特別定価900円 8月7日発売 小説の手ごたえ ──吉村昭vs.山田詠美 も闇討ちにされた青年が、仇を追って全国各地を探索し、 八年後なんと鴎外の小説と同じ神田護持院ケ原で本懐を 遂げるまでを、史実に忠実に、練達の筆に描いた秀作。 一方、山田詠美氏「MENU」一〇〇枚は、母の自殺後 伯父一家に引き取られて成長した「ぼく」と、従兄妹と の奇妙な官能の交遊を通して、聖と俗、幸と不幸の通念 を根本から揺さぶる野心作。作者も作品も性格はこれほ ど異なるのに、共に手ごたえは確かで、同じ目次に並ん で少しも不思議でないのが、文学というものの懐の深さ でしょう。 ほかに短篇が松村栄子氏。評論は小田実氏による 「『文(ロゴス)』と『アンガジュマン』」一二〇枚。 エッセイが中薗英助、川村二郎氏。「21世紀への対話 芸術と宇宙原理」は横尾忠則・建畠皙氏。好評をいただ いた河野多恵子氏「秘事」と、津島佑子氏「笑いオオカ ミ」の二連載は、今号で完結します。
■年間講読料一〇八〇〇円(12冊 税・発送費込) |