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イスラムの人はなぜ日本を尊敬するのか

宮田律/著

792円(税込)

発売日:2013/09/14

  • 新書
  • 電子書籍あり

世界はだいたい日本の味方! 義理、人情、アニメ、マンガ、皇室、日露戦争。愛される理由とは?

イスラムを過剰に怖れる必要はない。私たちが思っている以上に、日本人は尊敬されているのだ。日本は理想的社会と見られ、アニメやマンガも引っ張りだこ。礼儀正しさや義理、人情といった美風に強い関心と共感を持っているのだ。欧米の植民地主義に屈せず独立を守った日本の歴史や皇室の伝統への、ムスリムの畏敬の念を紹介し、その良好な対日感情をどう国益に結びつけるかを論じる。日本人のためのイスラム入門。

目次
はじめに
第1章 イスラムの人々は義理・人情がお好き
日本と共通するメンタリティ/ネットで日本のポップカルチャーに接する若者たち/ドバイにある紀伊國屋書店の最大店舗/ドバイの「マンガ寿司」/日本をライバル視する中東のサッカー/柔道で中東に貢献/茶室をつくったアブダビの皇太子/和太鼓も人気/世界の安全保障に寄与する日本文化
第2章 イスラム世界で接した親日感情
日本とアフガニスタンは独立記念日が同じ?/アフガン支援を止めなかった中村医師/イラン人の親日感情/イランと日本の共通点/日本の中のペルシア文化/特別な友好関係にある日本とトルコ/イスタンブールの「乃木通り」「東郷通り」/旧ソ連イスラム系諸国でも
第3章 歴史の中で醸成された親日的心情
日土友好の礎となったトルコ軍艦救助/日露戦争勝利へ畏敬の念/日本での布教の先駆者たち/日本軍勝利に狂喜したエジプト国王/ヒロシマ・ナガサキへの同情/インドネシア独立戦争に参加した旧日本兵たち/ウズベキスタンで賞賛される抑留者たち/アルジェリア独立と気骨ある衆議院議員/イランにタンカーを送り込んだ出光/サウジ国王と直談判した「アラビア太郎」/先進国で初めてバングラデシュを国家承認/東南アジア諸国で圧倒的に高い親日感情/トルコ、エジプトでも高い好感度/「帰らないで」デモが起こった自衛隊サマーワ活動/弱者を救済する日本
第4章 イスラムは暴力的な宗教か?
理想とされたイスラム共同体による統治/異教徒に対するイスラム帝国の行政/「イスラムの家」と「戦争の家」/十字軍──歪曲されたイメージの始まり/オスマン帝国──キリスト教世界への重大な脅威/イスラムとヨーロッパの相克/「ジハード」の起源/暴力行使を容認したハワーリジュ派/中世のイスラム過激思想家/アラビア半島の復古運動ワッハーブ/ナショナリズムに抗する汎イスラム主義/現代における改革運動としてのイスラム/イスラム過激派への評価とアルジェリア事件/「サダム・フセインは地獄に行きます」/「アラブの春」、その後
第5章 遊牧民のもてなし文化
人懐っこく、気さくなムスリムたち/もてなしの原点、キャラバンサライ/イラン人の親切は家族を大切にする気持ちから
第6章 日本への注文
対イラン政策への提言/ソフトパワー行使の必要性/イスラムの習慣に不慣れな日本人/お昼寝・ハラール料理・土葬/日本への期待
第7章 中国、韓国との競合
最大のライバル・中国/サウジと中国との蜜月/メガ・プロジェクトに続々と参入する韓国/日本にしかない最強のカード「皇室」
おわりに

書誌情報

読み仮名 イスラムノヒトハナゼニホンヲソンケイスルノカ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 224ページ
ISBN 978-4-10-610536-4
C-CODE 0222
整理番号 536
ジャンル 社会学、地理・地域研究
定価 792円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2014/03/21

蘊蓄倉庫

「チャランポラン」はペルシアから

 シルクロードを伝わって、日本にイランの文化が流れ込んでいるようです。松本清張は古代日本にイラン人がやってきたことがあるのではないかという仮説を立てています。その証拠のひとつとされているのが、奈良のお水取り。松本のいう通り、ゾロアスター教の火に対する信仰がそこに現われているのかもしれません。「フルーツ・ポンチ」の「ポンチ」も、「チャランポラン」もペルシア語起源という話など、中東と日本の意外な結びつきについて知りたい方は、本書をぜひお手に取って下さい。
掲載:2013年9月25日

担当編集者のひとこと

ぜんぜん怖くありません

 僕は遺跡を見るのが好きで、それで中東にときどき見物に行くのですが、そういう身からすると、この本を編集しているときの周囲の反応は意外なものでした。「イスラム教徒ってなんか怖いし、日本人なんか敵視しているんじゃないか」。ところが、西アジアでも北アフリカでも東南アジアでも、行ったことのある日本人なら誰でも知っている通り、われわれは、日本人であるだけで、基本、かなりの好感度で現地の人から受け入れられます。ヨーロッパ人やアメリカ人よりも、韓国人や中国人よりも……。
「ジャパニ、まあ茶でも飲んでいけ」、少し前なら「ナカダという選手はすごいな」、最近なら「カガワ、プレミアリーグでも活躍するといいな」とか。「アメリカは、ヒロシマ、ナガサキでひどいことをしたな」……こんな同情をされたこともあります。日本人=お金持ちという印象が世界中に定着しているので、お土産屋ならなにか売ろうという下心から、ということもないことはないのですが、それを差し引いてみても、日本に対するイメージは良いことを実感できる機会は多いと思います。その理由はなにか。
 お互い遠いので、ケンカすることがあまりなかったことも一因でしょう。しかし、それだけではないのです。面白いことにイスラム世界には日本の義理人情に似た心情があるそうです。また、サウジアラビアのテレビ番組では日本は理想的社会と見られ、東南アジアではアニメやマンガも引っ張りだことか。本書は、欧米の植民地主義に屈せず独立を守った日本の歴史や皇室の伝統へのムスリムの畏敬の念を紹介し、その良好な対日感情をどう国益に結びつけるかを論じる、日本人のためのイスラム入門です。

2013/09/25

著者プロフィール

宮田律

ミヤタ・オサム

1955(昭和30)年山梨県生まれ。現代イスラム研究センター理事長。1983年、慶應大学大学院文学研究科史学専攻修了。UCLA大学院修士課程(歴史学)修了。専門は現代イスラム政治研究、イラン政治史。『現代イスラムの潮流』『中東 迷走の百年史』など著書多数。

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