女による女のためのR-18文学賞

新潮社

第25回 受賞作品

王冠ロゴ 友近賞受賞

「曇る母へ」

白木(しろき)

――この度は受賞おめでとうございます。受賞の知らせはどのように受け止められましたか。

 電話を受けた直後は、あまり現実感がなくてふわふわとした感覚でした。その後、嬉しさと悔しさが両方こみあげてきて。もちろん友近賞に選んでいただけてとても光栄で嬉しかったのですが、窪美澄さんのデビュー作『ふがいない僕は空を見た』を読んでこの賞を知ったということもあり、大賞にも選んでいただけていたらな、と悔しい気持ちがありました。
 でも、第18回の友近賞を受賞された千加野あいさんの『どうしようもなくさみしい夜に』を受賞後に読んだら、とても素晴らしくて「千加野さんと同じ賞をいただけたってことは、自分も夢だった小説家になり、本を出すための舞台に立てたんだ」と実感できました。「小説新潮」の編集者の方にも「デビュー作を出せるよう頑張りましょう」と励ましてもらったこともあり、日を追うごとに実感が湧いて、嬉しさだけが増していきましたね。あとはずっと大阪在住でお笑いファンなので、友近さんを一生推そうと決意しました!

――周囲の反応はいかがでしたか?

 友人や職場の同僚、この賞を知っている知り合いなど、「すごいことだよ」ととても喜んでくれました。昨日がちょうど「小説新潮」の発売日だったので「買ったよ」とたくさんLINEをもらい、お祝いの会も開いてもらいます。あとは「泣きながら読んだ」とか「自分の親を大事にしようと思った」とかいろんな感想をもらえて、本当に書いてよかったと思っています。

――小説の執筆はいつ頃始められたのでしょう。

 書き始めたのは、2、3年前からです。年を重ねて小説を手に取る機会が自然と増え、今まで気になっていた太宰治の『人間失格』や村田沙耶香さんの『コンビニ人間』を読んでみました。ともすれば暗いと感じる人もいる作品だと思うのですが、私には「これは自分の話やな」と思えたんです。「なんで生きてるんかな」「生きづらいな」みたいな気持ちは子どもの頃からわりとずっとあって、でも同時に、こんな感情は人に言ってはいけないとも思っていました。でも、小説には自然とそんな感情が書かれていて、またそれらが名作としてたくさんの人に読まれていることに「自分はひとりじゃない」と感じられた。それが自分も物語を書く強い動機になりました。けれど、まさか30代半ばでできた夢がこんな形で叶うとは思いもしなかったです。

――賞へ応募されようと思ったのはいつ頃でしたか。

 書き始めて半年後くらいだったと思います。最初に応募したのは新潮新人賞だったんですが、それが一次選考を通過したんです。「もしかしたら、書き続ければ評価が得られるかも」と思い、そこから作品を書いては投稿するようになりました。
 ちょうど同じ頃に、窪美澄さんのデビュー作を読み「当時、新人でこれを書いたのか……!」と衝撃を受けました。どんな作家さんなんだろうと著者プロフィールを確認して、R-18文学賞の存在を知ったんです。最終候補に残ったと聞いたときも「審査員の方に読んでもらえるってことですか!?」と電話口でわざわざ確認したくらい、窪さんに読んでもらえるというのは自分の中で大きかったです。  

――受賞作「曇る母へ」は、母娘のリアルな関係性を描いた作品ですが、どのようなきっかけで執筆されたのでしょうか。

 心理学の本で「子どもがネガティブな感情を持ってしまう理由の大半は、親からの愛情不足」と読んだことがあり、違和感を持ったのがきっかけです。たとえば子どもは学校のこと、親はお金や仕事、病気、親戚づきあい……というように、それぞれがいろんな問題を抱えていて、それによって親子の関係が変わってしまうこともある。そういう親と子の、微妙な関係性を言葉にしたい、たとえどうなっても互いを思ってきたならどうか親も子も自分を責めないでほしいし、関係を大切にしてほしい。そういう思いで、自分の経験も下敷きにしつつ物語をつくりました。

――これまでどのような本を読まれてきましたか。

 子どもの頃は、本よりテレビやゲームのほうが好きでした(笑)。でも読書家の父にすすめられたサン=テグジュペリの『星の王子さま』や夏目漱石の『こころ』、これまた父親がドラマを観ながら毎回号泣していた『アルジャーノンに花束を』(ダニエル・キイス著)は中高生のときに読んで印象に残っている作品です。大人になってからは、小説より心理学やメンタルに関する本などを読むことが多かったのですが、今は現代作家の小説をよく読みます。川上未映子さんの『夏物語』と宇佐見りんさんの『くるまの娘』はもはや座右の書といえるくらい好きです。どちらも子どもや家族がテーマの作品で、自分の小説でも家族は今後も大事なテーマになっていくのかなと思っています。あとは宮島未奈さんの「成瀬あかり」シリーズも、大好きなM-1やミルクボーイが登場したり、宮島さんや成瀬と同じ大学出身だったりで、共感できる部分が多かったですね。ほかにも西加奈子さん、辻村深月さん、村田沙耶香さん、今村夏子さん……好きな作家さんは挙げきれません!

――これから、どのように創作の道を歩んでいきたいですか。

 たくさんの人に、「自分はひとりじゃない」と感じてもらえるようなものを書いていきたいです。いろんなテーマに挑戦できたらと思っていますが、通底するのは「切実な感情」だと思っています。私自身が小説を読むようになって救われたのと同じように、しんどいけど明日も生きてみようかなと読んだ人に思ってもらえるような作品が書けたら、これ以上の喜びはありません。