Special 97歳、元小誌顧問・河盛好蔵氏逝く
3月27日、河盛好蔵氏が死去した。享年97歳。小誌新年号のアンケート〈20世紀の一冊〉で、堀口大学の訳詩集「月下の一群」を挙げ、その出会いに今世紀の到来をまざまざと感じたこと、そして文学の基本は詩にあることを、衰えを知らぬ若々しい情熱をこめて寄稿されたのがついこのあいだ、脳梗塞を克服し、95歳で母校京都大学の博士号を得、小誌連載「藤村のパリ」では読売文学賞を受賞するなど、生涯現役をとおした文壇最長老筆者の大往生であった。
氏の烈々たる文学への気迫を偲んで、次号は安岡章太郎・清岡卓行両氏の対談、庄野潤三氏ほかのエッセイによる追悼特集を組む予定だが、氏が戦後まもない時期、復刊したばかりの小誌の顧問として、縦横の活躍をされたことは、今も語り草となっている。当時の目次からその一端を紹介すると、三好達治「なつかしい日本」、坂口安吾「堕落論」、林達夫「反語的精神」、アラン「芸術百一話」等々、それまでの文壇雑誌の殻を脱して、広く知識人一般にアピールする編集内容になっていることが、特に注目される。小誌と他の文芸誌との顕著な相違が、そこにあることは今も変らない。いつもまっさきに「新潮」に目を通し、お訪ねするたび、われわれを叱咤激励してくださった大先輩に、厚い感謝を捧げたい。
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