まえがき
第一章 もののけはどこから来たか?
1 鬼――鬼は今も生きている
2 天狗――天狗の鼻はなぜ高い?
3 河童――水神はどこから来たか?
第二章 もののけ江戸百鬼夜行
1 累――江戸のサイコホラー
2 小幡小平次――怪談のトップスター
3 玉藻前――アジアに広がる怪
4 化け猫――遊郭に出没する恨み猫
5 見越し入道――もののけの親玉
6 豆腐小僧――子どもが怖い
7 器物の怪――愛品が妖怪に化ける時
第三章 『百物語』のもののけたち
1 『絵本百物語』は妖怪図鑑
2 江戸時代の未確認動物
3 飛縁魔――女性差別ともののけ
4 山地乳――伝説の吸血コウモリ
5 二口女――日本の魔女
6 五位の光――幽霊を食った話
7 夜の楽屋――笑う生首
8 舞首――ゲーム感覚の妖怪
第四章 恐怖の琉球――南国のもののけ奇談
1 アカマタ――魔物の子を宿す
2 キジムナー――日本のエクソシスト
3 キンマモン――海からの来訪神
4 メリマツノカワラ――神女と異神
第五章 もののけ天国・蝦夷地――アイヌともののけ
1 コロボックル――妖精はどこにいる?
2 魔女ウエソヨマ――北国の天孫降臨
3 水の精ミンツチ――半人半獣の謎
終章 もののけと日本人――なぜ怪を求めるのか?
あとがき
主要参考文献一覧
太った美女は妖怪だった!?
起きている時は容姿端麗の美女なのに、いったん寝るとその身体がお座敷一杯にふくらんで、大八車の車輪の音のような大きないびきをあげる……そんな女性の妖怪が本書に出てきます。
名前は「寝肥」(ねぶとり)。
着物をはだけて裸の上半身を見せ、まるで相撲取りのような巨大な体躯を横たえた、若い女性なのです(『絵本百物語』より)。
でも、太った若い女性が、いびきがすごいことで妖怪になるのでしょうか?
そういう女性は昔も今もいそうな気がします。
原田実さんの考証によれば、「寝肥」にまつわる説は多数あるそうです。
「寝惚堕」という病気に罹り寝てばかりいて、家事もせずものぐさな女性。
寝坊が多く、ふしだらな女性。また、色気に乏しく、何事も騒々しく行い、男に愛想をつかされる女性。寝床で男の寝場所を取ってしまうような女性……。各地によってさまざまな説が出てきています。
当時は女性の立ち居振る舞いには相当厳しかったようです。
「寝肥」のような男性はたくさんいたはずなのに、妖怪にはなっていません。
江戸時代にはこうした女性を「もののけ」と見なしていたようですが、この見方は偏見であり、男性優位の社会の産物だったと本書では示唆しています。
もしかしたら、現代では、メタボに罹り、ストレスの多い男性版「寝肥」が現れるかもしれません……。
掲載:2010年8月25日