ホーム > 書籍詳細:医薬品クライシス―78兆円市場の激震―

崇高な使命、熾烈な開発競争、飛び交う大金、去っていく研究者。2010年、もう新薬は生まれない。

医薬品クライシス―78兆円市場の激震―

佐藤健太郎/著

756円(税込)

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発売日:2010/01/16

読み仮名 イヤクヒンクライシスナナジュウハッチョウエンシジョウノゲキシン
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 207ページ
ISBN 978-4-10-610348-3
C-CODE 0247
整理番号 348
ジャンル 暮らし・健康・料理
定価 756円
電子書籍 価格 648円
電子書籍 配信開始日 2011/10/28

全世界で七十八兆円、国内七兆円の医薬品業界が揺れている。巨額の投資とトップレベルの頭脳による熾烈な開発競争をもってしても、生まれなくなった新薬。ブロックバスターと呼ばれる巨大商品が、次々と特許切れを迎える「二〇一〇年問題」――。その一方で現実味をおびつつあるのが、頭のよくなる薬や不老長寿薬といった「夢の薬」だ。一粒の薬に秘められた、最先端のサイエンスとビジネスが織りなす壮大なドラマ!

著者プロフィール

佐藤健太郎 サトウ・ケンタロウ

1970年、兵庫県生まれ。東京工業大学大学院理工学研究科修士課程修了。医薬品メーカーの研究職、東京大学大学院理学系研究科広報担当特任助教等を経て、現在はサイエンスライター。2010年、『医薬品クライシス』(新潮新書)で科学ジャーナリスト賞。2011年、化学コミュニケーション賞。著書に『炭素文明論』(新潮選書)『「ゼロリスク社会」の罠』(光文社新書)『世界史を変えた薬』(講談社現代新書)など。

目次

はじめに
一章 薬の効果は奇跡に近い
「薬九層倍」は真実か/創薬は人類最難の事業である/ビー玉で地球を操る/接着剤か付箋か/タンパク質の仕事/薬はタンパク質に働きかける/酵素と受容体を狙え/胃潰瘍と花粉症が同じ薬で治る?/設計図のない精密機械/防衛ラインを突破せよ/インスリンを飲み薬にできない理由/あまりにも矛盾した条件
二章 創薬というギャンブル
最先端の創薬現場/新薬を創れる国は十ヶ国に満たない/動物実験でわからないこと/特許をめぐる熾烈な争い/「研究」と「開発」の違い/臨床試験の長い道のり/のしかかる倫理問題/バイアグラは偶然の産物/研究者のフロンティアスピリット
三章 全ての医薬は欠陥品である
薬が嫌われる理由/薬は病気を治すものではない/怪僧ラスプーチンの死因/誰にでも効く薬はない/医薬の限界/防げる副作用、防げない副作用/毒と薬は紙一重/「飲み合わせ」という落とし穴/進む副作用対策/リスク過敏症の弊害/なぜ南アでエイズが蔓延したか/タミフル騒動の盲点/新型インフルエンザの特効薬/イレッサの是非/数字と感情のあいだ
四章 常識の通用しない七十八兆円市場
薬の値段を決めるもの/アメリカの薬価は世界一/特許切れという恐怖/ジェネリックと先発品は同じか/普及するジェネリック/高収益で不安定な業界構造/なにが売れるかわからない/老舗を呑み込んだ大ヒット製品/メガファーマの誕生/道半ばの国内再編/合併の功罪/新薬の産声が止んだ
五章 迫り来る二〇一〇年問題
巨艦ファイザーの憂鬱/創薬技術の躍進/ゲノム解読とテーラーメイド医療/研究者大量失業の時代/創薬力は低下したか/難病だけが残った/新技術の限界/名門メルクの蹉跌/バイオックス事件の衝撃/厳格化する安全基準/遠のくゴール/大合併が招いた保守化/ベンチャー企業の台頭/発想の芽を摘んだ成果主義/「一万五〇〇〇円」の報奨金/スターは企業に残らない
六章 製薬会社の終わらない使命
研究機関に新薬は創れない/優良ベンチャーの争奪戦/抗体医薬の登場/鋭い効き目と高い安全性/命の値段がつりあがる/創薬手法のパラダイムシフト/夢の医療に向かって
おわりに

インタビュー/対談/エッセイ

波 2010年2月号より 「ゼロリスク志向」と「2010年問題」

佐藤健太郎

医薬品業界は常に高収益を上げ続けている、不況に強く安定した業界――という常識が、ここに来て大きく揺らいでいる。今年二〇一〇年前後に、世界の製薬会社の収益を支える大型製品の特許が次々と切れ、医薬品業界は重大なピンチを迎えているのだ。これがいわゆる「二〇一〇年問題」で、最近経済誌などでもよく取り上げられるようになった。
筆者は、つい最近まで製薬会社の研究者として新薬開発の最前線で働いていた。科学技術は大いに進歩しているのに、新薬がさっぱり生まれなくなったという不可解な現象がなぜ起きたのか、解き明かしてみたいというのが本書執筆の動機であった。また、医薬という極めて特殊な商品には、様々なレベルで誤解もつきまとう。これをわかりやすく解きほぐすのも、筆者のような立場の者がすべきことと思ったのだ。
とはいえ、書き始めてみるとこれは難題であった。新薬が生まれなくなった背景には、医薬につきものの副作用の問題が大きく関与している。現実に苦しんでいる人が多数いる以上、医薬関係者にとって副作用の問題はできれば避けて通りたいテーマだ。
筆者もだいぶ悩んだが、あえて逃げずにこの問題を語ることにした。副作用の存在を差し引いても、医薬品は世界の人々の健康に十分奉仕していると信ずるからだ。また、近年顕著になっている「ゼロリスク志向」に対する危機感があったからでもある。医薬に限らず、どんなメリットがあろうと一点でもリスクのあるものは排除すべしという潔癖症的傾向が、あらゆる場面でコスト増加をもたらし、我々自身の首を絞めているのではないかと筆者は危惧している。このあたり、二〇一〇年問題は単なる医薬品業界のみの内部事情にとどまらず、現在世界全体を覆う逼塞感につながる問題ではないかと思う。
副作用はなぜ存在するのか、なぜ切り離すことができないのか、なぜ医薬には一定の危険があると知りながら処方されているのか――といった問題を突き詰めていくと、結局「医薬とは何か」というところに到達する。遠回りのようではあるが、本書ではここから書き下ろすこととした。研究に携わる人々の情熱、人間ドラマといったあまり一般には語られない事柄も、できる限り盛り込んだ。
書き進めながら、基本的には単純な化合物に過ぎない医薬が、いかに様々な側面を持った難しい製品であるかということを再認識することとなった。創薬は分子レベルから臨床試験まで細分化された長いステップを必要とし、今や個人が全体を俯瞰することさえ不可能になってしまっている。あまりに複雑巨大化した現代の創薬は、医療の現場が求めるものを本当に提供できているのだろうか。一冊を書き終えた今、医薬品業界の抱える問題の深さを改めて思うようになっている。

(さとう・けんたろう サイエンスライター)

担当編集者のひとこと

著述もプロですが、医薬のプロでもあります

 本書の著者、佐藤健太郎氏が著述を本業としたのは、ほんの数年前のことです。それ以前は十数年にわたり、某医薬品メーカーの研究者として新薬開発に携わってきました。研究者時代からHP「有機化学美術館」を運営するなど、化学の奥深い魅力を発信し続けてきた佐藤氏の持ち味はなんといってもその筆力。複雑で近寄りがたくもある化学の世界を、人物にまつわるエピソードや絶妙なたとえ話などをまじえ、興味深く伝えてくれます。
 本書でも、ビジネス誌をにぎわす「2010年問題」はもちろん、創薬技術の変遷から薬の本質、薬が効く仕組みなどの基本までをわかりやすく解説。さらに、熾烈な新薬開発の最前線で流される汗や涙、飛び交う大金をめぐるドラマもたっぷり盛り込みました。一粒の薬に、こんな物語が秘められていたとは、と驚くことしかりです。
 古巣である医薬品の世界を内から外から書きつくした本書は、佐藤氏の3冊目の著書にしてはじめての新書となります。新進気鋭のサイエンスライターの自信作を、ぜひご一読ください!

2010/01/25

蘊蓄倉庫

それでも副作用はなくならない

 人の命を救うための薬が、反対に人を苦しめ、命を奪うことがあります。副作用です。新薬の承認基準がいくら厳格になっても、副作用を完全になくすことはできません。なぜなら望ましくない効果のなかには、その薬の主目的と直結しているものがあるからです。たとえばバイアグラには、頭痛や顔の紅潮といった副作用が報告されています。血管を拡張するという効果が、体のほかの部分にも及んでしまうためです。
 医薬には副作用というリスクがあるものの、病気を放置するより総合的にみてリスクが減る場合に投与されます。したがって、重い病気に対しては相当の副作用が見込まれる薬でも使われることがあるのです。
 梅毒が不治の病とされていた時代、末期の梅毒患者をマラリアに感染させ、高熱によって病原体の一掃をはかる「マラリア療法」というものがありました。もちろん、マラリアによって命を落とす患者もありました。それでもこの手法を開発したJ・W・ヤウレッグは、1927年のノーベル医学・生理学賞を受賞しています。
掲載:2010年1月25日

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