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講演嫌いの向田さんが亡くなる半年前に行った講演会の模様を収録した貴重な声の記録

言葉が怖い

向田邦子/講演

2,160円(税込)

本の仕様

発売日:2007/08/24

読み仮名 コトバガコワイ
シリーズ名 新潮CD
発行形態 オーディオブック
判型 [1CD]76分
ISBN 978-4-10-830199-3
C-CODE 0895
ジャンル 文学賞受賞作家
価格 2,160円

このごろ言葉がとても怖くなりました。――時に人の心を動かす強力な武器にもなれば、また人を狂わす凶器にもなる言葉。そういう言葉を道具に、ラジオ、テレビ、小説と三つの分野で活躍した向田さんが、言葉の多様な力について語ります。「ほっとする言葉」「にやりとする言葉」「言葉にならない言葉」など、向田さんならではの優れた観察眼でひろい集めたエピソードに興味は尽きません。講演嫌いの向田さんが亡くなる半年前に行った講演会の模様を収録した貴重な声の記録。

著者プロフィール

向田邦子 ムコウダ・クニコ

(1929-1981)1929(昭和4)年、東京生れ。実践女子専門学校(現実践女子大学)卒。人気TV番組「寺内貫太郎一家」「阿修羅のごとく」など数多くの脚本を執筆する。1980年『思い出トランプ』に収録の「花の名前」他2作で直木賞受賞。著書に『父の詫び状』『男どき女どき』など。1981年8月22日、台湾旅行中、飛行機事故で死去。

目次

(1)金属バット事件を起こしたひと言
(2)外国人にとっての言葉の重み
(3)森繁さんの二つの名スピーチ
(4)犬が「日本語」を覚えた話
(5)野生の獣の以心伝心
(6)江戸落語のしゃれたひと言
(7)「とっさのひと言」に思うこと
(8)「馬鹿野郎」も「畜生」もあったほうがいい

向田邦子さんへ。

 向田邦子さんへ。


 あなたを最初に意識したのは、お亡くなりになる前、NHKの連続ドラマ「あ・うん」を観た時でした。平素より映画好きだった私はテレビドラマというものを小馬鹿にしていてほとんどちゃんと観た事がありませんでした。それが「あ・うん」だけは食い入るように観ていました。結果、現在、並みいる邦画の名作を押しのけて「あ・うん」が私の中ではNo.1です。
 どうして子供だった私が「あ・うん」にはまったのか。それは物語の面白さと役者の魅力は勿論、「言葉」が最高に美しかったからです。台詞の全てが美しかった。
「狛犬さん、あ、狛犬さん、うん」がテーマの物語。日本人は言葉を出さなくても分かり合える民族です。だからこそ、ひとたび言葉を発する時は、そこに美しさがないと、人を傷つけてしまうのです。
 あなたは言いました。「言葉が怖い」。日本人の言葉は特に怖いと私は思います。
 私は「あ・うん」を通じてあなたを知りました。そして数年後、落語家になりました。落語家とは言葉を操る仕事です。師匠の談志は相当乱暴な言葉を吐きます。世間はそれをただ「毒舌」だけで片付けてしまいますが、談志には人間としての品があるのです。だからあれだけ乱暴な言葉を言っても大勢の人に愛されてきました。
 私は言葉には「美しさ」と「品」が大切であるということを、あなたと師匠に教わったのです。
 落語家として順風満帆とまではいかないまでもそこそこ世間から評価されるまでにいたりました。正直に言うと、その間、ずっとあなたの存在が頭の中にあったわけではありません。それがある時、ふと「あ・うん」のことを思いだしたのです。その頃、私は劇団を主宰していて演出と役者の両方をやっていました。急激に「あ・うん」を舞台でやりたいと思ってしまったのです。今ならばあの美しい「言葉」の世界を表現出来るのでは……。
 そして妹の和子さんに許可をいただき、キャパ100人という小さな小屋で「あ・うん」を上演しました。向田作品がこんなちっぽけな小屋で上演されるなんて初めてのことです。私の役は門倉修造。私の劇団は私を含めて下手な役者ばかりです。でもあなたへの愛情がテクニックを凌駕し、芝居は大成功。
 志らく、落語家生活20年目の出来事でした。
 そして次の年、あなたが亡くなって25年、和子さんがプロデューサーになってくれて「あ・うん」を再演することになりました。役者は私の劇団からではなく、最高のプロの役者を集めました。水田に朝倉伸二、たみは北原佐和子、君子は高橋かおり。ちゃっかり私だけまた門倉を演じたのですがね。
 この再演も大成功でした。芝居なんかまず褒めない談志が「面白い。もっと威張っていいぞ」と言ってくれました。
 千秋楽のカーテンコールで私は泣きました。それはあなたの美しい「言葉」の世界を表現できた喜びと、もうひとつ、客席の後ろの方で「良かったわ」と手を叩いてくれていたあなたが私には見えたからです。
 ありがとう。
 私に言葉の大切さを教えてくれてありがとう。
 私に「あ・うん」を表現させてくれてありがとう。
 そして、あちらの世界からわざわざ舞台を観にきてくれてありがとう。
立川志らく

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