ホーム > 書籍詳細:編集者の仕事―本の魂は細部に宿る―

「いい本」はどこが違うのか。四十余年の経験から語り尽くす「紙の本」の魅力。

編集者の仕事―本の魂は細部に宿る―

柴田光滋/著

756円(税込)

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発売日:2010/06/17

読み仮名 ヘンシュウシャノシゴトホンノタマシイハサイブニヤドル
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 206ページ
ISBN 978-4-10-610371-1
C-CODE 0295
整理番号 371
ジャンル 本・図書館、人文・思想・宗教、マスメディア
定価 756円
電子書籍 価格 648円
電子書籍 配信開始日 2011/10/28

本の良し悪しは、読まなくても分かる。なぜなら「いい本」には、オビから奥付まで随所に工夫が凝らされているから――。「1頁が存在しないのはなぜか」「目次と索引こそ技量が問われる」「余白の意味」「明朝体の美しさ」「本文紙は白ではない」など、数々の名著を手がけた編集歴四十余年のベテランが、本づくりについて縦横に語る。“電子書籍元年”と言われる今こそ伝えたい、昔ながらの「紙の本」の知られざる魅力!

著者プロフィール

柴田光滋 シバタ・コウジ

1944(昭和19)年東京都生まれ。編集者。早稲田大学第一法学部卒業。1968年から40年間にわたり新潮社に勤務。吉田健一、安部公房、丸谷才一、辻邦生など、多くの文学者を担当するかたわら、飲食関連の書籍も手掛けてきた。著作に『ワインをめぐる小さな冒険』。

書評

波 2010年7月号より 本には表情がある

柴田光滋

街を歩いていると、ついふらりと書店に寄ってしまう。中学校に入るあたりからのことで、いったいもう何十年になるのか。あまり歳は考えたくないが、すでに半世紀は超えている。
何より本に囲まれた空間がうれしい。自分の蔵書でもないのに、棚を眺めているだけで豊かな気分になる。まことに本屋さん泣かせの人間ではあるが、力を込めて記せば、買う時には買う。
好きな著者、仕事の関係、趣味の世界の一冊が大半だが、時には思わぬ出会いもある。いずれにしても、手にとってしばし眺めるうちに、その本の表情とでも言うべきものに惚れ込み、気がつけば足がレジに向っているのである。
表情と言ってもさまざまで、気持ちがはずむようなものもあれば、その逆もある。内容に関心が湧いても、表情がいささか気に入らず、棚に戻してしまうことも少なくない。
長いこと私は書籍編集に携わってきたが、本を手掛けるたびに痛感するのは、その表情を作ることがいかにむずかしいかということである。
表情とはつまるところ細部の集積であって、少しでも手を抜けばだらしのないものになってしまう。ジャケットや表紙や見返しだけではない。判型(本のサイズ)も本文紙も大事だし、本文や見出しの書体、さらにはノンブル(該当頁を示す数字)一つにしてもおろそかにはできない。すべてが表情に直結している。
別の言い方をすれば、本とはモノなのである。モノである以上、機能に優れ、美しくなければならない。そのための編集スキル全般にわたって論じたのが本書である。
明朝体はなぜ読みやすいのか。目次や索引にはいかなる工夫が必要か。表紙の素材は紙にかぎらない……。余談閑談も交えつつ、そうした編集の要所について広く触れることになった。
こう書くと、本作りの実務書のように受け取られるかもしれないが、さにあらず。まことに宣伝めくが、書店を散歩するにしても読書をするにしても、新たな楽しみが加わる内容だと信じている。また、一種の職人話として興じていただければとも思う。
活版印刷はとうに過去のものとなり、編集の作業が大きく変化して久しい。しかし、基本のところでは先人の積み重ねてきた知恵が今も生きている。現場においてすら忘れられがちなその一端なりともお伝えしたかったのである。
今年は電子書籍元年などと言われ、iPadの登場は華々しく報じられている。ここでその議論に立ち入るつもりはないが、一つだけ言っておきたい。モノとしての本ではない電子書籍に表情というものがあるだろうか。
私は明るそうな未来より、確たる過去を大事にした。温故知新と呼べるほどではないにしても、あえて古きに徹したのである。

(しばた・こうじ 編集者)

目次

まえがき
I 本とはモノである
作りの良し悪しを見分けよう
何だか読みにくい/スピンがない!/本を左右に引っ張って/雲の目次・泥の目次
一次元の原稿を三次元に
細部の細部に至るまで/内容にふさわしく/書籍に通じた人ならば/本からテクストを切り離すのは/どこかに職人気質を
II 編集の魂は細部に宿る
すべては判型から出発する
原稿には三種類ある/タイトルには毎回苦心惨憺/文学者の作法/単行本は不定形が前提/部数や定価も含めて/四六判の由来
頁はどこから始まるの?
行数は原稿の内容とも関係する/余白は無用の用/新潮新書が39字組の理由/横組の注意点は/ノンブルは小口寄りか中央に/1頁は存在しない
目次と索引は技量が問われる
本来は実用だが/扉は裏も考えよ/見出しと小見出しは/いとわず索引を/写真処理の初歩の初歩/奥付はなぜ左頁なのか/編集者の意地
校正、畏るべし
命の恩人/すぐれた著者でも/原稿を整備せよ/ルビはやや多めに/引用は読みやすく/基本は引き合わせ/あらゆる角度から/複数の目で/念校や念々校も
III 活字は今も生きている
グーテンベルクに感謝
もう存在はしていないけれど/彫刻活字と鋳造活字/ドイツとイタリアで/平仮名の明朝体は
明朝体は美しい
新米編集者として感動/本文書体としての明朝体は確たる存在/楷書体の「楷」とは/サイズはポイントで
欧文書体はファミリーに分かれる
一冊の古い見本帖/ファミリーだけで一千種類!/センチュリーは欧文の明朝/ゴチック系なら洗練のフーツラ/スクリプトは効果的にも場違いにも
約物と罫線を使いこなせ
使いすぎると安っぽい/代表は句読点系/?や!の乱用は避けたい/カッコの要諦は/ダッシュとリーダーは2字分/アステリスクは優等生/罫の代表は表と裏
IV 見える装幀・見えない装幀
紙には寸法も色も重さもある
装幀は正しい表記か/まずはサイズ/真っ白な本文紙は少ない/重さもデザイン
函入りかジャケットか
日本人ならではの包装感覚/機械函も減ってしまった/ジャケットは何でもあり
表紙は最後まで残るもの
ソフト・カバーとハード・カバー/布表紙の風格/革装には天金/内容に即すこと/見返しには工夫の余地がある/最後に花ぎれとスピンを決める/オビは最終作業/装幀の一部か否か
V 思い出の本から
昭和は文学全集の時代であった
日本の近代出版史から見れば/編集者の時代時代の苦心が伝わる/巻立ても配本順もむずかしい/年表は地味な仕事だけれど/口絵写真は貴重な記録/若手編集者にとっては訓練の場
十二冊プラス幻の一冊
懐かしさではなく/吉田健一『ヨオロツパの世紀末』/平野謙『平野謙全集』全十三巻/児玉隆也『ガン病棟の九十九日』/芥川比呂志『肩の凝らないせりふ』/高田宏『言葉の海へ』/山本益博・見田盛夫『東京フランス料理店ガイド グルマン1984』/安部公房『カンガルー・ノート』/谷沢永一『回想 開高健』/辻邦生『西行花伝』/佐江衆一『黄落』/丸谷才一『新々百人一首』/山崎正和『文明としての教育』/もし実現していたら
あとがき

担当編集者のひとこと

緊張しました!

 本書の著者、柴田光滋さんは担当編集者の大先輩にあたります。編集者としてはもちろん、新潮新書編集部の創刊メンバーとして席を並べ、本づくりのいろはを学んだ人物なのです。身内ぼめをするものではありませんが、どのような細部も決して疎かにせず、本の佇まいを誰よりも大切にする姿は、まさに編集者の鑑。
 実は今回は、目次や見出しの指定を著者自身が行いました。さらに、カバーはもちろん、奥付広告にいたるまで、著者の目が通っています。久々に「師匠」の指導を受けることはいい刺激になりましたし、作業という意味ではずいぶん楽だったはずなのですが、本が完成するまでの緊張と言ったら……。長く一緒に仕事をした相手でもこれだけのプレッシャーがかかるのだから、数ある「編集者本」の担当編集者は大変だったろうなあ、と思った次第です。
 さて、肝心の中身ですが、本にかかわる仕事をしている人はもちろん、本を読むすべての人に興味を持っていただける内容になったと自負しております。職人ものとしても、読み応えは十分。「電子書籍元年」と言われる今こそ、より多くの方に、本の原点に関心を持っていただければ幸いです。

2010/06/25

蘊蓄倉庫

ページの端、4つの名称

 どの業界にも、あるいはどの職人仕事にも独特の用語があるもので、書籍編集の世界でもたくさんの耳慣れない言葉が使われています。たとえばひも状のしおりは「スピン」と呼ばれます。目次などを除いたメインの文章は「本文」ですが、「ほんぶん」ではなく「ほんもん」と読みます。本を開いた左右のページが「見開き」で、ページの合わせ目が「ノド」。左右の端が「小口」で、上が「天」、下が「地」。ほかにも各種記号の読み方、判型(本のサイズ)の種類など、本にまつわるうんちくが満載の一冊です。
掲載:2010年6月25日

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