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物質と言語の対話

「新潮」4月号
定価900円
3月7日発売


◎一見、建築と文学は遠い。だが歴史のダイナミズムから否応なく影響を受け、時代精神を曝け出すという点においては同じなのだ。確かに一方は巨大な物質を扱い、他方は無形の言語を扱う。だがむしろ、差異こそが両者の本質的な対話を可能にする。国際的建築家・磯崎新氏と文芸批評家・福田和也氏の対話は『空間の行間』(筑摩書房)を経て、小誌に“飛び火”した。議論は縦横無尽に移動し、文化的グローバリゼーションへの、国際でも国粋でもない抵抗が模索された◎昨年末、『遮光』で野間文芸新人賞を獲得した中村文則氏が中篇『土の中の子供』を発表。デビュー以来、執拗に追及される〈生への違和感〉がより強度を増し、作家の成長が確信される◎前号から開始した村上春樹氏の新連作〈東京奇譚集〉には読者からの強い反響が寄せられた。最新作のタイトル「ハナレイ・ベイ」とはハワイの名湾。ではなぜ〈東京奇譚集〉なのか……それは御一読を!
(編集長・矢野優)