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高村薫氏の〈現代〉
「新潮」10月号
定価900円
9月7日発売



◎高村薫氏に注目していた。とりわけ最近の連作長篇『晴子情歌』『新リア王』に。日本推理サスペンス大賞でデビューし、直木賞作家である高村氏は壮大重厚な作風で知られるが、この連作での高村氏はジャンルの区分など知ったことかと言わんばかりに、大胆に選択された叙述形式(書簡体、対話体)により、政治・宗教・血縁という極めて重いテーマを執拗に思考し、追求した。それは誤解を恐れずに記せば、「過剰」と言いたいほどの徹底ぶりだった。今月号より、平成の現代を舞台にした連作第三部「太陽を曳く馬」を新連載として小誌読者にお届けする。〈現代〉は本作の舞台であるだけでない。主題そのものだ◎吉村昭氏が7月31日、79歳で逝去された。代表作のひとつである長篇「戦艦武蔵」(昭和41年)を一挙掲載されて以降、幾度も小誌に御登場いただいた。遺作として掲載する「死顔」はまさに〈死〉を驚くべき率直さで直視した作品だ。
(編集長・矢野 優)