| 波 2006年12月号より |
宮脇 昭『木を植えよ!』 岸井成格
ブループラネット賞を受賞した宮脇昭先生の待望の「森」の本が出版された。世界と日本で三千万本以上の植林、植樹を指導されてきた宮脇先生の「本物の森づくり」の哲学と理論が分かりやすく展開されている。 私は先生の指導の下に設立された植林のNPO法人「森びとプロジェクト委員会」の理事長になり、全国の仲間とともに日本の公害の原点といわれる足尾銅山の不毛の跡地と、八幡平の松尾鉱山跡地での植林活動にたずさわってきた。この先何年かかるか分からない息の長いプロジェクトになる。 先生は「不毛といわれる厳しい環境の中で成功してこそ、どこにでも本物の森をつくることができる。これからは山だけでなく市街地で多くの森づくりを進めなければならない。森こそが命の源泉だからだ」と、環境破壊への危機感をバネに精力的に現地指導にあたっている。私たちは先生をひそかに「植林の小さな巨人」と呼んでいる。あの小さな体で、どこからあれだけの情熱とエネルギーが湧いてくるのか感嘆するばかりだ。 私たちの活動はドングリを集めることから始まり、ドングリの選別、苗床づくり、腐葉土など良質の土づくり、そしてようやく植林、植樹になる。その間は、モグラ、ネズミ、リス、鹿などの“食害”対策に追われ、全てが厳しい自然との闘いであり共生だ。 「生物はみんな生きることに必死なんだ。ドングリだって、小さな苗木だって生きるために全力を尽している。その必死な思いに答える植林、植樹でなければ本物の森は育たない」と、私たちのチョットした“手抜き”や“慢心”も決して許さない。 将来を見据えて、優秀なインストラクターの養成や、さまざまな思いを込めた「親子教室」の開催も同時に進めている。 『木を植えよ!』は、日本の「鎮守の森」の成り立ちから、森が持つ本来の姿を説き明かして行く構成だ。自然破壊のすさまじい実態や、戦後日本の針葉樹中心の植林事業の功罪から、森づくりの基本は、「その土地に最も適した樹木を選ぶこと」、そして中心になる「土地本来の主木の樹種を選択すること」だという。 さまざまな樹種を混ぜる中で、自然に主役と脇役が育つことを「潜在自然植生」と呼び、先生は「潜在自然植生は、それぞれの土地の条件によって異なるので、まずそれを見極めることが大事になる」と説いている。 そのことは第七章「森のつくり方」で、「生物社会でも、本物は長持ちします。どれほど格好がよく、早く育って、きれいな花が咲いて一時的に繁茂しても、ニセモノは一般には長持ちしません」と、植林、植樹の“大原則”を示している。 ドングリの選び方から樹種の見分け方、そして具体的な植林、植樹の実践的な手引き書にもなっている。 (きしい・しげただ 毎日新聞特別編集委員)
|