新潮新書


オタクはすでに死んでいる
岡田斗司夫

テレビの企画で、いまどきのオタクたちに対面した著者が覚えた奇妙な違和感。そこから導き出された結論は「オタクはすでに死んでいる」だった。小さな違和感から始まった思索の旅はやがて社会全体の病にまで辿り着く。日本人はなぜ皆、コドモになってしまったのか。自由自在に飛び跳ねる思考の離れ業のダイナミズムを堪能出来る一冊。

ISBN:978-4-10-610258-5 発売日:2008/04/16

編集者のことば 立ち読み 書評

714円(定価) 購入

波 2008年5月号より

一億総コドモ社会とオタク
岡田斗司夫


 オタクは死んだ。
 僕がそんなふうに言い切ると、こんな怒りの声が飛んできそうだ。
「ケッ、ダイエットがうまくいって、脱デブに成功したからって、今度は脱オタクかよ。調子に乗るんじゃねえ」
 確かに僕は一昨年からダイエットを始めて五〇キロの減量に成功した。その経験と自分で考案した「レコーディング・ダイエット」のノウハウをまとめた『いつまでもデブと思うなよ』を、昨年刊行したところ、おかげさまで予想以上に多くの方に読んでいただけた。
 でも、それで調子に乗って「脱オタク」を宣言したわけではない。僕が「オタクの死」について最初に語ったのは二〇〇六年。「オタク・イズ・デッド」というタイトルで開いたトーク・イベントでのことだった。つまりデブ時代の話なのだ。
「だからどうだっていうんだ。大体、オタクなんて奴らが生きようが死のうが知ったことか」
 今度はそんなふうに言われるかもしれない。
 でも、実は死んだのはオタクだけではない。オタクの死は、「昭和の死」も意味しているのだ。もう少し詳しく言うと、戦後の日本に存在していた「高度消費社会」と「勤勉な国民性」の両方が失われたということだ、と僕は考えている。「失われた」というと否定的すぎるかもしれない。日本人は昭和の次のステージに入ってしまった、と言ってもいいだろう。これは世界中の誰も経験したことがないステージだ。
 その結果、どんなことになっているか。日本人全体がコドモになってしまった。「大人になるのは損だ」と思う人だらけになってしまった。一億総コドモ化が進んでしまったのだ。
 学校ですぐにキレる親、医者を吊し上げる患者。
 店員を怒鳴る客、病的なクレーマー。
 責任者に土下座させないと納得しないマスコミ。
 これらが僕達自身、または、すぐ隣にいる「平均的日本人」の姿になったのである。
 それゆえに「大人の見識」を学ぼうとする人がたくさんいるのだ。そう、身についていないから本で学ばざるを得ないのである。
 だからといって「昔はよかった」式の話をするつもりはまったくない。ただ、日本中がこうなっている、ということは認識すべきだというだけである。
 さて、今度はこんなふうに言われるかもしれない。
「日本人が変わってきたことには思い当たるけれども、そのことと、オタクと何の関係があるっていうんだよ」
 なぜオタクの死が、昭和の死でもあり、一億総コドモ社会を生み出したのか。その詳細はこの行数にダイエットして書くことはとても無理だ。
 本論については本書をお読みいただきたい。

(おかだ・としお 評論家)


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