ホーム > 書籍詳細:ボコ・ハラム―イスラーム国を超えた「史上最悪」のテロ組織―

女子生徒二百数十人を一度に拉致し、一年で六千人以上の民間人を殺害!

ボコ・ハラム―イスラーム国を超えた「史上最悪」のテロ組織―

白戸圭一/著

1,404円(税込)

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発売日:2017/07/18

読み仮名 ボコハラムイスラームコクヲコエタシジョウサイアクノテロソシキ
装幀 AFP PHOTO BOKO HARAM(ボコ・ハラム)/カバー写真、123RF(弾痕)/カバー・表紙写真、新潮社装幀室/装幀
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 204ページ
ISBN 978-4-10-351151-9
C-CODE 0095
ジャンル ノンフィクション
定価 1,404円
電子書籍 価格 1,404円
電子書籍 配信開始日 2017/07/28

世界中で無差別テロを繰り返すイスラーム国(IS)すら、殺戮の残忍さゆえに手を焼く武装組織、それがナイジェリア発のボコ・ハラムだ。ISを上回る犠牲者を出し、女性や子供に自爆を強いる残虐な手口から、史上最悪のテロ組織と言われる。彼らはいかに生まれ、拡大したのか。何が目的なのか。謎に覆われた実態に迫る。

著者プロフィール

白戸圭一 シラト・ケイイチ

1970年生れ。立命館大学国際関係学部卒。同大学大学院国際関係研究科修士課程でアフリカ政治研究を専攻。毎日新聞社入社後、鹿児島支局、福岡総局(現西部本社報道部)、外信部などを経て、2004〜2008年、南アフリカ・ヨハネスブルク特派員。ワシントン特派員を最後に退社し、2017年7月現在は三井物産戦略研究所欧露・中東・アフリカ室長、京都大学大学院客員准教授。著書に日本ジャーナリスト会議(JCJ)賞を受賞した『ルポ資源大陸アフリカ 暴力が結ぶ貧困と繁栄』(東洋経済新報社、のちに朝日文庫)、『日本人のためのアフリカ入門』(ちくま新書)などがある。

書評

世界で最も危険な組織

小倉孝保

 馴染みはなくとも、ナイジェリアで女子生徒を200人以上誘拐した組織と聞けば、「あの集団か」と思う人も多いだろう。そのイスラム過激派組織、ボコ・ハラムが誕生した歴史的背景を解き明かし、サブサハラ(サハラ砂漠以南)・アフリカにおいてイスラム過激主義がどこに向かうのかを推察した作品である。
 イスラム国(IS)やアルカーイダなど名にし負うイスラム過激派の国際テロ・ネットワーク集団はあまたあるが、ボコ・ハラムは過激度において抜きん出ている。この組織が2014年に殺害した民間人は6644人で、ISのテロによる同年の民間人犠牲者6073人を上回る。世界で最も危険な組織なのだ。
 そのボコ・ハラム誕生の謎を、筆者はナイジェリアの歴史に求めている。現在のナイジェリア北部にはかつてイスラム教徒による王国があった。南部のキリスト教地域と合わせて英国が植民地とし、その後、南北が一つの国として独立する。その時、北部州のシャリーア(イスラム法)刑法典が廃止された。この政策にイスラム教徒の不満が蓄積され、その後の反体制運動の下地になった。
 そして、宗教対立に民族対立が折り重なる形で南北対立が深まり、腐敗した連邦政府に対するイスラム教徒の不満の受け皿としてイスラム主義の流れが強まっていく。これが2002年のボコ・ハラム誕生につながる。ナイジェリアの歴史こそが過激な組織を生んだのだ。
 当初、ボコ・ハラムにはシャリーアを厳格に運用しない州政府に対する反体制運動の色が濃く、その攻撃対象は警察などの治安機関だった。それが無差別攻撃をも辞さないテロ組織に変容するきっかけとして筆者は一つの事件を挙げている。2009年7月、ナイジェリア治安当局がボコ・ハラム指導者、ユスフを警察庁舎内で射殺した事件である。実態はボコ・ハラムに同僚を殺害された警察官による私的な報復だが、この事件を境にボコ・ハラムは急速に過激化する。
 新聞社を退社した筆者は商社系シンクタンクに身を置きながら、大学で研究・教育活動にも携わっている。ジャーナリズム、アカデミズムとビジネスの視点を併せ持った点が筆者のユニークさであり、強みである。今回の作品はアカデミズム的論法が中心になってはいるが、時折、学者には珍しいダイナミックな仮説を展開している。
 例えば世界各地のジハード組織が2000年代になって、「アルカーイダ」の御旗を掲げて戦う中、ナイジェリアのローカル組織であるボコ・ハラムの指導者には世界から取り残された焦りや劣等感があったのではないか。その劣等感こそが彼らの活動を急速に過激化させたと筆者は考えている。
 あくまで信頼できるデータを基礎にしながら、そこから導く推測について、「劣等感」といった個人的感情を持ってくるところが興味深い。知的トレーニングを積んだ者が、許される範囲で思い切った推論を導き出しているのだ。こうした点は学術論文にはみられない魅力だと思う。
 また、この作品を通し筆者は、日本人がアフリカを知ることの意義を強調する。アフリカといえば、野生動物や自然公園の観光、人道支援の対象、資源を中心としたビジネス・パートナーとしか考えない日本人の偏狭な見方を批判しているのだ。学生時代からアフリカに関わり、継続的にこの地域を報道、研究、調査の対象としてきた筆者による、ステレオタイプ的思考でアフリカを見ることへの警告である。
 国民が世界への関心を失い国際感覚を劣化させたとき、その国はどこに向かうのか。第二次大戦前の日本しかり、現在の北朝鮮しかり。国民が国際感覚を磨くことは、国内を安定させ、間接的に安全保障環境を整備することにもつながる。その意味でも広い視野でアフリカの歴史を学び、アフリカの現実を知ることの意味は大きい。
 筆者は日本で最も早くからボコ・ハラムに注目していたジャーナリストである。その彼がいまボコ・ハラムを書いた。日本人のアフリカ理解を深める意味においても特筆すべき作品だと思う。

(おぐら・たかやす 毎日新聞外信部長)
波 2017年8月号より

目次

プロローグ ワイドショーが取り上げた武装組織
第1章 女子生徒集団拉致事件の衝擊
事件の発生/女子生徒の救出を求める世論/世界が「傍観」した大虐殺/ルワンダ人の絶望と憤怒/ウガンダで起きていた大規模な拉致/メディアの注目度に大きな差/異常な注目を生んだもの/世界へと「発信」された犯行/グローバル志向の組織/そもそも「テロ」とは何か/武力紛争とは何か/テロに統一した定義はない/テロが持つ独自の「役割」/急増するテロ/無差別テロの増加/自爆テロのはじまり/テロが多発する三つの地域/新しい脅威としてのテロ
第2章 舞台装置「ナイジェリア」の誕生
ボコ・ハラムを生んだ国/石油が作り上げた地域経済大国/頻発する政治暴力/ボコ・ハラムは「反キリスト教」組織か/「ソコト・カリフ国」というイスラーム国家の原体験/英領植民地ナイジェリアの誕生/埋め込まれた「分断」の火種/英国による間接統治の導入/イスラーム・コミュニティの分裂/火種を抱えたままの独立/シャリーア刑法典の廃止という決断/イスラーム政治エリートへの批判
第3章 イスラーム反体制運動の進展
混迷するナイジェリア政治/オイルブームが加速した「格差」と「腐敗」/既存秩序の変革を求めて/二つの反体制運動「ヤン・イザラ」と「マイタシン」/シャリーア全面導入要求の台頭/軍政の終焉がもたらしたもの/シャリーア刑法典の施行/骨抜きにされた刑法典/ボコ・ハラムの前身「ユスフィーヤ」の誕生/カルト集団化した強硬派/「ナイジェリアのタリバン」/「テロ組織」ではなかったボコ・ハラム
第4章 「テロ組織」への発展
組織拡大への道/ボルノ州知事選での暗躍/政治家との「持ちつ持たれつ」/国際的注目度「ゼロ」の時代/転機となったユスフの死/アルカーイダとの連帯/ジハード・テロ組織への変容/強硬派シェカウと過激化する組織/ウサマ・ビンラディンとの接点/二つの「先輩格」のテロ組織/国外逃亡と軍事訓練/アルカーイダ・ブランドによる発展的再建
第5章 ボコ・ハラムはどこへ向かうのか
推定5%の支持率/「カヌリ人」のナショナリズムを利用/政府軍が破壊した街/治安当局に対する根深い不信/なぜ少女たちは救出されないのか/スタンド・プレイとしての「専門家派遣」/アルカーイダからイスラーム国へ/領域支配の挫折/少女の自爆テロの多発/再び「注目」を求めて/ISに見限られたシェカウ/ネットワーク化するボコ・ハラム/ボコ・ハラムの今後
第6章 サブサハラ・アフリカと過激主義の行方
ボコ・ハラムは「例外」なのか/高度成長下での台頭と発展/経済成長しても過激派は抑止できない/資源依存の経済成長/弱い生産力と高失業状態/食糧自給できない農業/増え続けるアフリカの人口/3人に1人がアフリカの住人に/平均年齢14・8歳の社会/「人口ボーナス」の恩恵はあるか/軍事政権を巡る矛盾/ガバナンスの不全/AQIM、アル・シャバーブとガバナンス問題
エピローグ アフリカと日本のためのテロ対策
あとがき
ボコ・ハラム関連年表
主要参考文献

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