今月の表紙の筆蹟は、俵 万智さん。
波 2025年11月号
(毎月27日発売)
| 発売日 | 2025/10/28 |
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| JANコード | 4910068231154 |
| 定価 | 100円(税込) |
筒井康隆/おれ シリーズ第28回
阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第98回
【俵 万智『生きる言葉』(新潮選書)10万部突破記念】
[エッセイ]俵 万智/今日を「生きる言葉」
【いしいしんじ『チェロ湖』刊行記念特集】
武田裕藝/命そのものの再現
いしいしんじ/三枚の黒い円盤
【漫画『家守綺譚』刊行記念 第二弾】
[対談]近藤ようこ×梨木香歩/やさしく、きびしく、しあわせな仕事でした
リチャード・パワーズ、木原善彦 訳『プレイグラウンド』
伊与原 新/生命はみな遊ぶ
中島京子『水は動かず芹の中』
高野秀行/河童の見た「秀吉の朝鮮出兵」
君嶋彼方『だから夜は明るい』
ガクヅケ 木田/結ばれても、結ばれなくても、特別
リチャード・レイン、浅野秀剛、芸術新潮編集部 編『蔦屋重三郎のエロチカ 歌麿の春画と吉原』(とんぼの本)
平賀弦也/春画研究を拓いたR・レインさんのこと
石原伸晃、石原良純、石原宏高、石原延啓『石原家の兄弟』
檀 ふみ/私の夢想を実現した四兄弟
笠谷和比古『論争 大坂の陣』(新潮選書)
山内昌之/抗戦派・豊臣秀頼の面目
三枝昂之『百年の短歌』(新潮選書)
永田和宏/視線の余裕がもたらす歌の豊穣
【「波」名対談撰】
[再録対談]大江健三郎×筒井康隆/小説についての幸福な夢想
【エッセイ】
バッキー井上/投げたコインはどっちも表。
鰻 和弘(銀シャリ・漫才師)/アースヒューマンになりたい 後編
【特別掲載】
文学フリマ出品ZINE「Ozine」より
【追悼 香山二三郎さん】
西上心太/ただただ悲しい
【特別掲載 阿刀田 高『90歳、男のひとり暮らし』(新潮選書)採録】
些細なれども日常の+と-
会いたいなあ、あの人に
【私の好きな新潮文庫】
鳩山郁子/小さなものと大きなもの
稲垣足穂『一千一秒物語』
マンスフィールド、安藤一郎 訳『マンスフィールド短編集』
福永武彦『夢みる少年の昼と夜』(電子書籍)
【今月の新潮文庫】
橋本長道『銀将の奇跡─覇王の譜2─』
西上心太/将棋小説の最高峰がここにある
【コラム】
[とんぼの本]編集室だより
吉川圭三『人間・明石家さんま』(新潮新書)
吉川圭三/私の人生を狂わせた愛しき怪物たち
小澤 實/俳句と職業
【連載】
下重暁子/九十歳、それがどうした 第6回
古市憲寿/絶対に挫折しない教養入門 第3回
椎名 誠/こんな友だちがいた 第15回
中村うさぎ/老後破産の女王 第20回
大木 毅/錯誤の波濤 海軍士官たちの太平洋戦争 第8回
内田 樹/カミュ論 第33回
編輯後記 いま話題の本 新刊案内 編集長から
立ち読み
編集長から
今月の表紙の筆蹟は、俵 万智さん。
◎ブルガーコフ『巨匠とマルガリータ』(石井信介訳新潮文庫)は、スターリン独裁下で繰り広げられる悪魔とその手下たちのドタバタ的バーレスクが素敵に面白く徹宵読み。狂騒のすぐ裏側には監視国家批判と自由への希求が逬り、凄味があります。検閲のため、発表できたのは作者の没後二六年も経った1966年のこと。翌年には英訳され、マリアンヌ・フェイスフルがこの本を恋人ミック・ジャガーに薦めたことからストーンズの「悪魔を憐れむ歌」が生まれたのは有名なエピソード。
◎あの名曲は『巨匠~』の悪魔同様、人類史上の様々な殺戮に立ち会ってきた者の視点で歌われます。彼は、『巨匠~』でも重要な登場人物だったキリスト磔刑の首謀者ピラトの傍にもいたし、ケネディ暗殺にも関わって……。“Who killed Kennedy?”という当初の歌詞は、レコーディング中に起きたJFKの弟ロバート暗殺を受け、末尾が“the Kennedys?”に変更されました。こういうはしこさが全盛期ストーンズの真骨頂。
◎「ロバート・ケネディが銃撃されたのは、二日前の夜である。(略)彼もまた亡くなった。そういうものだ」と書いたのはヴォネガット。この『スローターハウス5』(伊藤典夫訳)での“Soitgoes(そういうものだ)”のリフレインは人間が繰り返す蛮行への怒りと無常観が綯交ぜになって感動的。そしてこの小説は米国の幾つもの州の図書館や学校で禁書となります。映画「フットルース」では牧師がこの本を燃やそうとするのへ主人公が反発していました。そんな焚書に抗う最高の台詞を『巨匠~』の悪魔は不遇な作家である「巨匠」に向って口にします。曰く「原稿は燃えないのです」。発表の当てもなく死ぬ迄あの長篇を書き続けたブルガーコフ、畢生の名文句。
▽次号の刊行は十一月二十七日です。
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雑誌から生まれた本
波とは?

1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。
創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。
創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。
現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。






































