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終わりなき対話
「新潮」5月特大号
特別定価950円
4月7日発売


◎柳美里氏が朝日新聞に連載していた長編作品「8月の果て」が、3月16日、第527回を最後に突如打切られた。著者自らのルーツを辿り、日本占領下の韓国に生きた無数の〈魂〉たちを幻視する著者渾身の力作である。今号では、未発表の完結部(前篇)を急遽掲載する。後篇は6月7日発売の小誌7月号に掲載予定。
◎島田雅彦氏の三部作〈無限カノン〉は、皇室に嫁ぐことになる女性と、恋と音楽の遺伝子に導かれた青年との恋の物語。この三部作をめぐり、昨年小誌において、福田和也氏と島田氏の間で論争が展開された。「なぜ島田氏は、このような『恋』を書かなければならなかったのか」(福田氏)。「君は恋の未練や恋の恨みというものを甘く見てはいまいか」(島田氏)。両者の議論を再読し、ここには小説家と批評家の真摯で苛烈な対話が生起したことをあらためて確信した。今号ではお二人に、論争以降はじめて語り合っていただく。
◎気鋭作家三人の力作を掲載する。中村文則氏「悪意の手記」、緒形圭子氏「銀葉カエデの丘」そして佐藤友哉氏「大洪水の小さな家」。
◎加島祥造氏の自伝的長編「南京町の捕鯨者たち」からは、一九五〇~六〇年代の横浜チャイナタウンがいかに猥雑で魅力的な〈コスモポリス〉であったかが生々しく伝わってくる。今書き残しておかなくては世界から失われてしまう〈街と人の記憶〉がここにある。
(編集長・矢野優)
■年間講読料一〇八〇〇円(12冊 税・発送費込)