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これがあのピンチョン!? 時空を超えた感動に誘う世界沸騰の巨篇がついに刊行。

逆光(上)

トマス・ピンチョン/著、木原善彦/訳

4,752円(税込)

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発売日:2010/09/30

読み仮名 ギャッコウ1
シリーズ名 全集・著作集
全集双書名 トマス・ピンチョン全小説
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 862ページ
ISBN 978-4-10-537204-0
C-CODE 0097
ジャンル 文芸作品、評論・文学研究
定価 4,752円

フロンティア消滅直後の19世紀末アメリカ。謎の飛行船〈不都号〉を駆る「偶然の仲間」が探し求めるは……砂漠都市シャンバラ! 地球空洞説に未確認生物、探偵に奇術師が跋扈する冒険と博覧会の時代が戦争の世紀を切り拓くとき――超弩級作家が紡ぐある一族の運命、出会いと別れ。原書2006年刊、『重力の虹』を嗣ぐ傑作。

著者プロフィール

トマス・ピンチョン Pynchon,Thomas

現代世界文学の最高峰に君臨し続ける謎の天才作家。寡作な上に素顔も経歴も非公表だが研究者により以下が判明している。1937年5月8日、ニューヨーク州ロングアイランド生まれ。ピンチョン家はアメリカ最古の家柄のひとつで父は測量技師。16歳で名門コーネル大学に入学、応用物理学を専攻するも英文科に転じ、2年間の海軍生活ののち最優等で卒業。2年ほどのボーイング社勤務後は作品以外の消息を完全に絶つ。1963年、『V.』でデビュー、フォークナー賞を受賞する。第2作『競売ナンバー49の叫び』(1966)でローゼンタール基金賞受賞。第3作『重力の虹』(1973)でアメリカ最大の文学賞である全米図書賞を受賞するが、本人が授賞式に現れず物議を醸す。以後、1984年に初期短篇集『スロー・ラーナー』を刊行した以外は実質17年間沈黙する。その沈黙を突如破り、1990年『ヴァインランド』発表。1997年には『メイスン&ディクスン』を刊行、2006年『逆光』(Against the Day)、2009年『LAヴァイス』(Inherent Vice)と、一作ごとに世界的注目を浴びる。ノーベル文学賞候補の常連だが、受賞しても式に現れないのではと囁かれている。

木原善彦 キハラ・ヨシヒコ

1967年生まれ。大阪大学准教授。訳書にトマス・ピンチョン『逆光』、リチャード・パワーズ『幸福の遺伝子』など。著書に『UFOとポストモダン』、『ピンチョンの『逆光』を読む――空間と時間、光と闇』など。

書評

波 2010年10月号より (詐欺のような)美しい結末へ

大森望

〈トマス・ピンチョン全小説〉第二弾は、ピンチョン史上最長の巨大長編『逆光』(Against the Day, 2006)。なんと上下巻合計一七〇〇ページ、九二四〇円(税込)。並の単行本六冊分だが、たぶん三十冊分以上の楽しみがあるから、そう考えると全然高くない。いやもう茫然とする面白さです。
物語は一八九三年のシカゴ万博から始まる。最初に登場するのは、〈不都号〉(Inconvenience)なる飛行船に乗り組む〈偶然の仲間〉五人組。彼らの冒険は、少年向けのヒーロー小説シリーズとなり、世界中で人気を集めているらしい。
ふむふむと思いつつページをめくると、もう一匹の乗組員、しゃべる犬のパグナックスが登場。読書好きなんだそうで、いきなりヘンリー・ジェイムズ読んでます(しゃべる球電やしゃべる巨大砂蚤も本書には登場するので、このくらいで驚いてはいけません)。その後、〈不都号〉は、ニコラ・テスラの無線送電実験の影響を調べるため、南極点から地球内部に入り、空洞を抜けて北極に出現。ロシアのライバル飛行船とベニス上空で交戦したかと思えば、タイムトラベラーの誘惑を逃れるためハーモニカ楽団に偽装(なぜに?)。内陸アジアでは潜砂フリゲート艦〈サクソール号〉に乗り込み、伝説の砂漠都市、シャンバラを探求する……。
ヴェルヌかドイルもかくやというこの冒険物語と並行するもう一本の軸が、トラヴァース一家の物語。銀鉱山で働く父ウェブの裏の顔は、線路や鉄橋を爆破する無政府主義テロリスト〈珪藻土キッド〉。だが彼は、テスラの研究にも出資している大富豪スカーズデールが雇った殺し屋によって殺されてしまう。以降は、残された四人の子供たちの人生と復讐の物語が複雑怪奇にからみあいながら進んでゆく。中心になるのは、父の仇とも知らずスカーズデールから学費の援助を受けてイェール大学に通い、数学を勉強してベクトル主義者となった末っ子のキットで――とか説明しているとキリがない。
“脱線に次ぐ脱線、錯綜する人間関係、時間と空間を超え展開する物語。(中略)あらゆる知識、あらゆる断片、あらゆるアイディアとガラクタをかきあつめ、あらゆる境界線を破壊するパラノイア的想像力が生みだした文学史上最高最大、究極のスーパーフィクション”という、国書刊行会版『重力の虹I』カバー裏の惹句は、そのまま本書にもあてはまる。しかもこちらは、誰が主役かもわからない群像劇。冒険小説、西部劇、伝奇、SF、歴史、スパイ、ロマンス、オカルト、戦争活劇、コメディ、官能……とあらゆるジャンルを横断しつつ、ピンチョンは“9・11以後”を映した奇怪な迷宮を建設する。同時代の日本の小説で言えば、奥泉光『神器』と舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日』と古川日出男『聖家族』を混ぜて三倍に煮詰めた感じ? 『重力の虹』よりはずっと読みやすいものの、話の道すじを見失いがちなこと(物語の行き当たりばったりぶり)にかけてはひけをとらない。登場人物を五分の一に、分量を三分の一にするくらいでちょうどいいかも。とはいえ、ピンチョンの場合、無駄な細部の饒舌にこそ読書の快楽があるから始末に負えない。たとえば、“急角度に削られた斜面に挟まれた谷を埋めるように、失敗したタイムマシン――〈クロノクリプス〉〈アシモフ型世紀横断機〉〈時間変性機Q98〉――が、使える部品をすべて外された状態で、捨てられていた”とか、“森の模様がプリントされた風呂敷をカウガールのバンダナのように三角折りにして巻き、ビール割りのウィスキーを驚異的なペースでぐいぐい飲”む美貌の天才数学者、釣鐘ウメキ嬢とか。
対策としては、お気に入りの人物を見つけて道しるべにすること。わたしのお薦めは、オカルト的秘密結社TWITの庇護下にあるヤシュミーン。セックスのあいだもゼータ関数が頭から離れない数学おたくのレズビアン美女です。
ちなみに、それでも最後には(詐欺のような)美しい結末が待っているのでご安心を。健闘を祈る。

(おおもり・のぞみ 翻訳家・評論家)

目次

第一部 山並みの上の光
第二部 氷州石
第三部 分身

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