第25回受賞作品
受賞の言葉
友近賞受賞
受賞の言葉
私の怪物と暗い部屋のあなた
趣味で始めた小説を書いていると最近、書く前には想像しなかった得体の知れない、手の付けられない怪物のようななにかに出会うことがあります。それはグロテスクな色かたちでほとんど他人の目に触れず、けれどその奇妙な自己の拡張には他にはない快感があります。
ただ尊敬するある小説家の方は以前、「自己を客観的に切り離さなければ小説は書けない」という趣旨のことを仰っていました。私はそれを勝手に、「自分のなかの怪物を操縦できるよう手なずける」ことだと理解しました。
今回の作品は、読む方によっては「暗い」という印象になるかもしれません。それでもこれは多くの方に起こりうる、現実の「あなた」の話として私は書きました。
そして私は怪物に乗りながら、ひとり暗い部屋の角に三角座りをしているあなたに読んでもらえるような、あわよくばそういう小説家になりたい。今回多くの方の目に触れ、感想をいただくことで改めてそう強く感じています。
最後になりますが、選考にかかわってくださったすべての方々、賞に選んでいただいた友近さま、本当にありがとうございました。
これを書いている今、母と何度も見に行った大阪の造幣局の桜が少しずつ蕾をつけ始めています。
