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誰にだって、「迷う時」がある。“8つの迷い”が編まれたスペシャルなアンソロジー。

迷―まよう―

アミの会(仮)/著、大沢在昌/著、乙一/著、近藤史恵/著、篠田真由美/著、柴田よしき/著、新津きよみ/著、福田和代/著、松村比呂美/著

1,728円(税込)

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発売日:2017/07/31

読み仮名 メイマヨウ
装幀 新潮社装幀室/装幀
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 286ページ
ISBN 978-4-10-351111-3
C-CODE 0093
ジャンル 文学賞受賞作家
定価 1,728円

最強作家集団、その名も〈アミの会(仮)〉、四たび集結! はじめてのひとり暮らし、旅先、迷路、父と母どちらを選ぶか、そして、俺の人生を狂わせた、憎いあいつを殺してしまうか……。「迷う」をテーマに、〈アミの会(仮)〉のメンバー6人の女性作家が短編を競作。大沢在昌、乙一という豪華ゲストも参加した夢の作品集の誕生。

著者プロフィール

大沢在昌 オオサワ・アリマサ

1956(昭和31)年愛知県生れ。慶応義塾大学中退。1979年、『感傷の街角』で小説推理新人賞を受賞し、作家デビュー。1991(平成3 )年『新宿鮫』で吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞を受賞。1994年『無間人形 新宿鮫4』で直木賞を受賞する。2004年『パンドラ・アイランド』で柴田錬三郎賞受賞。2010年、これまでの業績に対し、日本ミステリー文学大賞が授与される。2012年『絆回廊 新宿鮫10』にて、4度目の日本冒険小説協会大賞を受賞する。2014年『海と月の迷路』で吉川英治文学賞受賞。『冬芽の人』『ライアー』『雨の狩人』など多数の著書がある。

大極宮 (外部リンク)

乙一 オツイチ

福岡県生れ。1996年『夏と花火と私の死体』で第6回集英社ジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞し、デビュー。2003年『GOTH リストカット事件』で第3回本格ミステリ大賞受賞。著書に『暗いところで待ち合わせ』『ZOO』『失はれる物語』などがある。

近藤史恵 コンドウ・フミエ

1969年大阪府生れ。1993年、『凍える島』で鮎川哲也賞を受賞しデビュー。複雑な人間心理を細やかにすくい取り、鮮やかに描き出す筆致に定評がある。2008年には『サクリファイス』で第10回大藪春彦賞を受賞、同作は第5回本屋大賞2位にも選ばれた。『スティグマータ』は、『エデン』『サヴァイヴ』『キアズマ』に続くシリーズ最新長編となる。ほかにも「猿若町捕物帳」シリーズ、「ビストロ・パ・マル」シリーズ、「清掃人探偵・キリコ」シリーズや、『はぶらし』『岩窟姫』『昨日の海は』『スーツケースの半分は』など著書多数。

篠田真由美 シノダ・マユミ

東京都生れ。1992年『琥珀の城(べルンシュタインブルク)の殺人』でデビュー。著書に、「建築探偵桜井京介の事件簿」「龍の黙示録」「レディ・ヴィクトリア」「イヴルズ・ゲート」シリーズなどがある。

柴田よしき シバタ・ヨシキ

東京生まれ。1995年、『RIKO―女神(ヴィーナス)の永遠―』で横溝正史賞を受賞。受賞作の主人公である村上緑子は、従来の女性刑事のイメージを一新したキャラクターとして人気を獲得した。以後、村上緑子シリーズの他、京都を舞台に壮大なスケールで展開する伝奇小説「炎都」シリーズ、猫を主人公にした猫好き必読の本格推理小説「猫探偵正太郎」シリーズ、保育園の園長が実は探偵という「花咲慎一郎」シリーズなど、ジャンルを超えて、意欲的なエンタテインメント小説を発表し続けている。近著に、『愛より優しい旅の空』『あおぞら町 春子さんの冒険と推理』『青光の街(ブルーライト・タウン)』『猫は毒殺に関与しない』など、他に『ワーキングガール・ウォーズ』『やってられない月曜日』『激流』『クロス・ファイヤー』など精力的な著書が多数。

space shibatay (外部リンク)

新津きよみ ニイツ・キヨミ

長野県生れ。1988年『両面テープのお嬢さん』でデビュー。著書に、『ふたたびの加奈子』『フルコースな女たち』『父娘の絆 三世代警察医物語』『夫以外』『神様からの手紙 喫茶ポスト』などがある。

福田和代 フクダ・カズヨ

1967年、兵庫県神戸市生まれ。神戸大学工学部卒業後、金融機関のシステム構築と讐理を手がける。2007年、航空謀略サスペンス『ヴィズ・ゼロ』でデビュー。2008年、大都市停電を描いた『TOKYO BLACKOUT』が話題に。スケールの大きな着想、緻密な取材に基づいたリアリティ溢れる描写で知られる、現代クライシス・ノベルの旋手。他の著書『オーディンの鴉』『タワーリング』『碧空のカノン 航空自衛隊航空中央音楽隊ノート』『緑衣のメトセラ』『生還せよ』『火災調査官』などがある。

松村比呂美 マツムラ・ヒロミ

福岡県生れ。2005年『女たちの殺意』でデビュー。著書に、『幸せのかたち』『恨み忘れじ』『鈍色の家』『終わらせ人』『キリコはお金持ちになりたいの』などがある。

目次

未事故物件 * 近藤史恵
迷い家 * 福田和代
沈みかけの船より、愛をこめて * 乙一
置き去り * 松村比呂美
迷い鏡 * 篠田真由美
女の一生 * 新津きよみ
迷蝶 * 柴田よしき
覆面作家 * 大沢在昌
あとがき * 福田和代

インタビュー/対談/エッセイ

「恋愛」はダメで、「迷惑」がいい私たち

乙一近藤史恵永嶋恵美

女性作家集団「アミの会(仮)」メンバー+豪華ゲスト、総勢16名による夢のアンソロジーが2冊同時刊行されます。執筆陣から、乙一さん、近藤史恵さん、永嶋恵美さんの3人が、競作の醍醐味、短編集の魅力を語り尽くします。しかも、3人の意外な共通点も見つかって……。

全貌を把握できない作家集団

永嶋 「アミの会(仮)」という名称を初めて耳にする方もいると思いますので、まずは、私と近藤さんが参加しているこの女性作家集団の紹介をさせてください。
近藤 そもそもは、数人の女性作家で食事をしていた時に、「せっかくだから、アンソロジーを出版しよう」という話になって、出版不況ですし、自分たちから積極的に動いてみようと。女性縛りで、他の作家にも声をかけて、メンバーを集めました。普段はお酒を飲んだり、お食事をしたり。長く続けられるように、参加も強制ではない、ゆるい会です。一応女子会ですが、むしろ、海賊の宴みたいな。
永嶋 魔女かもしれませんね。誰も全貌を把握していませんし。
乙一 海賊、魔女……。最初は何人くらいでスタートしたんですか?
近藤 5人で集まって、アンソロジーを出版するときには、9人になって。
乙一 名前の由来は?
近藤 「雨の会」という作家集団が以前あったのですが、この会へのリスペクトがまずあります。メンバーの新津きよみさんはこちらにも参加していて、アンソロジーの話が出たときに、「雨の会」みたいにしたいねという話になり、ならば、フランス語で友だちという意味を持つ「アミ」を使って「アミの会」がいいかなと。
永嶋 物語を編むという意味もね。
近藤 美しい名前をつけようという案もありましたが、綺麗過ぎて、女性集団っぽいのはちょっとイヤで。
永嶋 バンカラな集まりですから。
近藤 決定する前に冗談で(仮)とつけたのですが、ちょっと抜けている感じもいいので、そのまま今に至ります。

容赦なく不幸……

乙一 今回、僕は『迷―まよう―』に参加させていただきましたが、同時に『惑―まどう―』も刊行されます。2冊同時刊行された理由は?
近藤 1冊では納まりきれないほど、今回参加メンバーが多くなってしまったんです。これまでの3冊と差別化するためにも、2冊にして、同頁、同時刊行にしたかったのですが、それなりのボリュームは欲しかったので、ゲストの皆さんにご執筆をお願いしました。
永嶋 毎回一つ、新しいことをしたくて。
近藤 2冊目の時も感じましたが、ゲストの方が入ることによって、雰囲気が変わるので、それも変化になりますよね。
乙一 女子校から共学へみたいな?
永嶋 男子クラスが突然できたみたいな? それって、居心地悪いですよね。乙一さん、どうでしたか?
乙一 肩身、狭かったです……。
近藤永嶋 やっぱり(爆笑)。
乙一 どう見られるんだろうって、緊張しました。ちなみに、テーマはどのように決めたんですか?
近藤 メンバーでテーマを出し合います。
永嶋 今回は2冊なので、色々な熟語が候補にあがったのですが、「恋愛」は、あまりにもパスする方が多くて早々に消えました。
近藤 私は別にいいんですけどね(笑)。
永嶋 スプラッタはいいけど、恋愛はちょっと……という方が多かったですね。
乙一 意外です。
近藤 最終的に、『迷』『惑』は、「迷う」「惑う」「迷惑」どれでもテーマにできて、広がりがあるかなと、決まりました。
乙一 面白い試みですよね。
近藤 全作品を読んだら、共通点もあり、トーンが一定しつつ、作家の個性がでていましたね。
乙一 ネタがかぶったらどうしようと心配しながら書いたんですが、けっこう人が死んでいますよね(笑)。ミステリーっぽくはならないかなと思い込んでいたので、みんな、容赦なく不幸な話を書いているのが印象的でした。
永嶋 タイトルが迷惑ですからねぇ。いくつか幸せな気分になる作品もありますが……。けど、乙一さんにそこをつっこまれるとは思わなかったです。スプラッタをあれだけ容赦なく書いている人に!
乙一 確かに、そうですよね。
近藤 参加した本で言うのもなんですが、良い本になったなぁと思っています。

「迷惑」「迷う」「惑う」

永嶋 お二人はどういう風にテーマとネタを選びましたか?
近藤 私は、どちらに収録されても大丈夫なように「迷惑」なネタを考えました。
乙一 僕は、迷って。字の意味をネットで調べたりしましたが、なんとなく、怪しい印象があって、人を誑かすような字面の「惑う」をみんな、書きたがるようなイメージがあって。それで「迷う」にしようかなと。
永嶋 そうだったんだ! 実は、東京での女子会の時に、「迷う」を選ぶ方が多そうな流れがあったんですよ。だから私は「迷う」で書いたらヤバイかなぁと。
乙一 では最初から、「惑う」で?
永嶋 とは言え、巨大迷路の話も書きたくて。けれど、うまくまとまらなくて、「惑う」にしました。占いのライターをやっていたので、ネタは惑星で、それはすぐ決まりました。けど、蓋を開けてみたら、篠田真由美さんが、迷路のお話を書いていたので、冷や汗をかきました。
乙一 僕は最初は、道に迷う話を考えたんです。カーナビが主人公で。道に迷って、運転手に怒られるんですよ。
永嶋 怒るわ! カーナビ失格だし!
乙一 けど、話がまとまらなくて、「沈みかけの船より、愛をこめて」になりました。
永嶋 実は私、とにかく乙一さんの短編を読みたくて。泣かされると分かっていながら、泣かされてしまう。読後必ず、「やりやがったな、乙一!」と思うその感覚を味わいたくて。それに、同じ賞の出身なのですが、ご一緒する機会がなかったので、お誘いしました。
乙一 ありがとうございます。
永嶋 今回の作品を拝読して、私も両親の仲が悪かったので、これは世界線が違う私の物語だと!
乙一 せ、世界線……。
永嶋 近藤さんの作品は、乙一さんとは対照的に、どこに連れていかれるかが分からなくて、いつもびっくりさせられます。収録作、「未事故物件」を読んで、途中でホラーじゃないと安心したのもつかの間、やっぱりホラーで……。
乙一 怖かったです。
近藤 ホラーとして読ませたかったので、そう読んでいただけて嬉しいです。
乙一 してやられました。

呪われた3人?

永嶋 せっかくなので、お二人が最近、「迷った」ことを教えてください。
近藤 先日、友人と北京に行ったんです。友人は3泊4日、私は4泊5日で、Airbnbに宿泊したんですが、友人が帰国後は不安なので、ホテルに移動することにしていたんです。ただ、友人の帰りの飛行機は早朝で、宿を早くに出発してしまう。私も一緒に起きて友人とタクシーでホテルに向かうか、ゆっくり寝て、一人でスーツケースを押して地下鉄に乗ってホテルに向かうか。とても迷いました。最終的には眠気が勝ち、布団の中で「先に行って」と言ったわけですが。
永嶋 睡魔が不安を吹き飛ばした!
近藤 前夜、Airbnbの家主が警察官も出動するほどの大パーティーを繰り広げて、眠れなかったんです。
乙一 北京警察……。ホテルへは無事に着きましたか?
近藤 はい。無事に。松村比呂美さんの作品のようにはならなかったです(笑)。
乙一 よかったです。僕は、小学1年生の子どもがいて、夏休みに学童のキャンプがあるんですが、それに行きたくなくて、本当に、悩みました。半数以上参加しますし、子どもも行きたがっているので、結局行くことにしましたが、見知らぬ親と何を話せばいいのか分からないし。
永嶋 すごく気持ちが分かります。子どもがらみの行事って断りにくい。
近藤 永嶋さんはどうですか?
永嶋 実は今、お二人のお話を聞きながら、答えに迷っております。まさに、ナウ、話題に迷っています。さ、では「迷惑」なことに遭遇しましたか?
近藤 自宅の目の前でいま、大工事をしていて。窓も開けられなくて……。
永嶋 私もです! 建物を取り壊しているんですよ。
乙一 実は僕も……。
永嶋 これって、解体工事の呪い?
乙一 ちょうど今、奥さんの実家が、解体工事をしています。義父は押井守監督なんですが、監督が学生時代に描いた絵が何枚も出てきて、奥さんと義母は「置き場がないから捨てよう」と。
近藤 なんと!
乙一 慌てて止めたんですが、あげたり売ったりするのは、よくないそうで。義父に打診したら、死ぬまでは保管しておいてくださいと言われて、けど置き場がないので、僕の書斎に新聞紙を間に挟んで立てかけて。ずっと置いておくわけにもいかないし、大きいし、困ったなと。
永嶋 そんなこと、書いてしまって、大丈夫ですか?
乙一 制作会社の人に相談をしたら、資料の保管場所で預かってもらえることになりましたから(苦笑)。ちなみに、次のテーマは決まっているんですか?
近藤 候補はありますが、まだです。
乙一 四文字熟語で。4冊同時刊行でお願いします。
近藤 そんなに人数が増えるかな。
永嶋 実現目指しましょう!

(おついち 作家、こんどう・ふみえ 作家、ながしま・えみ 作家)
波 2017年8月号より

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