新潮新書


民主党―野望と野合のメカニズム―
伊藤惇夫

彼らは一体、何者なのか? 新党ブームのなかで、なぜ彼らだけ生き残れたのか? なぜ代表が次々クビになるのか? なぜ小沢一郎が絶対的権力者になったのか? なぜ左と右が共存していられるのか? 資金源、実力、弱点は? かつて事務局長を務めた政治アナリストが意外と知られていない歴史、人脈、選挙、政策を総点検。結成十年で自民党と肩を並べるまでになった民主党の仕組みを明らかにする、有権者必携の一冊。

ISBN:978-4-10-610290-5 発売日:2008/11/17

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民主党―野望と野合のメカニズム―



 まえがき

 なぜ民主党だけが生き残ったのか。
 1992年5月、細川護熙の「日本新党」結成によって幕が開いた「新党の時代」は、2003年9月の民主党と自由党の合併によって、ひとまず(?)終焉を迎えた。カウントの仕方にもよるが、政党交付金欲しさだけでつくった「偽装政党」や、目まぐるしいほどの合従連衡の中で、ほんの数ヶ月だけ存在したインスタント政党、あるいは行き場を失った少数派が肩を寄せ合うためにつくった「ダンボール・ハウス」のような政党まで含めると、この間に誕生した新党は30余。民政党、国民の声、黎明クラブにフロムファイブ……。おそらく政界関係者でも、すべての党名を記憶しているものは皆無だろう。それこそ数え切れないほどの新党が、ほんの10年余の間に、生まれては消えていった。そんな中で、それこそ「奇跡的」に生き残った唯一の新党がある。
 それが民主党である。
 冒頭の問いを再度、細かく設定し直すとこうなるだろう。
 なぜ、民主党という政党が誕生したのか。他の新党が誕生と消滅、分裂と合流を繰り返すなかで結局は消え去っていったのに、どうして民主党は合併を繰り返しつつ、ただ一つの生き残り政党となったのか。あるいは他の政党が挑んでは撥ね返されてきた、自由民主党という分厚い壁に、はじめて「風穴」(2007年参院選での与野党逆転)らしきものを開けられた理由は何なのか。
 絶対的存在であるかに見えた自民党が明らかに劣化しつつあるなか、実現するかどうか、それどころかいつまで政党として存在し続けるかもわからないが、もしかしたら民主党は政権政党に、あるいは新たな政権の枠組みの中で主役を担う存在になるかもしれない。にもかかわらず、意外に知られていないか、あるいは忘れ去られているのが民主党の歩みと、その素顔ではあるまいか。
 小沢一郎、菅直人、鳩山由紀夫……。代表的な顔ぶれはそれなりに知名度もあるが、それ以外のメンバーに関しては、どういう生まれ育ちで、思想的な背景や国家の基本政策に対するスタンスはどうなのか。あるいは各グループの構成メンバー、党内の勢力図がどのような状況にあり、それらは自民党の派閥とどう違うのか、といった点に関して、一般の国民の大半は、つい最近まで知識も関心もなかったはずである。だが、2007年参議院選挙での与野党逆転をきっかけにして、政界は一挙に流動化した。
「大連立騒動」によって、再び迷走状態に陥りかけた民主党だったが、なんとか態勢の立て直しに成功する一方、自民党というチャンピオンに挑戦を続ける「格下のチャレンジャー」という立場から脱却し、今や堂々と王座を争うまでの存在となったのである。
 これまで、政界は常に自民党という軸を中心に回ってきた。仮に自民党を自らが光を発する「恒星」だとすれば、旧社会党や新進党を始めとする他の政党群はすべて、その光を反射することによってのみ存在を示すことができる「惑星」に過ぎなかったのではないか。だが、どうやら民主党はそこから脱して、自ら光を発する星になりつつあるようだ。
 政権交代、大連立、政界再編――。この先数年、政局がどのように動くのか、何が起きるかは当事者さえ予測がつかない。だが、その“何か”が起こるとき、そこに必ず主役の一方として登場するのが民主党であることだけは間違いない。ならば、この際、民主党という政党をじっくり見極めておくべきだろう。
 なにしろ、この先の国家の進路、国民生活の未来を委ねる存在になるかもしれない集団なのだから。

 ちなみに筆者は1998年4月の新民主党結成時、民政党から合流して以降、約4年にわたって民主党の事務局長を務めた人間である。にもかかわらず、いまだに「民主党って、どんな政党?」と聞かれると、簡潔に、しかも明快に答えられない、というのが正直なところだ。華々しいはずの新民主党の結成大会で、ある種の危惧と不安を感じていた記憶は今も消えていない。果たして民主党は本当の意味での「責任政党」に成長したのか、この国を任せても大丈夫か……。というわけで、自分自身の答え探しも含めつつ、「民主党・解体新書」に挑戦してみた。それが本書である。
 本書の構成としては、まず歴史を俯瞰し、その後、代表選、人脈、政策、選挙という項目ごとに分析を進めた。いくつかの箇所で記述が重なるが、どこから読んでもその項目について一定の理解が得やすいようにと考えて、あえてそのようにしたことをご了解いただきたい。

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