」ではなく「あるもの探し」。カネではなく知恵。「鍋合戦」には、地方再生のヒントがつまっています。
掲載:2009年08月25日

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