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「焙煎とネルドリップの名人」
「コーヒー」を究めたふたりの珠玉の対談集。

珈琲屋

大坊勝次/著 、森光宗男/著

2,700円(税込)

本の仕様

発売日:2018/05/31

読み仮名 コウヒイヤ
装幀 ブックデザイン/仁木順平
発行形態 書籍、電子書籍
判型 A5判
頁数 174ページ
ISBN 978-4-10-351891-4
C-CODE 0095
ジャンル エッセー・随筆
定価 2,700円
電子書籍 価格 2,700円
電子書籍 配信開始日 2018/06/15

東京・表参道の『大坊珈琲店』と福岡・赤坂の『珈琲美美(びみ)』――国内外で尊敬を集める、同い年で親友のふたり。この東西両雄の対談を「再現」する。豆をどう扱うか。この一杯を淹れる意味は。店には何が必要か? 美術、音楽、訪れるお客さんたち、そして、「生きる」とは。珈琲という共通語でつながるすべての人に贈る。

著者プロフィール

大坊勝次 ダイボウ・カツジ

1947年岩手県盛岡市に生まれる。1972年「だいろ珈琲店」に入店。珈琲店の基礎を学んだ後、1975年7月東京都港区南青山のビル2階にて、手廻し焙煎器による自家焙煎とネルドリップを軸とした「大坊珈琲店」を開業。以来、年中無休を貫き、世界中の愛好家にネルドリップの深煎りコーヒーを届けた。2013年12月老朽化によるビル取り壊しのため、惜しまれつつも閉店。それに伴い、1000冊限定で制作した私家本『大坊珈琲店』には、縁のある35人の寄稿文と店主自身が記した大坊珈琲店のマニュアルなどを掲載。2014年台湾にて自家焙煎コーヒー店を営む人に向けて焙煎・抽出のセミナーを行う。2015年12月日本で公開されたドキュメンタリー映画「A FILM ABOUT COFFEE」に取り上げられ、日本独自のハンドネルドリップを世界に知らしめた。2017年には、「フジローヤル」より限定50台で発売された「FUJI 手廻しロースター」を監修。2018年5月現在は、全国各地で手廻し焙煎・抽出法をレクチャーし、後進に引き継いでいる。

森光宗男 モリミツ・ムネオ

1947年福岡県久留米市に生まれる。1966年県立久留米高校卒業後、桑沢デザイン研究所(専門学校)入学のため、上京。ハワイ・オアフ島に半年間滞在の後、1972年東京・吉祥寺「自家焙煎もか」入店。マスターの標交紀氏に5年間師事した後、帰福。1977年12月福岡市中央区今泉に自家焙煎ホーム・コーヒー販売、ネルドリップの店「珈琲美美」を開業。1987年コーヒー産地視察のため、イエメンはバニー・マタル、ハジャラ、マナハを訪問。以来、モカコーヒーのスパイシーな香りに魅せられ、イエメン5回、エチオピア7回を始め、ケニア、インドネシア、フィリピンなどを訪れ、コーヒーのルーツをひもといた。2009年5月福岡市中央区赤坂けやき通りに移転。2012年、著書『モカに始まり』(手の間文庫)を出版。2016年には、自ら発案・監修したネルドリップ抽出器具「ネルブリューワーNELCCO(ねるっこ)」を「フジローヤル」より発売。一般家庭でも専門店に引けをとらないネルドリップの一杯を実現すべく、啓蒙活動を行う。2016年12月ネルドリップ普及セミナーの帰途、韓国の仁川空港にて倒れ、急逝。享年69。(2018年5月現在、お店は妻の充子さんが引き継いで営業中)

書評

「月のない真夜中のようなブラックさ」

江部拓弥

 はじめに告白しておくと、僕は珈琲に精通しているわけじゃない。どちらかといえば、にわか珈琲ファン。「ツイン・ピークス」のカイル・マクラクランを気取って、珈琲を口にするようになって幾星霜。美しいウェイトレスから「どんな珈琲がお好み?」なんて質問されたら、「月のない真夜中のようなブラックさ」と、クーパー捜査官のように答える準備は出来ているけれど、そんな機会は、まぁないものです。
 さらに白状すると、僕は「珈琲美美びび」の常連客でもなければ、「大坊珈琲店」を馴染みにしていたわけでもなかった。正真正銘の、にわか客。そびえ立つ店主に話しかけるなんて畏れ多いなぁ、ずっとそんなふうに思っていました。もちろん「月のない真夜中のようなブラック」なんて軽口も叩けません。カウンター越しに対峙していた森光宗男さんや大坊勝次さんとは、「dancyu」という雑誌の取材がきっかけで、ようやく言葉が交わせるようになったんですね。
 それは、ほんの数年前のこと。「美美」の取材は2012年の12月で、「大坊」の取材は2013年の、やはり12月。師走にもかかわらず、快く取材を受けていただきありがとうございましたと、両店には感謝の気持ちでいっぱいでした。
 あぁ、それなのに。『珈琲屋』を読み進めるうち、申し訳ない気持ちが胸いっぱいに広がっていきます。だってね、この本で語られるかくも素敵な話を、年の瀬の多忙を極める時期にのこのこと出かけていった僕は、これっぽっちも引き出せなかったんですから。
 旧知の仲だというふたりが語り合うのは、珈琲のことじゃなくて、珈琲屋をめぐること。珈琲屋を生業とする者(森光さんと大坊さんね)の日常から、自家焙煎やネルドリップといった珈琲屋の手仕事のこと、テーブル、椅子、カップ、メニューといった珈琲屋を構成する要素に対する思いや意識や意味や感情のこと、さらには珈琲屋に宿る神のこと、珈琲屋に起こる奇跡のこと、そして珈琲屋の現在、過去、未来の話まで、ふたりは大いに意気投合したかと思えば、まったく噛み合わない話をずんずん進めたり、ときには押し黙ったりして、店ではうかがいしれなかったパーソナリティが浮き彫りになっていく対話は、見てはいけないものを覗き見るような、怖いもの見たさ感がたっぷり。
 へぇ、そんなことを思いながら焙煎しているんだ。
 えっ、壁にかかる絵画はそんな思いが込められていたの。
 おぉ、客の思いは喋らずとも届いているんだな。
 ページをめくるたび、ふたりに対する発見の山がどんどん大きくなっていく(まさしくツイン・ピークスだわ)。
 僕が取材したときに感じたそれぞれの印象と、正反対な人柄が感じられるのも新鮮というか、自分の力不足に反省というか、読んでるこっちはどきどきしっ放し。
 クールな森光さんと、キュートな大坊さん。ふたりの楽しそうな姿を思い浮かべるほどに、センチメンタルな気持ちがぐわっとこみ上げてきたりも、する。周知のことだけれど、「美美」のカウンターに森光さんが立つことはもうなくて、「大坊」のカウンターで大坊さんの手廻し焙煎を目にすることも、もうない。けれど一方で、そんな感傷は無用な気もしている。「美美」は森光充子さんが切り盛りして、いまも変わらず営業しているし、店を閉めた後の珈琲屋としての人生を歩いている大坊さんは、なんだか楽しそうでもある。
 最後に報告すると、僕は2017年の夏、「美美」で1週間、見習いのようなかたちで働かせてもらった(詳しいことは今年のどこかで始まる「dancyu」のwebで書きますね)。あたふたとしながらも、珈琲屋の仕事には共感したつもりでいる(充子さん、こんな偉そうなこと言って、大丈夫でしょうか?)。その1ヶ月後、大坊さんの自宅でお酒を酌み交わす機会に恵まれて、大坊さんに対してちょっとだけ軽口を叩いたように覚えている。「月のない真夜中のようなブラック」の話は言ってないけどね。
 いまだ、にわか珈琲好きの域を出ない僕には、森光さんと大坊さんというふたつの山の頂はまだ見えていない。だから、もっと珈琲を好きになりたい。『珈琲屋』を読んで、力強く思ったんだ。

(えべ・たくや dancyu web編集長)
波 2018年6月号より
単行本刊行時掲載

目次

はじめに 大坊勝次
この本ができるまで 小坂章子
対談1 「珈琲美美」にて 大坊が森光を訪ねた
対談2 「大坊珈琲店」閉店まであと1ヶ月 東京にて
対談3 終日「珈琲美美」にて 店を閉めた大坊が森光を訪ねた
ふたりの珈琲屋について
大坊惠子さんのこと
道具のこと
森光充子さんのこと
おわりに 大坊勝次
対談を終えて 森光宗男

イベント/書店情報

大坊勝次さん『珈琲屋』インタビュー 青山・表参道編

大坊勝次さんに「大坊珈琲店」のあった青山・表参道についてお聞きしました。

大坊勝次さん『珈琲屋』インタビュー 森光さんのこと

大坊勝次さんに、森光宗男さんとの思い出をお聞きしました。

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