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テレビの大罪

和田秀樹/著

814円(税込)

発売日:2010/08/12

  • 新書
  • 電子書籍あり

教育を論じる元不良、政治を語るタレント、自殺をあおるキャスター。いったい何サマだ?

あなたはテレビに殺される。運よく命まで奪われなくとも、見れば見るほど心身の健康と知性が損なわれること間違いなし。「『命を大切に』報道が医療を潰す」「元ヤンキーに教育を語らせる愚」「自殺報道が自殺をつくる」――。精神科医として、教育関係者として、父親としての視点から、テレビが与える甚大な損害について縦横に考察。蔓延する「テレビ的思考」を精神分析してみれば、すべての元凶が見えてきた!

目次
はじめに
1 「ウエスト58cm幻想」の大罪
ささやかで重大な偽装/毎年100人の命を奪う病気/若者の脳と身体が壊れる/不妊はなぜ増えたか/ボディ・イメージには流行がある/やせすぎモデルを追放せよ/「やせれば健康になる」はウソ/日本人は飢餓状態/利益を生むやせ礼賛/専門家に騙されるな/他人のふんどしで相撲を取る/コメンテーターは気楽な稼業/テレビはゼネコンである
2 「正義」とは被害者と一緒に騒ぐことではない
新たな事件・事故を防げ/「被害者は神様」が新たな被害を生む/薬害エイズの真相/林眞須美は本当に有罪か/かくて冤罪は繰り返される/必要な実名報道、不要な実名報道/権利にはすべて責任がともなう/名誉毀損を怖れるな
3 「命を大切に」報道が医療を潰す
医療崩壊はなぜ起こったか/刑事と民事を混同するな/司法の領域、医師の領域/どの名医にも「初めての手術」がある/1人の命がなにより大事/ミクロの発想で世の中を語るな
4 元ヤンキーに教育を語らせる愚
有名人が日本を動かす/人気者だけが偉い社会/元ワルはずっとワル/不良礼賛をやめろ/国民の義務もなんのその/ゆとり教育前史/日教組が生んでテレビが育てた/元より少ない授業時間/アジア最下位の英語力/危機感のない子ども/フィンランドのテレビ/学力は親次第/団塊世代に訴える論調/いい学校に行って損はない
5 画面の中に「地方」は存在しない
地方でテレビが強い理由/ばらまきが格差を解消してきた/東京は惜しみなく奪う/「町の声」は東京の声/飲酒運転たたきは田舎いじめ/日本に地方自治はない/飲酒運転が減ると自殺者が増える/高齢者から免許を奪うな/キー局は東京から出て行け
6 自殺報道が自殺をつくる
酒の上の失敗に寛容すぎる/大人の自殺を無視するな/男はつらいよ、女もつらいよ/心の病は恥ずかしいか/アル中に免罪符を与えるな/遺族の終わらない苦しみ/自殺は減らせる/100万人の背中を押すな/報じない方がいいこと/自殺も殺人もきっかけ次第
7 高齢者は日本に存在しないという姿勢
「お年寄り」のイメージ/「水戸黄門」より健康番組/高齢化する社会、幼稚化するテレビ/高齢社会への背信行為/笑いのレベルが低すぎる/施設介護を悪者にするな/在宅介護はできない相談/アルツハイマーは怖くない
8 テレビを精神分析する
許認可事業という特権/感情に訴えるメディア/白と黒しかないという考え方/偉い人は正しく、正しい人は完全?/厳しく倫理を言うけれど/生きにくい人を大量生産/テレビの最大の罪
おわりに

書誌情報

読み仮名 テレビノタイザイ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 208ページ
ISBN 978-4-10-610378-0
C-CODE 0230
整理番号 378
ジャンル マスメディア
定価 814円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2011/03/25

蘊蓄倉庫

やせても健康にはならない

 日がな一日テレビでは、どう見てもやせすぎのタレントが大活躍し、健康番組も情報番組もダイエットの話題でもちきりで、その合間にはやせ関連商品のCMばかり。おかげで日本では老若男女が「やせ強迫」に踊らされています。しかし、やせすぎが健康に悪いことはもちろん、実はやせること自体が健康にいいとは言えません。
 最近、40歳の時点で平均余命がもっとも長いのは、小太りの人であるというデータが発表されました。とくに日本人では、BMI(体格指数)で「太りすぎ」に分類される人たちが一番長生きだという研究結果もあります。「やせ」の人とくらべると、なんと男女ともに6~7年も長生きできるというのです。こうした最新知見を反映させることなく、百年一日のごとく「やせ礼賛」を続けるテレビを、著者は「殺人マシン」と呼んでいます。
掲載:2010年8月25日

担当編集者のひとこと

テレビでは言えないこと

 しごく常識的な、当たり前のことがテレビでは言わせてもらえない、と著者は言います。その「当たり前のこと」とは、データに基づく客観的な判断や、まともな大人なら口にするであろう率直な疑問です。たとえば、テレビでは一件の少年犯罪が起きると、すぐ「少年による重大事件が増えている」と言います(統計上は増えていません)。また、テレビは事件や事故の被害者を一方的に持ち上げますが、被害者は無謬であるという視点だけで、次なる被害を防げるものでしょうか。
 こうした「当たり前のこと」はテレビ以外のメディア、たとえばラジオや新聞、雑誌ならば伝えることができます。さらに、紙幅を費やした書籍であればなおのこと。「当たり前のこと」を言おうとしすぎるために、最近ではテレビの出演依頼が減ったという著者。今だから言える本音を、精神科医、教育関係者、そして二人の娘を持つ父親として吐露した本書は、良識ある大人であれば溜飲が下がること間違いなしの一冊です。

2010/08/25

著者プロフィール

和田秀樹

ワダ・ヒデキ

1960(昭和35)年大阪府生まれ。東京大学医学部卒、精神科医。立命館大学生命科学部特任教授、ルネクリニック東京院院長。長らく老年医学の現場に携わるとともに、大学受験のオーソリティとしても知られる。『70歳が老化の分かれ道』『80歳の壁』など著書多数。

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